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個人も会社もブランドも社会問題をどう考えるか?問われている。

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicy No.0048 2021年9月30日収録
個人も会社もブランドも社会問題をどう考えるか?問われている。


パラダイムシフトが起こってる。

「小哲津ゼミ」というブランディングと商売の勉強会を主催しています。そこでゲストに来て話してもらう「ブランド解剖」をやっていて、オンリーワンになっている人やオンリーワンブランドをつくった人に来てもらい、どうやって似ている競合とうまく差別化して、ブランドになったのかという話をコテツが聞いています。

これは有料でクローズドの勉強会なので、それを表に出すことは今のところしていませんが、2021年9月の最終土曜日にお越しいただいたゲストが、ジャパンハートという団体の代表で、お医者の吉岡秀人という方だったのです。

今まで小哲津ゼミの勉強会でブランドや商売について学ぼうというときに、お越しいただいたのは、さまざまなブランドや会社をうまくやっている経営者が多かったのです。あとは、野性爆弾のクッキーさん、棚橋弘至さん、青木真也さん、逆の意味で話題になった有村昆さんとか、タレントさんやお笑い芸人さんにも来てもらって、どうやって今の独自ポジションを取ったかという話を聞いてきました。

今回は今までの流れとは違って、吉岡先生に来ていただいたのです。商売をやるにしても生きていくにしても、人は考え方にのっとっています。正しい考え方と言いたいのではなくて消費者心理の変化にビジネスは対応していくものなので、消費者心理が今どうなっているかを常に見て、敏感に捉えなければいけないと考えています。

消費者心理は購買に関することだけど、もう一個、地中の深いところまで行けば、人の行動規範とか思考規範という今の時代に合わせた考え方と行動があって、その中の一部が購買行動です。商売やブランドづくりをやるにしても、何か個人の活動をやっていくにしても、今世の中の人たちが自分も含めて、どういう行動規範や思考を基準にしているかわからないと、かみ合わないのです。

周りに何かを協力いただいて人生を豊かにしていけるように思っていることも、商売でどなたかに自分がやっていることを認めて買っていただこうとしても、人の心の移ろいを捉えきれないと、やっぱりうまくいかない。

それがめちゃくちゃうまくいくと、スティーブ・ジョブズとかビル・ゲイツ、ユニクロの柳井さんみたいに完全にはまるわけです。もっと時代をさかのぼればイトーヨーカドーとかセブン―イレブンとか、古いところへ行くとダイエーの中内さんという方がいましたが、そういう商売がうまい方は、消費者心理や行動規範を見ているところが大きいです。

だから俺のコテツゼミでもコテツラジオでも、人の心の移ろいの話をすることが多いんだけど、自分はこの2年で大きく変わったなと思うことがあります。行動規範、思考のベースの変化をよくパラダイムシフトと言い方をしますが、パラダイムシフトがあったと思っているんです。

この2年間、コロナ禍で地球全体が巻き込まれました。コロナというのは社会問題ですよね。この2年間のコロナ禍で、普通に生活していても社会問題から逃げられないし、社会問題に対して自分なりの考えが出てきてしまったんです。「出てしまった」というのは悪いことではなくて、いいことです。

それまでも地球温暖化、貧困、教育と、世界的にいえば戦争の問題がありました。でも、どこか対岸の火事というか、自分の身に起こることはないと思っていたのが、コロナ禍で全員が当事者になってしまったから、こういう社会問題に対して、もっときちっとロックダウンしろよとか、こんなのを制限していても意味がないとか、世界中で社会問題に対して「自分はこうしたらいい」という考えを持つに至ったんだよね。

これはものすごい変化です。人の行動規範とか思考規範が変わるとき、歴史に残るような、生活全般が変わっていくような出来事が起こったら、変わってしまうんです。

過去をさかのぼれば例えば太平洋戦争の敗戦があり、日本がアメリカ化していく流れがあって、アメリカ的なビジネスシステムを半分強制でやってきたわけです。オウム真理教があり9.11のテロがあり、宗教というか思想の問題は難しいと感じ、人は不安になると何かにすがるのかなと思い、東日本大震災もあって、その都度、人は自分の行動規範と思考の基準が変化しました。

パチッとスイッチが変化した音が鳴るわけではないし、自分は先々週まではこういう行動規範・思考基準だったけど、自己認識として今週は変わったなと毎回確認するわけではありません。知らないうちに自分も変わり、世の中も変わります。今はもう、社会問題に対して何の考えもないことが、ものすごくダサいという流れになっています。コロナ禍で店を開けるか締めるかという現実的な問題も含めてね。

