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育児|優しくできなかった日のこと

なかなか寝ない。
もうすぐ23時というのに。

子守唄を歌いながら娘(1歳)をトントンしていると、息子(3歳)が寄ってくる。
子守唄に出てくる名前の部分を息子の名前に替え歌すると、照れくさそうにしていた。

2時間半にわたる寝かしつけ。早く寝ないかなと思いつつ割と穏やかな気持ちだった。

その時、

ブチブチッ

不吉な音と共に私の前髪の生え際に電撃が走った。

「痛いっ!!!!」

息子は何かマズイことをしたとすぐに理解して、すぐに ごめんなさい、と謝ることができた。偉い。

謝ったんだからこれ以上責めるべきではないのだろうが、寝ないし痛いしアラサーの貴重な前髪が数本抜けるしでどうしてもイラッとしてしまい、黙って少し離れたところにあるソファに腰掛け、スマホを弄る。
イライラが落ち着くまで距離を置こうと思ったと言えば聞こえはいいが、なんとも大人気ない。こんな態度で、怒りを示すなんて。


すると、

「ごめんなさいってちゃんと言ったのに!」
「ごめんなさいってちゃんと言ったのに!」

と何度も何度も繰り返しながら、息子は大粒の涙を流した。

それでも、優しくできなかった。
もう怒っていない。でも、私の纏う空気は確実にひんやりしている。


娘と2人で寝転び子守唄を歌う私を見て、息子も仲間に入れて欲しかったのだろう。私の側にいて、安心したかったのだろう。
そしたら悪気なく髪の毛を踏んづけちゃって、その瞬間あたたかい空気が一変したのを感じ取った。
しまった!と、あわてて謝ったのに、それでもだめだった。


痛いことをしたら謝りなさいって教えられたから、

ちゃんと謝ったのに
ちゃんと謝ったのに
ちゃんと謝ったのに…


彼は混乱と絶望の中、パパにしがみついたまま泣き疲れて眠ってしまった。



優しくできなかった。
優しくしてあげたかった。



ふと、今日優しくできなかった分は、毎日の愛情から自動的に補填されないかなと考えた。
そうであってほしい。


でもきっと、それじゃだめだと思い直した。

毎日注がれているコップいっぱいの愛情。
時々つまづいて溢(こぼ)れてしまっても、まだたくさん残ってるから大丈夫。

でも、

溢れてしまった時のショックは、なかったことにはならない。



明日起きたら謝ろう。

ちゃんと、謝ろう。

息子がしてくれたように、息子のそれは正しかったと教えてあげられるように。


溢れた分はきちんと拭って、
また新しい愛情を注げば良い。

不完全な私達は、その繰り返しなのだ。


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