廃れた土地で見つけたオアシス。2
桜がひらひらと踊る中、
地方出身の私は、晴れて東京の大学に進学。
新しい生活が始まった。
1人暮らしで東京。もう憧れそのものだった。
洗濯、自炊、掃除、、、。
何もかも1人でやる。1人で生きていく。
私はその意味をちゃんと理解していなかった。
この時は。
ちょうど2ヶ月が経った頃、
私はある壁にぶち当たってしまった。
1人暮らしの本当の実態。
授業を受けて、バイトをして、サークルにも所属して、それでいて、洗濯など家のことを全て自分でやらなければいけない。
そして、話し相手が誰もいない。
家に帰っても無機質な音がするばかり。
実家にいた頃のみんなの声はもう聞こえない。
2週間ほど精神的に陥ってしまった。
大学も行かず、バイトにも行けず。
ご飯も食べずにひたすらベッドに横になっていた。
ある日、ふと思い立った。
あのお兄さんと出会った場所に行けば、
あの時の気持ちを思い出して、また再出発できるんじゃないかって。
あの日あの場所で出会ったお兄さんに偶然にも会えるのではないかと期待を胸に。
あの時と同じ。やはり、人がいっぱいだった。
そして、無関心だった。
本当にこの人たちは人なのであろうかと疑うほどに。
私はあのお兄さんに会えなかった。
私のオアシスは失われたのだ。
だが、1つ収穫があった。
東京で私と同じような子がいた時、助けてあげることが私に唯一できることじゃないのか、と。
だから、頑張ろうと思えた。
そして私は学校へ行けるようになった。
サークルにも積極的に参加し、同期や先輩とのつながりもたくさんできた。
ある時、サークルで新歓BBQをやると聞き、
参加するかを聞かれた時に二つ返事で参加と答えた。
この時はまだ、この選択が運命を左右することを私は知らなかった。
BBQの日、わいわい騒いで大学生って感じでとても楽しかった。
途中から参加した人も何人かいて。
みんなで仲良くなることが目的の新歓だから、席の交代が頻繁に行われた。
席を交代した時、一瞬電気が走ったように感じた。
間違いない。あの時の香水だ。
誰だ。どの人だ。
分からない。
高鳴った鼓動を抑えながら、隣の席の人と話す。
そして、
肩を叩かれた。
「ねぇ、新入生さん?出身はどこなの?」
振り向くとDiorの匂いがした。