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八百万あぶない嘘をつくしぐさ

 現代川柳と400字雑文 その36

 映画『カーズ』で感心したのは、虫のハエ(だったと思う)に対して、擬人化ならぬ「擬車化」が施されていたことだ。厳密に言うと「擬人化された車化」というややこしい言い方になってほんとうにややこしい。要するに、ハエがあのサイズ感のまま人格を持った車の形をして描かれていた。そもそも作品自体、人間が存在せず、「擬人化された車」が登場人物ひとりひとりにあたるという世界観だ。ハエを擬人化することがすなわち「擬人化された車」化することなのは理屈と言える。言えるが、冷静に画面を見れば、小さいハエが車の形をしており、しかもそれは擬人化された車なのである。なにがどうなっているんだ。しかもその描写のうえでわかりやすさに着地し、人気にさえなっている。そのキャッチーさを含め、擬人化という手法のグロテスクな部分を見せられた気がした。思えば、車を擬人化(『カーズ』)する前は、昆虫を擬人化(『バグズ・ライフ』)していたピクサーなのだった。

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