『悪い言語哲学入門』の読書日記。悪口とは?悪口はなぜ悪いのか?
今回は、和泉悠先生の『悪い言語哲学入門』の読書日記です。
世間に溢れている「悪口」について、その根本的な特徴を多方面から考えることにより、自分たちが使っていることばに対して新しい理解を得られる本だと思います。
ゆる言語学ラジオで知った和泉先生の本を読んでみたのですが、面白い例えがふんだんに使用されていたりと、一見難しい内容を親切丁寧に解説してくれていて面白く読めました。
【言語哲学とは?】
そもそも本書のタイトルにもなっている言語哲学とはなんなのか?
言語の「こうなっている」「そうなっている」という構造を追求する言語学に、歴史的にものごとの善悪を語る道具を提供し続けた哲学を加えることで、「こうすべき」「これはよくないからやめよう」という価値の判断ができるようになると述べています。
【悪口とは?悪口はなぜ悪いのか?】
本書では多方面より悪口の特徴にせまっていきますが、最終的には『権力関係・序列関係・上下関係を作り出したり、維持したりするもの』『権力のランキングを操作するもの』とまとめています。
誰かを罵る、バカにするという行為の中心的な要素は、ランキングを操作するもの。「バカ」のように誰かをどう呼ぶ、どう呼ばないかを決めることができる権力者は、ひょっとしたら他の事柄についても決定する権限を持っているかもしれない。ボス猿が他の猿を威嚇するのも、上級生が下級生をどやしつけるのも、権力差をはっきりとさせるためには重要な行為である。
そして、『悪口を評価するためには、どのようなランキングが関わっているのか、ランキングの中での言う側・言われる側の位置関係はどのようなものか、ということを把握しなければならない』と述べられています。
また、悪口がなぜ悪いのかというと、私たちは事実上、身体能力の違いや貧富の差など、それぞれに異なっているが、理念上、私たちには上も下もなく、お互い平等のはず。そうであるにも関わらず、人々をおとしめ、低い位置にランクづける行為は、その理念をないがしろにする行為だから、悪口は悪い、と本書ではまとめています。
このように本書では悪口の特徴がスッキリとまとまっていて、納得感がありました。
【ことばそのものの重要性】
最後に、ことばを発する個人の意識どうこうだけでなく、ことばそのものの重要性について語られていた内容が印象深かったので紹介したいと思います。
人を傷つけないように、社会を壊さないようにするためにも、ことばの特徴を理解することは重要です。