まさか読書に目覚めるなんて
喉が痛いな、と思った翌日、ものすごい熱が出た。
コロナ陽性。あぁ、やっぱり。
ふらつく頭を押さえつつ、起床し、ポカリをぐっと飲む。
それが、美味しいのなんのって。
飲み過ぎ注意と思いながらも、ただれた喉を潤す感覚が気持ちよすぎて、止まらない。
そしてゼリー飲料で胃を保護したあと、ようやく解熱剤を口に放り込み、急ぎ元いた布団に戻る。
その一連の作業を、何回繰り返したことだろう。
とはいえ、薬を飲んで数時間たつと、少し体が楽になる。
いつもなら十分しんどいはずの体温ではあるが、高熱のあとの37度台は、なんだかとても普通に思える。
横になってできることといえば、スマホいじりくらいしか思い浮かばない私は、そうだnoteを読んでみよう、とくるくる画面をいじり、興味ありそうなタイトルを見つけては、ランダムに読んでいく。
ちょうどコロナ感染前に、noteを再開できたのも、何かご縁があったのかもしれない。
読んでいくうちに、noteは、「本が好き」「読書が好き」という人であふれていることに気がついた。
そうなんだ。
書くことが好きということは、読むことも好き、なんだ。
私はというと、高校時代に、一時期、純文学にハマった。
それを好きと思い込んで、うっかり国文学科に進学してしまったばかりに、学生時代、大変な思いをした。
私はただ、読書好きな高校生、というだけで、文学について学びたいと思ったわけではなかったからだ。
大学の専攻の勉強は、何一つ面白いと思えなかった。
それだけでなく、読書すら辛くなってしまい、本を開くことが苦痛になってしまった。
卒業と同時に、社会人サークルに2つも入ったこともあり、とにかくあちこち出歩き、遊び、活動に大忙し、という時代を送る。
読書をするという時間は、ほぼなかったと言ってもいいかもしれない。
でも、その後、いろいろなことが重なり、ひどくこころを病んでしまう。
社会が怖くなり、家に引きこもるのだけれど、じゃあ久しぶりに本でも読もうか、とページを開いても、まるで読めなくなっていた。
文字が頭に入ってこない。
数ページもすると、辛くて読み進められなくなってしまう。
その後、ほとんど私はろくに本を読まずに来てしまった。
少し話が逸れてしまったけれど、noteを読んでいて、もう一つ、気づいたことがある。
それは、みな、「本屋さんが大好き」ということだ。
並々ならぬ愛情を持っている。
あー、そういえば、とはるか遠い昔を思い出す。
私もご多分にもれず、本屋の好きな高校生だった。
自転車通学の途中にあった、お気に入りの本屋さんで、太宰とか芥川とか、買うのを楽しみにしてたっけ。
でも、今はどうだ。
ごくたまに本屋に行くと、もう、知恵の宝庫で迷子になった気がして、心細く、一体この膨大な本の中から、私の一冊、なんてどう見つけていいのやら、途方にくれる。
店内をぐるぐる回り、それでも決めかねつつ、せっかくだから、どれか一冊…と選ぶのは、結局、近場の観光ガイドかグルメ雑誌くらい。
なかなか文章みっちりの本は、選べない。
でも今回の、コロナ療養が、私を変えた。
読書や本屋さんが、どんなに素晴らしく楽しいものか、というnote作家さんたちの熱い想いに触れ、「どれ、私もちょっと、読書でも」という気持ちが湧き起こったのだ。
本屋には行かれないので、家に何かないかなぁ…と、棚に目をやると、なんと、いつ買ったか忘れたけれど、小説が一冊。
原田ひ香著「三千円の使い方」。
「よし、読んでみよう!」
目が、ゆっくり文字を舐めるようにしか動かないが、でもちゃんと、読めている!内容もわかる、頭に入る!
不思議だ。熱もあるし、決して調子がいいわけではないのに。
それでも毛布を引っ掛け、ソファに寝転び、夢中になって読んでいた。
読了の余韻、心地よさ、って一体いつぶりだろうか。
そして、心の中には、すっかり見知った関係になった、登場人物の面影が残る。
さらには、これまでと違ったお金の感覚や、節約の考えまで芽生え、ちょっと自分が賢く、成長したようにさえ思える。
読書って、すごい。
私、人生、損してた。
そう思ったけれど、でも、読めなかったのだから、過去を責めても仕方がない。
今回、読める日やタイミングもある、ということがわかったし、何より脳が、読書の心地よさを覚えたのだ。
また本が読みたい!
そこで、次の本を求めて、家族にお店へ走ってもらった。
青山美智子著「お探し物は図書室まで」
これは、あるnote作家さんが本の紹介をされており、絶対読みたい!とメモしていたものだ。
登場人物は、それぞれぼんやり悩みや葛藤を抱えているが、司書さんからのお薦めの本を読みながら、自分の生き方を見つめ直していく、というお話。
私の背中を後押ししてくれる本は、何だろう。
読めば読むほど、たくさんきっかけが掴めるのでは。
すっかり読書に魅了された私は、コロナ療養が明けると、早速本屋へと向かった。
不思議と、迷子の感覚が消えていた。
毎日は無理かもしれないけれど、これから生活の中に、読書という特別な時間を作りたい。
本を通して、いろいろな体験をし、学び、それを日々の暮らしに活かしていけたら。
たまには、読書後の感想なんかも、書けたらいいな。
もしかしたら、それが誰かに、つながるかもしれない。
インプットとアウトプット。
あぁ、やっぱり、読むことと、書くことは、ひとつながりなのだ。
なんだか深く、納得した。
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