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映画『最高の花婿 アンコール』感想

予告編
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 先日投稿した『最高の花婿』(感想文リンク)の続編となる本作。

公開当時、恵比寿ガーデンシネマが一時閉館になる前に最後に観に行った、想い出の一本。
本作の感想文を書いている時は、まさか再び続編が拝めるとは思っていませんでした笑。

あと、本作もWOWOWで6月1日に放送予定だそうです。

よければ併せて読んでくださいー。


ちなみに続編のシリーズ最終作の感想文もありますー。
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映画『最高の花婿 ファイナル』感想|どいひー映画日記 (note.com)


愛おしい頑固おやじ


 前作『最高の花婿』について書いていた時は続編が公開されるだなんて夢にも思わなかった。いや、めちゃめちゃ面白かったんですよ? でも四姉妹全員が結婚したんだからこれ以上何を描くのかなー?と思っていたワケなんです。無論、前作が面白かったからこそ本作を観に行った、僕の個人的意見としては、鑑賞前に前作を観ておいた方が良いとは思います。けど、事前知識無しでも楽しめるように描かれているのも本作の良いところ。開始早々、四姉妹の父親・クロード(クリスチャン・クラビエ)が口にする “ある一言” だけで、前作のあらすじというか、家族構成や娘夫婦たちの特徴、父親の性格までもがすんなり理解できてしまう。この台詞のおかげで、設定を刷り込むために物語が足踏みになることがなく、いきなり本題に入ることが出来る印象です。コメディ映画の続編としてとても良いスタート。それと同時に、本作の(たぶん)主人公であるこの父親の面白さが変わらず活きていると一発で実感できる瞬間でもある。



 この父親の最大の魅力は、母国フランスに対する(過剰なまでの笑)郷土愛のために差別や偏見が甚だしいことと、そんな自分の事を棚に上げて他人に物申すこと。いや、差別意識や偏見について「魅力的」というのは何か違う気もするし、クロードの言動に不快感を覚える方も居るかもしれないけど、これは言葉の綾というか、僕の語彙力不足なだけでして……。ものすっごく簡単に要約してしまえば、この “頑固オヤジ感” が、自分にはおかしくてしょうがないということなのです笑。当の本人はユーモアのつもりで口にしていても、それぞれユダヤ系、アラブ系、アジア系、アフリカ系の旦那が居る4組の娘夫婦たちにとって、その言葉は決して気持ち良く受け取れるものではない。父親以外の「……ん?」みたいなリアクションと変な間が、父親の発言の不謹慎さを浮き彫りにしてくれています。

いや確かに、彼の発言は褒められたものではないことはよくわかるんですけど、何ていうんですかね……「この人はこういう人だしな」と思えるから笑えてしまう。本来ならバッシングを受けるような発言だったとしても「まぁ所詮コイツの言うことだしな」と流せてしまう感覚に近いのかも。ウィットに富んだ発言だと思い込んでいるオジサンのKYぶりが、なぜか笑えてしまう。この辺は好みにもよるので人それぞれだとも思いますが。



 そして本作には、そんな父親に負けず劣らずの頑固オヤジがもう一人居るのもミソ。前作以上にこじらせているようにすら見える。頑固オヤジvs頑固オヤジという構図だった前作とは若干違い、頑固オヤジが頑固オヤジを説得しようとする感じも面白い。手を変え品を変え、相手の頑固オヤジをなだめたり、上手いこと諭してみようと歩み寄る度に「どの口が言ってんだか」と言いたくなってしまう。けど、似た者同士、同類に諭そうとするということは、自分自身に言い聞かせているとも見て取れる。

前作同様、ほんの些細なことで人間は揉めるし、仲良くもなれることがよくわかるのが『最高の花婿』の素敵なところ。正直、この二人の父親の考え方は古い。決して賛同できるものではない。けど実の所、考え方を改めること以上に、本来受け入れるべきは、“受け入れられない自分自身” という事実そのもの。嫌なものは嫌だし、彼らの台詞にもあった通り「ついていけない」と思ってしまう事、それ自体は仕方がない。そんな自分自身をわかった上で、家族の幸せのために決断・行動した彼らが素敵だと思えたからこそ、『最高の花婿』は良かった。偏見や差別だらけなのに、人の良さを浮き彫りにするのは、本作特有の魅力かもしれません。どんなにシビアな話題でも、あくまで家族内の物語だからこそ笑っていられるんじゃないかな。



 娘夫婦たちの個性、そしてその描かれ方も相変わらずなのも良かった。物語の起承転結ごとに、それぞれの夫婦の会話がほぼ同時進行で順番に描かれていく中で、立場や境遇、細かい文言が違うだけで、実はやりとりや考え方は全部一緒。結局男の方が器が小さいし、嫁さんの方が偉いと思ってしまう。こういう所も踏まえると、コメディ映画とか気軽に観られるジャンルは、やっぱり同じ監督の方が良いのかな、と思えてきます。


 他にも、相変わらず何でも食べようとする飼い犬など、前作から引き続きの面白さもあれば、シリア難民とテロを結び付けた偏見を笑いにしてみせたり、新しい要素も加わっていた本作。正直、フランスでこの手(テロ)の笑いを用いるって凄いことじゃないかな? そうは思いつつも笑っちゃったんだけどね。結婚……なんて僕にはまだ縁が無さそうな話題ですが、結婚に悲観的になってしまったらこの映画を観ようと思う。……もう流石に続編はないかな?


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