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「膝の水を抜くとクセになる!?」それってホント?メカニズムを知って理解しよう!

 おはようございます!こんにちは!こんばんは!「副院長でセラピストの豆知識」へ、ようこそ!

 皆さんはタイトルにある「膝の水を抜くとクセになる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?実際に水を抜いた後にすぐにまた溜まる経験がある方もみえるかもしれませんし、患者さんから質問された時に返答はできていますか?

 今回はそんな「水が溜まる」という現象について、まとめたいと思います。


1.どこに水が溜まっているのか

 水を抜くというと膝関節をイメージされる方が多いと思います。では、その水は膝のどこに溜まるのでしょうか?骨や軟骨という構造がある関節は、関節包と呼ばれる関節の袋に包まれています。関節包は2層構造となっており、外面は線維性の関節包、内面は滑膜によって構成されています。この滑膜から滑液・関節液(=いわゆる水)が生成しています。よって「水が溜まる」と言うのは基本的に滑膜の中に溜まっていきます。

2.滑膜(関節液)の役割とは?

 関節液には3つ他役割があります。
① 関節の潤滑作用
② 軟骨絵の栄養補給
③ 免疫機能
 滑膜は常に少しずつ新しい関節液を分泌し、同時に古い関節液は吸収しています。この分泌と吸収のバランスが拮抗している時には関節は腫れることなく正常に機能しています。

3.なぜ水が溜まるのか

人 体最大の関節である膝関節の滑膜内の関節液は通常で1~3mlほどと言われています。小さじ半分くらいです。しかし、視覚的にもわかるくらいにパンパンになった膝関節だと30mlほどにまでなることがあります。専門用語では「関節水腫(かんせつすいしゅ)」といいます。これは先ほどの関節液の分泌と吸収のバランスが崩れてしまった状態です。滑膜が過剰に分泌される代表的な原因として関節内の炎症があります。変形性関節症、リウマチ、痛風、関節に及ぶ外傷(骨折や靭帯損傷、半月板損傷)、アレルギー等の免疫反応などがあります。ここでイメージしていただきながら解説します。

<お風呂をイメージしてください。>

・蛇口からでる水:分泌される関節液
・排水溝から出ていく水:吸収される関節液

① 正常な状態:蛇口から出る水=排水溝から出ていく水 ⇨ 一定量をキープ
② 炎症中:蛇口から出る水>排水溝から出ていく水 ⇨ 水が溜まっていってしまう
ここで水を抜くというのは溜まった水を風呂桶で強制的にお風呂の外に出す行為です。

 つまり、炎症が続いている時に水を抜いても蛇口から出る水をなんとかしない限りは、再び溜まり続けてしまいます。よって水を抜く行為だけではなく、炎症をコントロールするための、負荷の調整、注射・内服による蛇口から出る水を抑えることを平行していく必要があります。もし水を抜いた時点で、すでに炎症が軽減傾向で推移している方は、再び溜まることはないか、溜まるにしてもゆっくりでしょう。

💡豆知識💡〜抜いた水の色は何色?〜

 抜いた水の色で中の状態が推察することができます。

黄色で透明に近い:関節液
黄色で濁っている:感染傾向の可能性
赤黒色:血液が混じっている状態。靭帯や半月板からの出血の可能性

3.対策

 膝の水が溜まる原因を特定し、適切に対処することが大切です。一部ですが対策も記載します。

①膝の水が溜まる原因を探る
・外傷:膝を捻った。普段よりも急激に動いた。強く着地した。
・体重:以前より体重が増加している
・アライメント:膝がO脚やX脚になってきた。猫背になってきた。

②膝への対症療法
・抗炎症:内服や注射
・膝のサポート:テーピングやサポーター、インソールなど
・膝の動きの確認(曲げ伸ばし異常、筋力など)

③ 膝周囲へのアプローチ
・膝に負担がかかる使い方がないが全身的に調整

4.結論:「膝の水を抜くとクセになる」ことはない

 結論として、「膝の水を抜くとクセになる」というのは誤解です。実際には、「膝の中で炎症が続いている状態」により水が溜まり続けるのです。再発を防ぐためには、炎症をコントロールし、負荷の調整や薬物療法を並行することが重要です。

注意:人体には、滑液包と呼ばれる袋や組織の隙間があり、なんらかの原因で、組織自体が腫れたり、そこに水分が貯留することもあります。原因をしっかり調べましょう。

最後に

 私の肌感では、私がセラピストになったころよりも「膝の水を抜くとクセになる」と言う話は聞く機会が少なくなった印象です。しかし、まだ一般的にも浸透しきっていないところもあると思います。抜いても意味ないから相談しないなど、誤解で適切な診療機会を失ってはいけません。少しでも知っていただく機会になればと思います。

💡豆知識💡〜「溜まる」と「貯まる」の違い〜

今回記事を書くにあたって、意味を確認しました。

溜まる: 流れ去らずに物事が徐々に集まって、そこにとどまる意
貯まる:たくわえ。貯蓄。

日本語大辞典

よって関節液は“溜まる”と表記しました。日本語は難しいですね。

記載の内容が全てではないので、自己診断をせず、症状が気になる方は医療機関で相談してくださいね。
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