アイデアとの小さな恋
「馬車で旅をしているときや食後の散歩中、あるいは眠れない夜。そんな時にアイデアが最も豊富に湧き出てくる。」
35歳という若さで世を去るまでに、700〜900曲以上の作品を残したとされる多作の作曲家モーツァルトの言葉です。
作曲家だけではなくて、アイデアが全てと言ってもいい職業はたくさんありますよね。
仕事以外でもアイデアがあると、人との触れ合いをより楽しめたり、人生にワクワクできる瞬間が増えると思います。
モーツァルトが何気なく言った言葉の中に、アイデアを生むヒントがあるように感じました。
最も重要な部分はここです。
「そんな時にアイデアが最も豊富に湧き出てくる。」
これが何を意味するかというと、アイデアが湧いた瞬間の状況やタイミングを自覚している。
たくさんのアイデアを組み合わせて曲を仕上げる場合もあると思いますし、1つのアイデアを膨らませる場合もあるも思います。
とにかくアイデアが無ければ始まらないわけです。
なので、モーツァルトは自然とアイデアを求める。
でも、こうしたらアイデア出るかな、普段やらないことをして刺激を受ければアイデア出るかな、ということではないですよね。
今まで生きてきた中で、アイデアが湧いた瞬間を思い返した。
あの時か、あの時もだな、そうだあの時もだ。
こうやって自覚したときに、次からその瞬間を意識するはずです。
モーツァルトの場合は、馬車で旅をしているとき、食後の散歩中、眠れない夜を意識します。
ですが、意識するとアイデアは湧かない。
アイデアを出そうと意識しすぎて、自分でその瞬間を作り出そうとすると、アイデアは逃げていく。
でも、その瞬間にアイデアが湧いたことがあるという経験を、自覚することが大事。
この距離感が大切です。
まだ見ぬ新しいアイデアの気配を感じたら、こちらから近づくのではなくて、こちらをアイデアに気付かせて寄ってきてもらう。
自覚をして意識してアイデアを生むのではなく、自覚をして無意識にその瞬間が訪れたときに、少しだけワクワクすること。
アイデアが湧く予感だけを楽しむ。
モーツァルトは、こうは言いませんでした。
「アイデアが欲しいときは、馬車で旅をしたり、食後に散歩したり、夜眠らないようにする。」
その理由は、アイデアとの小さな恋のような、とても繊細な距離感を保ち続けていたからではないでしょうか?
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