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詩集:自家中読

14
生活の中から生まれた言葉を縫い止めた刺繍。つれづれ。記録。
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#ことば

第九、うれしみをうたう

第九、うれしみをうたう

ゆうべの夜空を見上げし君と
月影、背に浴び駆け行く僕は

スピカ目指せば
結ばるだろうか

レグルス胸にいだきて走るよ

翼なくとも
翔べるかのような

逸りて行かんよ
その手を取りに

忘れじ
(彼の道)
迷わず行けよ

もしもし、ほんね

もしもし、ほんね

うん
あー、元気
(胃が痛くて毎日薬飲んでる)

特に変わりないよ
(消えたいと思う日もあるよ)

ちょっと…そうだね、落ち着いたら
うん、また行けたらと思ってる
(行けない。顔を見たら糸が切れそうで)

え?うん、子どもたち?
元気だよ、全然、もう背だって追い越されそう
(独り立ちまで指折してる)

そうだねー、仕事忙しいみたい
なかなか、休みも疲れてるみたいだし
(知らない、もう業務連絡以外し

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とまれない。私たちは

とまれない。私たちは

いいんじゃないかと思う

たとえ今日
一歩も進めてなくても
何ひとつ成し遂げてなくても
筆が進んでなくても
心が動いてなくても
隣のあの子より問題が解けてなくても
笑ってなくても
泣いてなくても
別れられなくても
届かなくても
言えなくても
怒れなくても
悲しめなくても
歌えなくても
満足な呼吸ができなかったとしても

放っといても、周ってるし回ってる

全部投げ出して停まっても

この惑星にいる

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テキスト、トリミング-八月終わり-

テキスト、トリミング-八月終わり-

やまのみどり
揺れる、稲
川から藻のにおい、かすか
山ぎわは白い黄色なライン

仰ぐ空は
山吹から薄紅
とうめいな紫、水色から深い青

そして群青と藍

抜ける風の中に夕げの香り

夕日に向かう単線の汽車
少し重たげに

視界の全てにかかる
ノスタルジックのオーバーレイ

帰るからす
三つ、四つ

音叉

音叉

わたしたちの会話は
心のふるえを
空気のふるえに変えて
おたがいの心に届けてる

あの日
あのとき

ほんのわずかな心のふるえを
ていねいに拾ってくれたあなたに

今度は空気をいっぱいふるわせて
ありがとうを伝えたい