自分は1つ目の会社がうまくいったときから寄付をまあまあやってきました。それがここ最近、知り合いの関係もあってスポーツオークションの会社を経営していたときに、オークションをやって寄付する先を探していたら、ジャパンハートという団体をご紹介いただいたのです。そこで担当者から活動について聞く機会があって、吉岡先生にお越しいただいて、ジャパンハートが何を考え、何をやっているのか伺ったのです。

世界の貧困地域に医療が全く充実していないと。紛争が多い地域は医療がなく大変なことが起こっているように思いがちだけど、貧困地域のほうがはるかに多いということです。本当に知らないことって人は「なかったこと」にしてしまうから、聞いてびっくりしました。

医療体制が整っていなくて、乳幼児死亡率が高い3つの国に集中的に吉岡先生が入っていき、ジャパンハートが「いい医療を提供しよう」ということで活動しているそうです。

乳幼児死亡率が高いのは、ミャンマー、ラオス、カンボジアですって。これも知らなかったですよね。小児がんになっても日本だと7~8割治る。それが、ジャパンハートが入って医療体制を整えなければ、これらの国で治るのが1割ぐらいで、もっと前は手術ができないから全滅だった。どこに生まれたかだけで、赤ちゃんには何の罪もないのに。


人の心を動かすもの

吉岡先生は、1995年からミャンマーに入り医療の活動を始めました。お話を聞くときに当然、自分なりに「これを聞こう」と思うことがいくつか出てきます。この中で、ものすごく疑問だったのです。「貧困地域や医療体制がないところで医療を提供しようと思っています」というのに対しては、全員、総論賛成だと思うんです。そうだよね、確かにいいことだと。

ただ、これは1人のお医者さんがやると言っても、どうにもならないことだったりします。俺も経営者ですから、これには戦略があったと思い込んでいるのです。自分も会社の立ち上げをいくつもやって、今もベンチャー企業に5つ6つぐらいアドバイスしていますが、ベンチャー企業の成長も運の要素がものすごく大きいので、戦略をきっちり立てたから、うまくいくわけではないという現実論に自分は立っていますが。

吉岡先生は、出だしはどうやったんだろう。それが聞けば聞くほどびっくりするんですが、お医者さんでいらっしゃるから、医療の技能を高めないと向こうへ行って治せない。治したい気持ちだけではダメだということで、いったん日本に帰ってきて小児科医療にしっかり取り組んで、技能技術を付けて、もう一度行くという話があったんです。

それで「貯金が尽きるまでやる」ということでやっていたんですよ。これには本当にびっくりした。付け加えておく必要があるのですが、向こうでの医療活動で「給料は一切もらっていません」というのです。これにはいくつも疑問が出てくるじゃないですか。それでどうやって食べていけるの、生活不安はないのとか、あると思うんだ。

日本国から助成金とか補助金をもらってしまうと、あるルールの下に出てくるお金なので制限が掛かって、それだと本当にいい形にならない場合が多い。だから、自分のお金と寄付してもらったものでやるという流れの中で、ジャパンハートという組織体制とネットができるまでは、とにかく貯金を切り崩しながら、ミャンマー・ラオス・カンボジアで子どもたちを治してきているのです。

これってどう思いますか。

本当にびっくりして、作戦がないのかと言われれば、その通りではあるんだけど、まだジャパンハートという組織もなくネットもなく、その当時の吉岡先生に「これからミャンマー、ラオス、カンボジアに行って、こういうことをやろうと思っている」という話を自分が聞いていたら、その後活動が成立していると知らなければ、「吉岡先生、向こうでの活動資金をどうするか作戦を立てましょう」と言うと思うんです。

何の話を俺はしたいのかということだけど、日本でビジネスをやるとか何かを成し遂げるといったときに、こざかしすぎると思っているの。テクニックがどうだとか、ファイナンスで上達する技術がどうとか、もちろん必要です。何もかもが、知っていることによってできることが増えるから。

でも、テクニックとか戦略とか作戦を頭のいい人が駆使したところで、吉岡先生が医者になって世界の医療が行き届いていないところに何かできるはずだという、この先どうなるか考えない行動のほうが結局、人の胸を打つのです。

あとは、向こうでどなたと組むかに関しては、かなり素晴らしい判断をされているというお話も聞きました。とは言っても、持っているお金を抱えて、働いてもらった人にも貯金を切り崩してお金を払いながら活動されている。先生は「貯金が尽きたら終わっちゃうじゃんと言われたんです、当時も」と言いますが、そう思うでしょう?

