気分爽快?
「ごめん、待った?ところで話したいことって何?
「‥」
「わかった。もう言わなくていいよ。多分そんなことじゃないかと思ってた。」
「急に呼び出してごめん‥。なんかさ、1人で部屋に居たら泣き出しちゃいそうでさ‥。」
「いいよいいよ。気にしないで。それよりさ、
じゃーん!」
「あ!缶ビール。どうしたの?」
「うちから持って来たの。こういうときは酒でも飲んでさ。ほら、森高の出てるCM。飲もう、今日はトコトン飲み明かそー。ってあるじゃん。」
「あの曲『気分爽快』って題名なんだよね。気分なんて全然爽快じゃないんだけど‥」
「大丈夫!飲めば気分爽快になっちゃうって。飲んで奴のことも忘れちゃえ!」
「だね!イッキに飲んで、スカッと忘れるぞ!」
「その調子!」
「‥でもさ、私たち、まだ高校生じゃん。ヤバくない?ビール飲んでるとこ先生に見られたら
マジヤバいよ。」
「あはは、何心配してんだよ。夜の河原に先生なんか来ないってば。」
「それもそうか。ところでさ、ビール飲んだことある?私はないんだけど。それ、あんたのうちから持って来たんだよね?もしかしてあんた!」
「違うよ。これはお父さんの。私も飲んだことないよ。」
「なるほど。2人とも初めてか。」
「そ!初めての体験。新たなる旅立ち、未知の世界への第一歩。ではでは、あんたの失恋と、私たちの未知への旅立ちを記念して」
「失恋記念って変じゃない?」
「どうでもいいじゃん。カンパーイ!」
「カンパーイ!」
「にがーい!」
「‥苦い。」
「苦すぎ!ムリ!」
「やっぱり私たちにはさ、ファミレスのドリンクバーがピッタリだよ。」
「あはは、確かに。いつものファミレス行こうか。飲み直しだ、飲み直し。」
「あのさ、私、フラれてかわいそうなんだからさ、今日は奢ってよね。」
「えー!なんでよ。私、ビール持って来たんだよ。」
「だってそれ、うちから持って来ただけでしょ?」
「まあ、そうだけど。仕方ない。今夜は奢りましょう!」
「ありがとう。あとさ、もう一個お願いがあるんだけど。」
「何?」
「‥あのね、ここで思いっきり泣かせて。あんたと話してたら、なんかさ、何て言うのかさぁ‥
グス‥グス‥ごめ、ん‥」
「何も言わなくていいよ。たくさん泣け泣け。」
「‥ありがとう‥。」
(了)