至福のひとときを巡って【やさしい脳科学】
コーヒーがやめられない
「しびれるような 香りいっぱいの 琥珀色した 飲み物」
と歌われたのは、
ご存知『コーヒー・ルンバ』です。
コーヒーは好きな方、そうではない方と分かれますが、好きな方は飲むことが習慣化しており、まさに「至福の時間」を過ごしていることと思います。
コーヒーの効果
よく「眠くならないように」とコーヒーを飲む、という光景がありますが、近年ですと、その効果への期待でしたら、エナジー飲料の認知度が大変増えているようです。
しかしコーヒーが好きな方は、あの香りと味が堪らなく感じるから飲むのですよね。
コーヒーの効果としては、
(1)眠気覚まし
(2)頭痛の緩和
(3)筋肉疲労の回復
が挙げられます。
さらにはリラックス効果、気分転換も効果としてあるでしょう。
コーヒーの弊害
しかし何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」と申しますように、飲み過ぎは禁物です。
コーヒーを飲まないと落ち着かない。手が震える。などという方はご注意。
人間の脳のなかでは、「アデノシン」と「アデノシン受容体」と呼ばれる2つの物質が存在し、この両者が結合することで、人は『疲労』を感じます。
しかしカフェインを摂取すると、脳内に入ったカフェインがアデノシン受容体と結びつくことにより、アデノシンが受容体と結合できなくなります。
その結果、人は疲れを感じにくくなくなります。これがコーヒーを飲むと、眠気が覚めて体がスッキリとしたように感じる理由なのです。
やがてカフェインの摂取を繰り返すうちに、少量のカフェインでは脳へ働きにくくなくなってしまいます。これにより、人はいっそう疲労を感じ、それを解消しようとカフェインの量が次第に増えていき、やめられなくなり『カフェイン依存症』に陥ってしまうことがあります。
缶コーヒーといえば
缶コーヒーを飲む人。缶コーヒーを飲まない人。
コーヒー党でもこの好みはハッキリと分かれることと思います。
缶コーヒーといえば、落ち込んだり悩んでいるところへ同僚や先輩が気遣って差し出す、そんなシーンがドラマでありがちです。
闇の中 ぽつんと光る 自動販売機
100円玉で買えるぬくもり 熱い缶コーヒー握りしめ
尾崎豊『15の夜』の一節です。
こちらは1983年にリリースされた楽曲ですが、私が子供の頃は100円でジュースや缶コーヒーが買えたんですよね。
コカ・コーラを基準に缶飲料の価格の変遷をみてみますと、
1983年 100円に設定。
1989年 消費税導入時、同商品は価格を据え置き、消費税はメーカーが負担。
1992年 原材料費の高騰などを理由に110円に値上げ。
1997年 消費税増税時。価格を据え置き。
1998年 原材料の価格高騰や増税対策を理由に120円に値上げ。
2014年 消費税が8%に増税され130円への値上げ。
徐々に価格が上がり、30年で30円増加しています。しかし、そもそも消費税が3%の時、自販機が1円単位での計算処理が出来ないという理由から、いきなり10円上げて110円にした経緯があり、これを便乗値上げとする向きもあるようです。ゆえに現在の税率が10%なら、110円が適正価格ではないか、という意見もあります。
缶コーヒーの今
缶コーヒーは売れなくなっている。
その要因の一つは、コーヒーを飲む場面の多様化によるようです。
かつてなら外でコーヒーを飲むなら缶コーヒー、と選択肢は一択だったところへ、1996年に米スターバックスが1号店を東京・銀座に出店します。
それによって外出先で手軽に本格コーヒーが飲めるようになり、さらに2000年前後からカフェチェーンが急速に増え、スタバは2021年3月時点で国内約1600店を構えるようになります。
一方で、2013年にセブンイレブンが店頭で挽き立てのコーヒー「セブンカフェ」を販売し、コンビニエンスストア各社が追随しています。
いまやコンビニで本格的なコーヒーが、約100円で買えることは驚きです。
新参者によるコンビ解散危機
実はこれまでの缶コーヒーの購買層は、40〜50代男性が多かったのです。
サラリーマンや工事現場などで働く人が、たばこをふかしながら自販機で買った缶コーヒーでちょっと一服。
この光景からは煙草と缶コーヒーは相性が良いようです。
そもそも缶コーヒーの販売ルートは約半数が自販機なのだそうです。
缶コーヒーと煙草の相性の良さ。
それは互いの自販機が隣り合わせで設置されていたことに起因するようで、その蜜月関係を「タスポ」が引き裂いたようです。
ダイドーGHDの高松社長によると
タスポがないと自販機でたばこが買えないとなった時に、世の中からたばこの自販機が一斉になくなったんです。それまでたばことダイドーの自販機をセットで置いてある所が多くて、たばことコーヒーが買われることが多かったんですけどね
意外なところへと影響が及んでいたのですね。小売の現場は相互関係があり、実に複雑ですがそれがまた興味深いです。
鬼滅コラボ缶の激震
そんな缶コーヒーですが、
昨年2020年に飲料業界に激震が走りました。
人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターをラベルにあしらった缶コーヒー、通称「鬼滅缶」が、1億本を売り上げる大ヒットとなったのです。
「若い10代や20代、男性に限らず女性、小さい子供からお年寄りまで、本当に幅広い方々が手に取ってくれた」
と顧客層が拡がったそうです。
麻薬のコラボ缶
「容器などの製造コストが安い缶コーヒーの方がペットボトルコーヒーよりも利益率が高く、缶コーヒーが売れれば売れるほど業績全体が押し上げられる」
企業としての実状は、ペットボトルコーヒーよりも缶コーヒーが売れる方が良いのですね。
ある関係者は、
「コラボ缶には一時的に消費者を引き付ける効果はあるが、購入の理由が『コラボ缶だから』だけなら、メーカーは今後も同じ企画をしないと消費者はついてこない」
さらに、
「コラボ缶はメーカーにとって良い面と悪い面のある『もろ刃の剣』であり、“麻薬”のようなものといえる」
と言う。
コラボ缶を発売した時には爆発的なヒットが見込めるが続くとは限らない。だから、ブームが終わる度に新たなコラボ缶を発売しなければならず、気付いたらその“ループ”から抜け出せなくなる懸念がある、ということが「麻薬」といえるようです。
鬼滅の刃は映画も好調で、来月には映画のDVD発売、さらに本年中に新シリーズのアニメ放映と続きますので、コラボ缶の続編もあるのではないでしょうか。
おわりに
販売する側も、あの手この手と努力されていることがわかりました。
コーヒーは飲む側を惹きつけて止まない魅力がありますが、「コラボ」という麻薬は、売り手側を魅了しているとはコーヒーの奥深さと「魔力」を感じないでもありません。
しかしこの「コラボ」に違った側面から言及しているのが、キティちゃんなどで知られるサンリオの社長です。
感動的でしたので引用します。
大好きなのに中々売れず無くなってしまいそうなものがあったら、うちに言いなさい。キャラとコラボさせたら売れるから。私は世界中皆が仲良くするためにこの会社を作った。
どうりでキティちゃんが、仕事を選ばないはずです。
おしまい