日本人って、どういうビジョンを持っているのとか、どういう作戦でやろうとしているのとか、そういう理屈とか語りのうまさみたいなものが好きです。俺もコテツラジオみたいなしゃべるコンテンツで「語りのうまさだけではダメだ」と言うのは、すごく矛盾しています。でも、やっていく先に「一所懸命掘っていく先に何もなかったら、掘るの無駄じゃん」という考え方と、一生懸命掘っていることで周りの人が気付いてくれて、堀り方を教えてくれるのか工具を用意してくれるのかという、両方の結末が一生懸命穴を掘るという好意には考えられますよね。

今はジャパンハートという組織があるので、もう少し効果的に進んでいます。あとは、吉岡先生が今までやられていた実績が周りの方を動かすことにつながっているけれど、スタート当初の「貯金が続く限りやる」という「志あり。作戦あまりなし」みたいなものが結局どうなったかというのは、ものすごく考える材料だと思います。しかも、きれい事ではなくて、現実的に向こうで手術ができず、目の前でお子さんが亡くなったりするという状況を見て行く中でやっていることだから。

コテツ、今日の話は何なんだということだけど、俺は2つ思っていることがあるんです。

まず1つが、個人だろうが会社だろうがブランドだろうが、どれが社会問題かは個人が比重を決めていることです。それは個人によって全然違うと思うけれど、日本だって、これから貧困による教育格差とか、生活のクオリティーとか教養が変わっていくはずで、お金がないところの子どもは、すごく差が出てくると思う。

あとは、さまざまな差別の問題とか、食品とアパレルの破棄は本当に多すぎる。自分が今、企業にアドバイスで関わっているところが結構多いので、「これはごまかしきれないよ」という話はしています。とんでもない数の食品を捨てているし。

俺は百貨店関連もやっているので、どうにかしなければいけないところだけど、アパレルに関しても焼却したりして、売れなくなったらものすごいセールを掛けて金額を下げて、それでも余ったら捨てるか燃やすのですが、こういうのも社会問題です。企業はもう、こういうところをごまかせないよね。どう考えていくのか。「今はこうでも、こうしていきます」という本気の取り組みがないと、消費者が買わないでしょう。

世界はつながっているから、こういう医療が行き届かない地域に対してどうするか考えた結果、寄付する人もいれば、自分はそっちじゃないという人もいていいと思う。けれども一回テーブルの上に載せましょう。それに対して、どう思っているか考えましょうというのが、大人の社会との関わり方だと思います。


在り方に応えるのがブランド

もう一個、常々ブランドというのは見せ方ではなくて在り方だと言っているんです。最後は、人は在り方とか思想とか哲学に共感してファンになる。見た目やビジュアライズ化されたもの、商品1個が素晴らしく気に入ったとかで興味のフックが掛かるんだけど、ブランドはファンの方に愛されて「あなたじゃなきゃダメ」と思ってもらえる状況です。それが最も強くて最も深いのは、在り方・思想・哲学・スタイルに対して共感を得ることです。それがファンの方とのつながりとして一番強いし、在り方を示して、それに応えていくのがブランドの使命なのです。

例えばエルメスはトップ・オブ・トップのラグジュアリーブランドで、恥ずかしいものは出しません。エルメスは、ただ高いだけではありません。品質に対して、とんでもない妥協をしない姿勢だったりするところが、ブランドとして成立している理由でもあります。

個人も会社もブランディングをしていくときに、腹の底から思って覚悟を決めて行動していること以上に、ファンの方を動かすことはないと思います。それを伝えるテクニックとして吉岡先生もやられていました。例えばネットを使って伝えていく工夫をするのは全然ありですが、大本の「貧困地域で、救えるはずだった命を救うと決めて僕はやっているんです」という行動自体が「吉岡先生ブランド」になって、そこに応援者の人が付いていくという形です。

ビジネスにおいてのブランディングのときに、小手先だけホームページとかかっこよくしたらいいとか、今はやっているフレーズを載っけたらいいは、ちょっと違う。でも、そういうことが好きな人もいっぱいいるから、ブランディングの話をすると、そっちに流れてしまうのです。

ブランディングは在り方です。

自分は今回、吉岡先生の在り方にすごく胸を打たれました。さまざまな活動をしている団体が世の中にあって、自分は何の関係もないけれど、行動をしている人の考えも直接聞けたので、自分はジャパンハートとか吉岡先生の活動を少しでも応援できれば思っているので寄付していきます。

1つ目の会社が大きくなって、まあまあ自分の収入が増えていって欲しいものが大体買えるようになってくると、働く意味を考えるんだよね。働いて寄付をすること自体が働く意味をつくることにもなるし、自分を肯定することにもなる。見知らぬどなたかが喜んでくれているという状況に貢献しているとなれば、自分がそれを称賛されたりすることは必要ないと思っています。

ジャパンハートはホームページもあるので、興味がある方はご覧ください。
https://www.japanheart.org/

また、これを機会に自分自身のブランドとしての在り方とか、会社とかビジネスをされている方は、さまざまな社会問題とどう関わって進めていくのか考えるきっかけにしてほしいです。

以上、久々野智小哲津でした。


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