145.藤井聡太棋聖誕生!AIを超える棋力は升田幸三第四代名人の再来か?
藤井聡太棋聖、タイトル獲得おめでとうございます!
2020年7月16日、渡辺明現二冠から棋聖位を奪取した藤井聡太新棋聖。17歳11カ月のタイトル獲得は、屋敷伸之九段が持つ最年少記録(18歳6カ月)を更新、初の現役高校生のタイトルホルダーとなりました。アベマタイムズから対局後の声を引用します。
対局後、藤井七段は「バランスを取るのが難しかった。最後までわからなかったです」と対局を振り返ると、タイトル獲得については「まだ実感がないというのが正直なところです」と率直な思いを述べた。それでも「責任のある立場になりますので、より一層精進したいと思います」と、タイトルホルダーとしての自覚を持とうというコメントもあった。
藤井棋聖誕生の快挙に一番喜んでいたのは、師匠の杉本昌隆八段だったかもしれません。もう一人、藤井棋聖がプロ入り後初めて対戦した加藤一二三先生も喜びを隠せないようでした。加藤先生のTwitterを取り上げます。
そして加藤先生はこうコメントしています。
私はこれまで藤井さんのことを「秀才」と表現してきましたが、これはもう「天才」と言って良いでしょう。
よく藤井棋聖のことを「AI(人工知能)の申し子」と言う人がいますが、これは明らかに間違いです!確かに、藤井棋聖はAIを活用することで棋力は飛躍的に伸びましたが、師匠の杉本八段はこう言います。
詰将棋が好きなことからも分かるように、彼は結構、アナログ人間ですよ。藤井将棋がAIに近いという分析があるならば、私の考えではむしろ「AIが藤井に近い」という気がしますね。(別冊宝島『藤井聡太 新たなる伝説』P.25)
杉本八段が言うように、藤井棋聖の強さは詰将棋にあるのだと思います。藤井将棋で見られる、大駒を大胆に切る捨てる着想は、詰将棋から来ているのではないでしょうか。
※追加です。最近のインタビューで藤井棋聖はこう言っています。
「練習として自分で(AIと)指すということはありますが、基本的に自分の読み筋や判断と照らし合わせて参考にすることが多いですね」
ここでもありますように、藤井棋聖は自分の将棋という軸をブレないようにしていることがわかります。ここからも「AIの申し子」という表現が、藤井棋聖と合っていないことがわかります。(※追加終わり)
藤井棋聖の絶妙手は数多くありますが、ここでは2つ挙げておきます。
・2018年6月5日 石田直裕五段戦 △7七同飛成
・2020年6月28日 渡辺明棋聖戦 △3一銀
△7七同飛成は「升田幸三賞」を受賞した絶妙手。△3一銀は、現在最強コンピュータ将棋ソフト「水匠」が6億手読んでようやく最善手と判断できた絶妙手です。この△3一銀の場合、その前の△5四金の構想が素晴らしかったことを書き落としてはなりませんが。
まさに「AIを超える棋士」、これが藤井聡太棋聖と言えるでしょう。
では、藤井棋聖に最も近い棋士は?と言えば、それは升田幸三実力制第四代名人ではないでしょうか。加藤一二三先生は、升田第四代名人と打ち筋が似ていると話したことがあります。
藤井棋聖と升田先生には共通点があります。
・「名人に香を引いて勝つ」と書いた升田先生。「名人をこす」と書いた藤井棋聖。
・2人とも最善手を徹底的に追い求める姿勢。
・2人とも独創的な構想、華麗な駒のさばきが見られること。
ただ大きな違いがあります。それは藤井棋聖の謙虚さです。次の記事に詳細があります。
・相手と将棋に礼を尽くして…誰よりも低く、深く下げる藤井聡太棋聖の「お辞儀」
升田第四代名人の唯一の弟子である桐谷広人七段はこう言います。
「升田先生と藤井くんならば、升田先生のほうが天才だと思います。『新手一生』を掲げた先生は、常に誰もやったことのない手を考え出す “創造の天才” でした。
藤井くんは、秀才タイプ。棋譜の研究に余念がなく、記者会見でのコメントも、いつも好印象ですよね。升田先生が藤井くんの立場なら、『渡辺なんて大したことねえ』と言い放つはずですから(笑)」
藤井聡太棋聖、升田幸三先生を目指して精進してください。今後も素晴らしい将棋を期待しております。
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