シェア
虎馬鹿子
2022年1月1日 00:13
今日あいつに似たやつを見かけた。あっちもおれに興味があったみたいだ。そう、男が女に話すのは、もう、何度目か。男は猫をなくしている。女には、なついてくれた、はじめての猫だった。 一女は友人に誘われて、男の実家にある男の部屋を訪れた。三方に窓が開き、日なたと、趣味のこまごまとにあふれていた。にゃあと男の飼い猫がやってきて、客人たちの足元を、くるり、くるりと一周ずつした。終える
海亀湾館長
2022年1月1日 15:39
短編小説◇◇◇ 1 そして知冬は、ぼくが見ている前でチャコールグレーの手袋を脱いだのだった。ぼくはこのとき、どんな表情をしていたのだろう。自分のことながら、今もって思い出すことができない。ぼくは、手袋の下から現れた彼女の手を見ていた。現れるはずだった手を見ていた。現れるべきところに現れているはずの手を。見えていないのに見ようとしていた。 2 知冬が手袋を脱ぐその三十分前、ぼくら