#12 名刺代わりの小説10選
こんにちは、立竹落花です。
昨日の#11に引き続き、今回の記事も本にまつわるものになります。
今回はX(Twitter)の読書垢界隈における素敵なタグである
「名刺代わりの小説10選」にあやかって、
大好きな小説10作品を紹介します!
1:現代の日本ファンタジーの金字塔!
精霊の守り人/上橋菜穂子
女用心棒バルサが、精霊を宿した皇子チャグムを守る命を受け戦い抜くファンタジー作品。
「守り人シリーズ」の1作目にあたります。
僕の中では、生涯ナンバーワンはこの作品で揺らぐことはないと思います。
読み応えはありますが、上橋先生の文体は非常に易しいのですらすら読めます。そして、情景が頭に浮かんでくるんですよね、不思議と。
バルサの強く、無骨な姿勢の中に芽吹くチャグムへの親心……これがまたじんと来るんです。
ファンタジーがお好きな方は是非! アニメもおススメです!
2:愛と思い出に、時間なんて関係ない
東京會舘とわたし/辻村深月
東京駅・有楽町駅から近い丸の内地区にある東京會舘が舞台。
大正時代から戦争、そして復興から平成と時代ごとに東京會舘に思い入れを持った人々が紡ぐ大河物語です。
東京會舘といえば結婚式……そして、芥川賞・直木賞受賞会見の場所としても有名ですね。かつては歌手・越路吹雪さんがコンサートでよく使われており、それにまつわるお話も印象的です。
周りはどんどん変わっていくし、東京會舘自体も戦争などを挟みながら変化をするんですけど、そこで過ごした人々の愛情も思い出も熱量は一切変わらない。それらを語る登場人物たちの言葉に胸を打たれます。
心が温かくなる素晴らしい短編連作集です。
3:ゴッホと弟テオの儚くも切ない人生譚
たゆたえども沈まず/原田マハ
原田マハさんはキュレーターのご経歴があり、それまでに培った知識や自身のアート経験から「アート小説」という一つのジャンルを作った方です。
数ある素晴らしい作品の中で、迷いましたがこちらをセレクト!
稀代の画家ゴッホの壮絶な人生、そして彼を支えた弟テオの苦悩に溢れた兄への愛情——2人の物語にどんどん引き込まれていきます。
アートに興味がなくても是非手に取ってみて下さい。アートに興味が出て、美術館へ足を向けたくなりますから!
4:普通って何? あるあるが溢れた問題作
コンビニ人間/村田沙耶香
この小説を読んで心から思ったのは、他人の言葉というのは時に鋭利な刃物になるし、自分の人生を狂わすものになるということ。
周りから何を言われても、たくましくコンビニ店員として生きる主人公の姿に爽快感すら覚えます。
誰でも一度は抱いたことがあるであろう、人間関係のモヤモヤだったり、他人の言葉だったりを明確に物語として落とし込んでいる傑作です。
この作品を模して言うのであれば、僕はまさしく「図書館人間」です。
5:書簡の往復だけで紡がれる2人の恋物語
ののはな通信/三浦しをん
装丁は可愛らしいのですが、そこからは全く想像できない壮絶な世界がこの小説には広がっています。
地の文はなく、「のの」と「はな」の2人の書簡でのやりとりのみで構成されているかなりユニークな作品。
最初は女の子2人の可愛らしいやりとりなんです。けれど、それがどんどんこじれて、時が流れて、思わぬ方向へ進んでいく……全くもって終わりの読めない展開でした。こうなっていくのかと驚きました。
設定上苦手な方もいるかもしれませんが、人の関係の変化というのをありありと表現された名作中の名作です。
6:壮大な世界へ誘われる極上ファンタジー
レーエンデ国物語/多崎礼
呪われた土地であるレーエンデ国の歴史を描くファンタジー作品。
「革命の話をしよう」という言葉がこのシリーズには何度も登場する通り、シリーズ通してレーエンデ国の革命の様子が描かれます。
とにかく世界設定の作り込みが半端じゃない!
まさしくこの本の中にはれっきとした一つの国が包まれています!
数多ある日本生まれの西洋ファンタジーの代表作になるであろう、いや、もはやマスターピースとなっている作品です。
7:予言か、それとも空想か
東京都同情塔/九段理江
小説内に生成AIを用いた箇所があるという著者の発言が物議を醸した問題作ともいえる作品。
なのですが、個人的には生成AIを巧みに使った傑作だと思っています。
コロナ以降に感じるどことない違和感を明確に、皮肉的に表現されています。それでいて、生成AIがどんなに発達したとしても、人間は考えることをやめてはならない……そんなメッセージも感じられる作品です。
8:みんな大好き鬼才少女・成瀬
成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈
周りの読んだ人は皆、成瀬に魅了されています。
僕もそのうちの一人!
成瀬の奇抜な発想と行動に周りは巻き込まれまくるものの、いつしか彼らも成瀬のファンになっていっている……どんだけ人気者なんだ。
成瀬にはやりたいことがたくさんあり、失敗を恐れず、とにかくチャレンジし続けます。その真っすぐな姿勢に胸を打たれるものがあります。
そして、結果的に本屋大賞という天下を取ってしまった成瀬、恐るべし。
9:人間とロボットが共生する未来予想図
クララとお日さま/カズオ・イシグロ
子どもの成長を手助けするロボット、AF(人工親友)であるクララが主人公。
ショーウインドーに立ちながら人々を眺め、とある家族に買われて健気に家族を支え、そして人間関係の不和に巻き込まれていく。
とにかくクララは健気なのです。だからこそ苦しいし、人間の身勝手さを考えさせられてしまいます。
『東京都同情塔』同様、これも未来にあるかもしれない世界。
胸が苦しくなる部分もありますが、これを読んだ後は誰かに優しくしたくなると思います。
10:全く違う二つの世界が織りなす幻想物語
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹
日本の作家の中でも突出した人気を誇る村上春樹氏ですが、周りは大好きと苦手の二手に分かれます。
僕は大好きな方で、その中でもこの作品が一番好きです。
ただ、感想を述べよと言われても……難しいんですよね。
高い壁に囲まれた世界という世界観、部屋を壊されまくっても動じず「やれやれ」と言いながらビールを飲むハードボイルド・ワンダーランドの主人公。いったい、なぜこの二つの世界を一つの作品にできたのか、不思議でなりません。
だけど引き込まれるんです、不思議と。言葉にできない魅力がこの作品にはあります……という紹介ともいえない紹介になってしまいました。
10選では足りない
この記事が、この素晴らしい作品たちとの出会いに繋がってくれたら、望外の喜びです。
ただXのタグに10選とあるから10作品選んだだけで、正直足りない!
そして、まだまだ読んでいない素晴らしい小説がたくさんあると思うと、日々の読書をやめられませんね。読書は沼です、沼。
これを読んで下さった皆さまのお好きな小説も是非教えて下さい!