- 運営しているクリエイター
記事一覧
【一首評】失くしてはカラスのように手に戻る黒いカシミアのカーディガン/花山周子
失くしてはカラスのように手に戻る黒いカシミアのカーディガン/花山周子『風とマルス』
カーディガンはほんとうによく失くす。羽織ったり脱いだりすることで体温調節ができるし、丸めて鞄の中に入れてしまえばそこまで嵩張らない。黒なら色んな服に合わせられて、ちょっとフォーマルな場所でも大丈夫。カシミアだからちょっといいもので、でも、勿体なくて着られないほどの高級品ではたぶんない。つまり便利で、よく着ていく
【一首評】睡蓮のつどふ水平 生きしのちを搬びいださるるひとの水平/小原奈実
睡蓮のつどふ水平 生きしのちを搬びいださるるひとの水平/小原奈実「野の鳥」『穀物』第二号
「睡蓮」のイメージに、「水平」の文字に、「すいれん」/「すいへい」と繰り返される「すい」に、そこにあるはずの「水」は想起されながら言及されないがために、まるで睡蓮がおのずと寄り集まって〈水平〉を形成しているかのように見える。水面の〈水平〉があらかじめあって、そこに睡蓮が付け足されているのではなく、睡蓮みず