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親と意見が合わず、事業承継が進みません~焦らず、仲間作りの時間に
今回の相談は「時代の変化に合わせて、経営方針や企業としてのあり方、従業員の働き方を変えていきたいのですが、現社長(母親)に理解してもらえず、悩む日々です。事業承継も前に進まず、今の足踏み状態に憤りを感じます」。東京都内の不動産業、30代後継者さんのお悩みです。
リファラバのナビゲーターで、宇都宮市を中心に美容室やコミュニティースペース、バウムクーヘン店などを経営するビューティアトリエ代表の郡司成江さんが答えます。
![回答者の郡司成江さん=宮本明登撮影](https://assets.st-note.com/img/1675220641343-fYEPbxdbZ0.jpg?width=1200)
#事業継承
#後継者
#親子対立
#組織文化
#承認欲求の満たし方
に課題を感じている方々にオススメです。
焦らずに長期戦のつもりで
お母様になかなか理解してもらえず、焦る気持ちはとてもよく分かります。私も自分が社長になるまで、10年近く待たされましたから。
最初に言っておきたいのは、相談者さんは30代という若さで、既にバリバリ働いていて、会社のことを深く考えている。これはすごいことです。だから焦る必要はありません。長期戦のつもりで臨むのが良いと思います。
まず私の経験をお話しします。私自身、30代の頃には「自分はいつでも代表になれる」と感じていましたが、実際に先代の母親から代替わりしたのは40代半ばでした。毎年、年末になると、先代は「来年は譲るわよ」と言うけれど、いつも先送りされてしまう。うちの会社は美容室だから、若い社員の比率が高い。自分が50代まで待たされたら、若い人たちを引っぱっていくのが難しくなると焦りを感じていました。
そういう中でしたが、経営者という仕事が「自分のところに必ず来る」という確信は持っていました。先代にしても、娘である自分の他に後継者の選択肢があるわけではなかった。相談者さんも同じ状況だと思います。
「必ず来る」のだから焦らなくてもいい。今という時間を、経営者という仕事が来た時に、自分が「準備万端」の状況になっているために使う。そんなふうに考えてもらえたら良いと思います。
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「その日」に備え、仲間作りと学びの時間に
私は代表になるのを待っている間、自分が実現したいビジョンに向かって、人材育成を頑張る。社内に自分の右腕や左腕を作る。自分と仲間たちの手で「理想の会社」を作れる組織文化を育てることにエネルギーを注いでいました。
やはり代替わりした時に一番大変なのは、自分に社員たちがついてこない事態です。また、柱になる人材が先代の時と同じでは、自分のビジョンを実現することが難しい。そういう状況を避けるためには、今から自分が実現したい組織文化を作り始めることが大事になります。
逆に言えば、社員がついてきてくれる状況が作れれば、代替わりをしていようとしていなかろうと、自分のビジョンの実現という点では実はあまり違いはないのです。
もう一つは、代表になる前に、クレーム対応や金融機関との交渉といった「嫌な仕事」に慣れておこうと考えていました。当然ながら、経営者にはこうした自分が消耗する仕事も、自分のところに必ず来ます。そうであれば、早いうちから慣れておく。いざ、何か失敗があっても、その時は社長に前面に立ってもらったらいい。代替わり前というのは、そういうメリットになる部分もあります。
そうする中で、金融機関や取引先の人たちが「もう娘さんに代替わりしても良いんじゃないですか」と先代に言ってくれるようになりました。周囲から、そんなふうに言われたり、応援してもらえたりする状況を作るために、信用と信頼を積み重ねていく。
経営の勉強もしながら、代替わりを準備万端の状況で迎えられる用意をしておけるといいですよね。悩むことも多いと思いますが、30代という時間を仲間作りと学びの時間にする。そんな考え方もできると思います。
「意見のぶつけ合い」は承認欲求の表れかもしれない
相談者さんは30代ということなので、お母様は60代でしょうか。今の60代は本当に若々しいから、引退はまだ考えていない可能性が高い。私の周りでも、60歳そこそこで社長を譲るという会社はほとんどありません。相談者さんのケースだと、事業承継は長期戦で臨んでいくのが良いでしょう。
お母様が事業への関与が少ないのであれば、現場を任せてもらって、実質的に自分のビジョン実現に進んでいくこともできます。
でも、よくあるのは、普段は後継者に任せているけど、何か新しいことをやろうとすると、急に意見をぶつけてくるというケースです。
ここで注意したいのは、人間にはいくつになっても承認欲求があるということです。社長としては、会社が何か新しいことを始める時に、何も意見を言わなければ、社員たちに軽んじられてしまう、バカにされてしまうという恐怖感がある。
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だから、何かと意見を言うし、それに反論すると、もっと怒り出してしまうことになる。これは「自分が社長としてふさわしい人間だと認められていたい」という承認欲求から来ているわけです。
質問にあるような世代の違いによる考え方の違いはあると思います。しかし、先代の承認欲求が、その違いを増幅して、物事が前に進まない結果になっているのではないでしょうか。
先代の「新たな役割」が対立を和らげる
承認欲求を抑えるには、承認してあげることが一番です。承認欲求を満たしてあげることで、結果的に急に意見を言ってくることはなくなるし、怒り出すこともなくなる。もちろん相手の言い分を認めるのが感情的に難しい場面もあるでしょう。それも分かります。でも、そういう場合でも、やり方はあります。
一つは、自分以外の人に先代の相手役になってもらうことです。例えば、自分の配偶者にその役を引き受けてもらい、先代と自分の間に入って、先代の言うことを承認してあげつつ、自分たち夫婦のやりたいことを進めていく。そんな方法が考えられます。
もう一つは、先代の新たな役割を作ること。不動産業であれば、先代がいろいろな用事や旅行で訪れるテナントビルやホテルの目利きをしたり、そこで見つけた優れた取り組みを収集したりする役割を担ってもらうこと。それを自社に持ち帰って、取り入れるべきものは取り入れていくと、先代の承認欲求が満たされ、「強引な意見」は減っていくのではないでしょうか。
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先代と決定的に衝突することは、お勧めしません。株式や土地といった財産の絡む対立にまで発展するリスクもあるからです。配偶者や外部の人たちと協力して、先代の承認欲求を満たしながら、対立しそうになる場面をうまくすり抜けていってほしいと思います。
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