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...の秋

Autumn is the season for …

食欲、運動、読書、瞑想。

Autumn is the season for appetite, exercise, reading, and meditation.
食欲の秋、運動の秋、読書の秋、瞑想の秋。

それはそれは「めでてえション
迷走の秋にならぬように。

Watch the following video:
https://templatematching.jp/Autumn.mp4

さてここでは、
Autumn is the season for …
という文の構造に関してさらに考えてみましょう。

でもその前に、まずはこの文とは似て非なる
Autumn is for … という文に関して考察をしてみます。
ここでは特に前置詞句「for …」の扱いが鍵となります。

まずは、純粋に文構造から。
1. 前置詞句を「飾り」と見做して、S + V と見る立場。
 (5文型説での第1文型と見る、いわゆる学校文法の立場)
2. 前置詞句は必須要素であり、S + V + A と見る立場。
 (7文型説での第6文型と見る、Quirk et al. の GCE (1972: 343) の
‘seven clause types’ の立場)
3. 前置詞句は必須要素であり、S + V + C と見る立場。
 (5文型説での第2文型と見る、Greenbaum (1996: 71–) の立場)

さて、いったい上の立場のいずれが妥当なのでしょうか。
この問題に決着をつけるには、「文構造」のみに着目していたのでは埒が明きません。実は「情報構造」も加味しなければならないのです。

1. のような見方は、純粋な「文構造」としては成り立たないこともないのですが、そして(「前置詞句」=「飾り」と見做せば)ある意味最も単純でわかりやすくはあるのですが、「情報構造」をも加味するならば重大な問題点が見えてきます。

相手に情報を伝える」という観点からするなら、上の文 Autumn is for …における「for …」の部分は単なる飾りではあり得ません。それどころか、まさに最も相手に伝えたい部分つまり必須要素なわけです。

従って、1. の立場がまず排除されます。

因みに、少し脱線しますが、
That is of crucial importance. そのことは何より重要だ。
などに見る前置詞句「of …」は、機能上は副詞句と取るよりも形容詞句と取ったほうがよい(≒ crucially important)わけで、その意味では
Autumn is for appetite.
などの前置詞句「for …」も、機能上は副詞句と取るよりも形容詞句と取ったほうがよい、というようなことも言えるわけです。

さらに言うなら、そもそも学校文法では、前置詞句、形容詞句、副詞句の定義がご都合主義で、以下のように用語上の不統一が見られます。

前置詞句:前置詞を中心とする句という形式上の概念
形容詞句:形容詞を中心とする句という形式上の概念(crucially important)
      +
     形式上前置詞句だが働き上形容詞句であるという機能上の概念
     (the season for … の for …)
副詞句:副詞を中心とする句という形式上の概念(very rapidly)
      +
     形式上前置詞句だが働き上副詞句であるという機能上の概念
     (creep into … の into …)

次に 2., 3. を見てみましょう。
結論から言うと、「情報構造」という観点からするなら、3. が支持されることになります。というのも、「C」を基本的に「名詞/形容詞」にのみ限定して、それ以外の「前置詞句」等の必須要素を「A」として別もの扱いする立場 2. は、(「文構造」上はいざしらず)「情報構造」上は特に有意味とは言えませんし、また教授・学習上もかえって要らぬ混乱を招く可能性があるため、決して合理的とは言えないからです。

(なお、個人的には<3文型>説を支持する立場なのですが、ここでは深入りしません。いずれ正式にご紹介します。)

次に、
Autumn is the season for …
という本題の文に立ち戻って、その構造について考えてみましょう。

単純に考えれば、「for …」は「the season」という名詞句を飾る形容詞的な働きをしている前置詞句なのだからという理由で、単なる修飾要素と見る立場もあり得ますし、現に学校文法ではおおかたはそのように分析されることになる筈です。

しかしながら、これも上の議論と基本は同様で、純粋な「文構造」のみならず「情報構造」をも加味して考えるならば、「for …」の部分は単なる飾りではあり得ない、ということがわかる筈です。それどころか、この部分はまさしく相手に最も伝えたい部分つまり必須要素なわけです。つまり、「情報構造」上重要な概念である<文末焦点の原則>という観点からするなら、他でもなく「for …」の部分こそが最も伝えたい最重要部となっているわけです。

日本語でも、「…の秋」というタイトルに接して気になるのはやっぱり「」の部分ではないでしょうか?


Quirk, R., S. Greenbaum, G. Leech, and J. Svartvik (1972) A Grammar of Contemporary English (GCE), Longman.

Greenbaum, S. (1996) The Oxford English Grammar, Oxford University Press.

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