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所有というものは悲しい。

季節は春だった気がする。
散った桜が雨で地面にへばりついてたっけ。
彼氏は他の女子と楽しそうに話している。
正直私は悲しいとも寂しいとも思えず
『無』だった気がする。
どうでも良くなっていた。
嫉妬することもなかった。
付き合う前の片想いが幸せだった。
両想いだと知って嬉しかった。
でも、付き合ってしまうとそれ以上の感情がなく
恋をするってどういうことかを考えるようになった。
…所有というのは悲しい。片想いしている時間が幸せだった。
でも、こんな感情になったのは彼の所為。
『付き合うってどういうこと?』と聞いたら
『特別な関係になるってこと』だなんて言うから。
『特別な関係』なら付き合う必要ない。
男女の関係なんてよくあることじゃん。
『友達以上恋人未満』が『特別』だと思う。
こんなことを考えてしまった私は、
友達という関係でありながら、片想いしていた期間がとても幸せだったことに気づく。
自分からはメールしない、話しかけない、甘えない…
ずいぶんと冷めた女だなぁと思われたかもしれないが、
これが私だから仕方ない。
こんな私を彼がずっと好きでいてくれるとは思わなかった。
だんだんと距離が遠くなって
彼は他の女子と2人でカラオケに行ってたっけ。
どうぞ、ご自由に。
『さよなら』も『ありがとう』も
言われる前に…言う前に…
自分からサラッと消えたのは私です。

あれから数年後…
久々に会う友達とカフェで語るためだけに
いつもよりも時間をかけてメイクして
ピアスもつけて新しいワンピースを着て駅へ向かう。
電車に乗る時は、読書をするのだが、
その日は乗り換えが多く、物語に何度も栞を挟まなければならない。
あと3駅だと思いながら駅のホームで本を読んでいると
栞がひらひらとコンクリートの上に落ちて…
あぁ、桜もこんな感じで今年も散ってたっけ〜
なんて呑気に拾おうとしたその時、
スーツを着た男性が拾ってくれた。
『すみません。ありがとうございます。』と
男性の顔をよく見てみると
数年前に付き合っていた元彼だった。
時間に余裕があったので少しだけ話した。
あの時、ごめんもありがとうも言えなかったこと。
再会できたことが嬉しいということ。
でも彼は
『今、言ってくれたじゃん、敬語だったけれど。それに再会できて嬉しいって言ってくれたのが嬉しい。』て。

もし数年前、追いかけるような女だったら
こんな出逢いなかったかもしれないよね。
無意識にあんな選択をできたから
この再会がとても心地良いものになった。
片想いって辛いかもしれないけれど
本当は幸せなんだよ。

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