マガジンのカバー画像

余談的小売文化論

「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手が自分なりの正解を見出すための一助になる…
¥800 / 月 初月無料
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

1月に読んだ本まとめ

1月に読んだ本まとめ

2022年初の読書録!今月は英語の原著(未翻訳)を含む合計5冊の本を読了しました。いつもより専門書多め、文芸少なめだったかも。

もっとみる
チェーンストアへの誤解

チェーンストアへの誤解

「チェーン店」が一般消費者からポジティブに語られることは少ない。ビジネスの世界でもチェーンストアの画一性やマニュアル的なオペレーションに対するアンチテーゼが語られることも多い。
チェーン店ばかりが並ぶ地方のロードサイドは否定的な文脈で語られがちだし、デートでチェーン店に行くかどうかについてしょっちゅう論争が巻き起こっている。

たしかに旅行先でチェーン店しか選択肢がないとがっかりするし、その土地に

もっとみる
文化と倫理の線引きと落とし所

文化と倫理の線引きと落とし所

「文化」は、人々が暮らし営んできた道を振り返ってはじめて認識されうるものである。文化は作ろうと思ってできるものではなく、日々の中に自然と息づく習慣や価値観によって他と区別できるほどの違いが生じた際に文化として「発見」される。

しかし文化は必ずしも美しく賞賛されるものばかりではなく、その文化の中にいる人々を苦しめる悪しき習慣や、他の文化文明から見ると歓迎しかねる野蛮な側面も含んでいる。

もっとみる
1月の #あさみのまなび ベストセレクション

1月の #あさみのまなび ベストセレクション

今月も「消費文化総研コミュニティ」のSlackで私が淡々と投稿している「まなび」の中から抜粋したまなびセレクションをお届けします!
まなび全文にご興味のある方はコミュニティへどうぞ〜!

私たちの「結婚式ムービー欲」

私たちの「結婚式ムービー欲」

TikTokには意外と自分が撮った写真やムービーを人気の曲にあわせて編集してアップしている人が多い。カップルの記念日や親友の誕生日など節目節目に思い出の断片を集めてつなぎあわせ、オリジナルのコメントや歌詞を入れたりして感動的な動画に仕上がっている。

これらの動画にうっすらとした既視感を覚えていたのだが、ある日ふと答えに行き着いた。結婚式で流れるプロフィールムービーと作りがほぼ同じなのである。

もっとみる
向学心が搾取されやすい時代に

向学心が搾取されやすい時代に

私たちは義務教育として最低9年間は勉強に励む。さらに多くの人は高校で3年、大学で4年の教育を受ける。つまり大学まで行くとすると16年もの間、学習に勤しむことになる。

学生時代の学びの成果はテストで計測されるが、社会に出たあとは知識や思考力を測るものさしはほとんどない。ゆえに費用対効果を算出するのは難しく、自分の立ち位置を再確認することもできない。
そしてともすると「自己成長」「大人の教養」「学び

もっとみる
消費と定住の推進

消費と定住の推進

今どきの若者はモノを買うことに興味がないと言われる。その要因として消費の飽和や年収の低さが挙げられるが、もっと大きな要因として移動の自由度の高さがあるのではないだろうか。

もっとみる
リベラルであること、伝統を重んじること

リベラルであること、伝統を重んじること

イギリスに"Holkham Hall"というカントリーハウスがある。250年以上の歴史をもつ巨大なお屋敷だ。

イギリスにはまだ爵位が存在しているので、伯爵夫妻が広大な土地と建物、所蔵している美術品を管理している。日本の場合はこうした歴史的価値のある建造物はほとんどが国や地方自治体が管理・整備して公開しているため、私有財産をある種の公共財として世に還元しようとするイギリス貴族の姿勢が連綿と続いてい

もっとみる

「推しエコノミー」の先にあるもの

いまやテレビやSNSでそのワードを見ない日はないほど市民権を得たのが「推し」である。一昔前まではオタク趣味として敬遠されてきた、何かを熱烈に追いかけ応援する営みは、今や女性ファッション誌でも推奨されるほど当たり前のものとなりつつある。

「推し」という言葉が生まれる前から、どんなジャンルにも熱烈なファンは存在した。古くは「親衛隊」と呼ばれるアイドルファンから、「担当」というジャニーズ特有のワードま

もっとみる