「推しエコノミー」の先にあるもの
いまやテレビやSNSでそのワードを見ない日はないほど市民権を得たのが「推し」である。一昔前まではオタク趣味として敬遠されてきた、何かを熱烈に追いかけ応援する営みは、今や女性ファッション誌でも推奨されるほど当たり前のものとなりつつある。
「推し」という言葉が生まれる前から、どんなジャンルにも熱烈なファンは存在した。古くは「親衛隊」と呼ばれるアイドルファンから、「担当」というジャニーズ特有のワードまで。アニメであれゲームであれ、熱量のあるファン同士が集まりひとつのクラスタを形成するのは社会的動物としての人間の本能でもあるのかもしれない。
ただこの5年ほどで大きく変化したのは、SNSやライブ配信の発展によって「推し」の対象者、つまりファン側から見れば選択肢が増えたということである。
これまではアイドルにしろアニメにしろゲームにしろ、公式(=企業)が作り上げたものだけが対象とされてきた。しかし今は誰もがスマホひとつでコンテンツを発信し、ライブ配信でファンと繋がることができる時代である。
推しの選択肢が広がり、誰もが何かしら自分の「推し」をもつ世界。
これだけ聞くと愛に溢れた理想的な世界にも見える。
しかし実際に「推しエコノミー」がヒートアップしていく様を見ていると、安易に推し・推される関係を目指すのは危険なのではないかと思わざるをえない。
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