ノベルゲームを作ろうと思ったら15年かかった話【第19話】再開編②ゼロから始まるツール選び
これは、サウンドノベルの持つ魅力に取り憑かれ、「自分でもノベルゲームを作ってみたい」という思いを抱き、終わりのないゲーム制作に足を踏み入れた1人の個人ゲーム制作者の物語である。
Nscripterで人生初のノベルゲーム作りを始めた落柿(らくし)。コロナ禍で時間を持て余していた中、かつて自分が作っていたノベルゲームの存在を思いだす。PCの中に眠っていた自作ゲームに夢中になるも、そのゲームは中途半端なところで制作放棄されていた。
「う、うう……。このゲームを最後まで遊びたい……遊びたいよぅ」
落柿はPCの前で悶絶した。そして気づく。
「そういや本編の他にサブシナリオをも書いてたな。これも読んでみるか……」
Nscripterのスクリプトはテキストデータで保存されている。だ。とはいえサブシナリオはまだほとんどスクリプトを組んでおらず、ゲームとしてプレイできる状態ではなかったため、メモ帳で開いて文章を読んでいく。
「すげえな。これ原稿用紙換算何枚ぶんだ? 体感でそれぞれのシナリオが100〜300枚くらいありそうなんだが? どれどれ……」
作っていた頃の気持ちを忘れ、完全にただの読者と化す落柿。
…………。
…………。
…………!
それらのシナリオを読み終わった落柿は……
号泣してた。
酷い! キャラクターの扱いが余りにも酷い! どいつもこいつも不憫すぎないか? 作者は鬼か? いや悪魔か? しかも書くだけ書いて放りっぱなしで完結もさせないとか……救いは? 彼らに救いはあるんですか?
「……やるか」
7年ぶりによみがえってきた闘志。心の中が福本漫画のように熱くなる。落柿は立ちあがった。
「完成させるか、このゲームを……!」
……でも、どうやって?
Nscripterの知識はこの7年で完全に初期化されている。
最近はシナリオや小説もめっきり書かなくなり、きっと文章力も落ちている。マラソンにハマったことにより外出も増え、読書時間もめっきり減った。ゲーム自体、最近はめっきりやってない。
そんな自分に、こんな長編ノベルゲームを作りきれるのだろうか……?
うう。怖い。現実と向き合うの怖い。これを作っていた頃の熱量とスキルが果たして今の自分にあるのか?
「それに正直、話も忘れてるんだよなぁ……」
過去の作者はプロットすら残さなかった。それによりこの話をどう着地させるつもりだったのか知る術がない。なんとなくこう……うっすらと覚えているような気が……しないでもない……こともないかもしれない……。
…………。
…………。
…………。
「まあいいや。やってるうちになんとかなるだろ!」
あ、今完全に元のメンタルに戻りましたね? あの無計画で無鉄砲なメンタルに? でもその結果、こうして完成してない事実かある訳じゃないですか? 今度こそもっと計画的にやったらどうなんですか?
本人のやる気とともに、ツッコミ役にもキレが戻ってくる。
「うるせえ!」
「当時からプロットも書かず、3行先がどうなるかわからない状態で執筆してたんだろ? だったらきっと3行書けば……どうにかなるだろうがッ……!」
「それにこれはまだ〝結果〟じゃない! なぜならまだ完成してないんだからな! このゲームを完成させ、俺は勝つ!」
いや……勝つって、何に?
もう誰の言葉も耳に入らない落柿。
普段使いのMacBook Airを開くと何やら調べ始めた。
「最初にNscripterでゲームを作り始めてから約10年……きっとノベルゲーム制作ツールも何らかの進化を遂げているに違いない。それにそもそも、Nscripterが今もサポートされてるのかどうかを調べなくちゃな」
カタカタカタ……。
「Nscripterはまだ使えるみたいだけど……そもそも自分の入れてるWindowsが古くなっちゃったしなぁ。当時は見つけられなかったけど、Macでノベルゲーム作れるツールとか出てないかな?」
カタカタカタ……。
「お! あるやんけ! 何々……ティラノスクリプト? 名前的にNscripterと同じような感じで使えそうな予感。しかも無料?」
え、神かな?
カタカタカタ……。
さらにティラノスクリプトのことを調べる落柿。
「ん……ティラノスクリプトの他に、ティラノビルダーっていうのもある? 何々、プログラム不要? 直感的な操作で本格的なゲームが作れる? なるほど。それっていわゆるホームページビルダーみたいな?」
とホームページビルダーを使ったこともない落柿はもっともらしくうなずきながら説明文を読んでいく。
「何? スクリプトもビルダーもMacで使えてさらにWindowsとMacのどちらのアプリ化も可能……だと?」
え、唯一神かな?
PCの前で落柿は雷に打たれたような衝撃を感じていた。
自分がノベルゲームの制作再開を決めた直後にこのような自分のニーズに合ったドンピシャのツールが見つかるとは。これは運命だ、と(自分に都合のよい解釈をして)思った。
「よし! 決めた! アカイロマンションはこのティラノビルダーかスクリプトに移植する! そして完成させる!」
新たな決意を胸に、落柿は拳を握り締める。
そしてここから落柿のゲーム制作開発は本格的に再始動していくことになる。
「アカイロマンション完全版」が完成するまで……あと4年。
そんな落柿が15年かけて作ったゲームはこちら。
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