廃れた土地で見つけたオアシス。1
東京、憧れの街。いつか住みたい。
東京の大学に行くんだって。
東京に行って、最高の人生を満喫するんだって。
そう夢を思い描いていた。
あの時の私は、胸をときめかせていた。
あの日が来るまでは。
2022年2月4日
いよいよ受験が始まり、1人で東京へいざ出陣。
初めての東京!と心が踊っていたが、待っていたのは過酷な世界だった。
迷路のような駅、軍隊の行進のように行き交う人々。ぶつからないことの方がめずらしい。
私は2週間ここに居なきゃいけないんだ、と絶望した。
2週間分の重たいスーツケース。
どこから地上に上がれるのかも分からない。
重たすぎて持ち上げることもできない。
誰も助けてくれない。
誰に聞けばいいのかも分からない。
受験が始まる前日にもう心は折れていた。
そんなとき一筋の光が差した。
「お姉さん、手伝おうか?」
3、4個くらい上のお兄さんだった。
私にとっては救世主だった。
私の返答を待たずして、地上へと連れていってくれた。そして、
「心配だからホテルまで連れてってあげるよ、どこのホテルに泊まるの?」
って。なんて優しい人なんだろう。
ホテルまでの道中は
「何しに東京来たの?」
「なんで東京の大学に来たいの?」
なんていうたわいもない話をして。
そしたらホテルに到着。
『ありがとうございました🙇🏻♀️すごく感謝してます』
「いえいえ、受験頑張ってね」
『はい!頑張ります!』
そう言ってホテルのフロントへ歩こうとしたが、名残惜しくて振り返るともうそこにはお兄さんはいなかった。
いまだに離れることがない、あの香水。
あれから数日間は匂いが移ったままだった。
あれから私は晴れて東京の大学に進学。
花を咲かせたのだ。
DiorのSauvageという香水だったと分かったのは大学に入学してから数週間後のこと。
そして、あのお兄さんに再会したいという想いを抱いて上京してきたのは言うまでもない。
彼は私にとってのオアシスだ。
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