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呉海 憂佳(yuuka kuremi)
2024年11月8日 18:50
紅葉から鮮やかな赤が銀杏から賑やかな黄色が鉛色の冷たい雨とともに大地へ染み入ると地上には生命の思い出だけがセピア色に残るでしょう「厳しい雪に覆われて 全て漂白されてしまうのを ただただ待つしかできないなんて」いいえ、きっと季節が巡れば赤や黄色は花となってやがて還ってくるでしょう貴方が流したその涙さえいつかは生命に変わるのですからだからその身が熟すのを恐れて待つのは
2024年10月19日 14:50
木の実と葉が織り成す秋の絨毯冬の装いした動物たち淡い靄を夕暮れが染めて長い夜の帳がおりる秋の虫のすずやかな声梟はホウとため息アンドロメダは冷たく光って眠る森を見守っている目が醒めないことを覚悟しながら寝床についた動物たちも麗らかな朝日に秋を感じて安堵に胸をなでおろし短い秋を精一杯に駆け抜けてゆくみなさんこんにちは。今回も #シロクマ文芸部 の #お遊び企画 に参加し
2024年9月7日 15:11
レモンから爽やかなうたが聴こえてくるよ耳にも鮮やかな黄色い声色に甘酸っぱくてフレッシュな旋律でまあるいからだを朗らかに揺らしながら陽気な太陽のうたをとても愉快に歌っているよけれどもママがぎゅうぎゅうレモンを絞りあげ「かわいいかわいい私の坊や、どうぞ召し上がれ」おいしいレモンのパイにしちゃったもんだからぼくはちょっぴり悲しくなっちゃったけれども今度はぼくのおなかからあのうたが
2024年8月23日 18:14
今朝の月の、なんと幸の薄そうなことぼうっと白く、息も絶え絶え浮かんでる「まるで姉様みたい」自分の口からついて出た言葉に自分がいちばん驚いていた病弱な姉様が羨ましかっためらめらと嫉妬が燃え上がる太陽の如き私の心はきっと醜くてあさましいんでしょうけれどでも、姉様?お母様の御心も、そしてあの方の御心も、貴方にかかりきりなのよだから姉様ずっと消えないでいて消えてしまっ
2024年8月16日 20:23
花火と手をつないで夜空に打ち上がってしまいたいぱっと弾けたら消えたふりをしてそっと君の白シャツを火薬色に染めてやる #シロクマ文芸部 に参加させていただいております。 #花火と手 #詩
2024年8月3日 13:26
風鈴と戯れる子どもたちが、 私の目に青く眩しく映った。強烈な陽射しに透けてしまいそうなほど柔らかい髪を奔放になびかせて、子どもたちは駆けてゆく。洗いたての服をはためかせて、青々とした草木をゆらして、たのしそうに笑いながら、子どもたちは駆けてゆく。くるくると渦を描いたと思えば、まっすぐに疾走したりしながら、私の方へやってきて、すれ違いざまにハラリ、スカートの裾をめく
2024年7月26日 18:13
かき氷が、小さな入道雲みたいに、涼しげなプラスチックの器をいっぱいにしたよ。青空色のシロップが、入道雲を溶かしていったよ。ひとくち食べたら夏の味がして、夢中で食べたら舌まで染まって、さいごはスプーンですくえないくらいの小さな海が残ったよ。 #シロクマ文芸部 #かき氷 #詩
2024年6月14日 21:10
「紫陽花をドライフラワーにしちゃいけないよ。そのまあるい花は、雨でできているから」 雨傘を避けると、おじいさんがわたしを見下ろしていた。「ドライフラワーってなに?」 わたしが尋ねると、おじいさんは目を細めた。「お花をミイラにしてしまうことさ、お嬢さん」 ミイラってなに、と聞いたけれど、わたしの声は雷に打たれて流れていった。 梅雨の頃になるといつも思い出すこの秘密の記憶は、セピア色に乾
2020年8月29日 00:09
まだ、誰も僕を見つけてはいない。極彩色の紙吹雪ステキに陽気な音楽溢れんばかりの歓声ここが世界中のどこよりも醜い闇を映し出す鏡であることを僕は誰よりも知っている。まだ、誰も僕を見つけてはいない。キャンディをねだる子供たちバルーンを配るピエロ顔を赤らめた飲んだくれ達喩え神様が読み飽きたシナリオでも何も知らない哀れな役者は台本通りの幸せを演じている。まだ、誰も僕を
2020年8月28日 23:29
何かが起こりそうな冷たい夜の気配に誘われて目が覚める。きっと二度と朝は来ないだろう。これが最後の冒険になる。深呼吸して、闇の音。夜の街を流星の速さで疾走する。出来損ないの私はきっと虎にはなれないだろう。けれど、この夜を盗むことはできる。