ベンゾジアゼピンの減薬方法_12_より少量ずつの減薬を行うための5つのポイント~強い離脱症状が出る場合の工夫~
(この記事の内容は私個人の知識・経験・得られた情報に基づく考察であり、減薬をされる方全員にとっての正解を示しているものではありません。お一人お一人にとって最善の方法を見つけるための参考としてご覧いただけましたら幸いです。)
強い離脱症状が出て減薬を続けることが難しい状況になった場合、さらに緩やかな減薬を行うための工夫が必要になります。
そのような場合に考えるポイントは、以下の5つになるかと思います。
1. 液体に溶かす
断薬までの期間を数か月に設定している場合や、アシュトンマニュアルにあるような1か月ごとに10%程度ずつの減薬をするようなスケジュールの場合、薬局で粉砕して調剤してもらったり、ご自身でお薬をカットする方法(ドライカット)をとられていることが多いかと思います。
このような方法で減薬をして離脱症状が強く出た場合には、まず、液体に溶かして減薬する方法に変更することを検討するのが良いかと思います。
私は実際に、お薬を液体に溶かさずに調整する方法を考えてみたことがありますが、液体の方がはるかに扱いやすく正確な減薬ができると実感しました。
ドライカットの場合、液体に溶かすよりも実際の内服量の変動が大きくなっている可能性が高いと思われますので、まずは液体にして内服量を安定させ、さらに、精密な単位で減薬量を調整できるようにすることで離脱症状を小さくすることができると思います。
2. お薬を溶かす液体の量を増やす
すでにお薬を液体に溶かして減薬している場合には、その液体の量を増やすことを考えます。
お薬を溶かす液体の量を増やすと、同じ量の液体に含まれるお薬の量は少なくなります。
例えば、100mlの水に1錠のお薬を均一に溶かして1ml取ると、その中には1錠の1%のお薬が含まれています。その同じお薬を1000mlの水に1錠溶かすと、1mlの中には0.1%の量のお薬が含まれていることになります。このように、液体の量を増やせば、より少量ずつの減薬がしやすくなります。
ただ、溶液の量を増やす場合には、実際にその量のお薬を調剤したり、内服したりできるかを検討する必要があります。
私は、嘔気のために一度にたくさんの水を飲むことができなかったことと、朦朧とした頭でもお薬が何%かという計算がしやすいように、100mlという量を選択しました。
3.より小刻みな減薬にする
階段状にお薬の量を減らすのではなく、なだらかな坂道のような減薬になるようにすると、お薬の量の変化に体が付いていきやすくなって、離脱症状を軽減することができます。
例えば、10日に1回、10mlの減薬をする場合と、10日間かけて毎日1mlずつ合計10mlの減薬をする場合を比較すると、同じ10日間で10mlの減薬をしても、後者の方が離脱症状が出にくくなります。
ですので、離脱症状が強く出てしまう場合は、一日あたりの減薬量がより小さくなるような工夫をすると、減薬しやすくなります。
私の場合は、1日あたり0.1%の減薬によって、自力でトイレにも行けないほどの離脱症状が出たため、より小刻みな減薬を目指して0.01%単位の調剤ができる方法を考えることになりました。
4.液体を吸引する器具を変える
水溶液法で減薬する場合、シリンジを用いて調剤することが多いかと思います。
シリンジは小さなものほど少量の液体に対応したメモリが付いています。
例えば、一般的に医療現場でよく使われるテルモのシリンジであれば、50mlのシリンジでは最小のメモリの単位は1mlです。一方で、1mlのシリンジの最小のメモリは0.01mlです。
ですので、より小さなシリンジを使用した方がより少量の調整ができることになります。
0.1ml単位の減薬が大丈夫な体質の方であれば、このようなシリンジの方法で減薬可能だと思われます。
一方、私のように0.1ml単位の減薬で離脱症状が強く出過ぎて継続不能になった場合には、さらに工夫を加える必要があります。減薬量が多くなってくると、シリンジでは微量の調節が難しくなるからです。
例えば、100mlの溶液から0.05ml除いて99.95ml内服する場合には、1mlのシリンジで0.05ml吸って破棄することで比較的正確に調剤することができるかもしれません。しかし、減薬が進んで35.05ml破棄したい場合には、1mlのシリンジだけでは操作が大変ですので、50mlのシリンジで35ml破棄し、残り0.05mlを1mlのシリンジを用いて追加で破棄するというような操作になると思います。この時、50mlのシリンジには大きな誤差があるため、1mlのシリンジを用いて行っている微量の調整は誤差の範囲内になってしまい、あまり意味がなくなってしまいます。1mlのシリンジで35回吸引したとしても、1mlシリンジの誤差が35回分蓄積することになります。
そこで私の場合には、マイクロピペットを用いることとしました。
マイクロピペットにも誤差があるので完璧というわけではありませんが、シリンジよりは小さな誤差で0.01ml単位の調剤を行うことができます。
そして、実際に私はマイクロピペットを用いることで、シリンジで減薬していた時に生じたような大きな離脱症状を起こさずに断薬することができました。
5.減薬しない日をはさむ
「減薬しない事」は「ステイ」と呼ばれていますが、このステイの期間を利用することで、一定の期間内に減薬する量を少なくすることができます。
減薬する日としない日を作ることになるので、グラフにすると、まさに階段状となり、3で述べたことと矛盾するように見えますが、実際に扱える水溶液の量に限界があるため、一定期間あたりの減薬量をさらに小さくしたい場合には、ステイの期間を加えることで実現可能になります。
私の場合、上記のように0.1ml/日の減薬で非常に強い離脱症状が出たため、次にトライする減薬量を考えた際、その1/10の0.01ml/日でも継続可能か疑わしい気がしました。
しかし、1回の調剤ごとに正確に調整できる量については、0.01mlが私にとって実行可能な限界であると思われました。
そこで、さらに緩やかな減薬を行うため、0.01mlの減薬を1日おきに行うことにしました。つまり、1日0.01ml減薬したら、1日ステイすることにしました。
さらに、これを10日間続けて合計0.05mlの減薬になったら、5日間ステイの期間を設け、合計15日間で0.05ml減薬する過程を一つのサイクルとして、このサイクルを何度も繰り返すスケジュールを立てました。
このサイクルであれば、1か月あたり0.1%の減薬となり、最初に失敗した1日あたりの減薬量を1か月かけてなだらかに減薬するというスケジュールを実現しました。
15日間で0.05mlですので、1日あたりの減薬量に換算すると約0.003%というスピードになります。
実際、このスピードで減薬すると、0.1%の減薬ほど大きな離脱症状が出ることは無く、たくさんの人の手を借りながらではありますが、減薬を継続することが可能でした。