【意識】気付かない存在

僕たちの世界はまるで僕たちが『気付ける』事ばかりでできているように感じられるよね。

『気付ける』事ってのは、『今これがある』とか『今これが起きている』って僕たちが思えるってことね。

現象学の世界なんかだと、僕たちが『これは存在する』と確認できるもの以外は存在しないって考え方を採用しているんだ。

例えば、有名なクエスチョンでいうと、

『誰も知らない、誰も行ったことのない無人島に立っている誰も見たことのない。誰も存在を知らない木は本当に存在しているのか』て問題ね。

この質問を聞いた時点では僕たちはその木が立っているところを頭にイメージできるから、存在すると思えそうだけど、今これを読んでいる間にも、知らない所でそんな木があるかもしれないんだよ?

しかもそれを誰も知らないんだ。

そう言われると、存在しないって方が正しい気もしてくるよね。

これには答えはなくて、今でも意見が分かれているところなんだ。

僕たちの外側の世界のことについては、確かに僕たちが認識できないものに関しては存在していないかもしれない。

僕はこれを今とあるカフェで書いてるんだけど、僕の席のすぐ後ろにはレジがあるんだ。

ただ、僕にはレジの様子は見えないし、音楽を聞いてるから声も聞こえない。

つまり、この状態では、今僕の後ろのレジで起きている現象は僕にとっては存在してないってことね。

なんだけど、自分の内側に関してはどうかな?

例えば、僕たちは何か物事を知覚したり、感じたり、学習する時に、それらについて意識的に『気付け』ないといけないと思うかな?

常識的にはそうかもね。

知覚したり、認識したりできるって事は『気付けるってことでしょ』って思うのはごもっともだ。

だけど、実際はそうでもないんだ。

フロイトが初めて無意識って概念を提唱するまでは、『全てが意識に昇ってくんじゃね』みたいな感じで、つまり、意識に昇らないものは存在しないと思われてたんだけど、現代の認知心理学ではそれが間違いであることは当然の事実になりつつあるんだ。

例えば、心理学の実験では、よくコンピュータが使われるのね。

そのコンピュータのスクリーンに数m秒間だけ視覚的な刺激を提示するの。

視覚的な刺激ってのは、例えば、文字とか絵のことね。

そいつらをそんな短い時間提示しただけじゃ、自分が何を見たのかを述べる事はできないんだけど、後に記憶テストをやると正しいものを選べたりするの。

つまりこれって記憶獲得のプロセスに意識的な認識が必要ないってことね。

他にも、僕たちの意識がそれを感じ取って理解する前に脳での処理が完了してる事って結構あるのね。

つまり、僕たちの認知的な作業ってのはほとんど無意識で起こっているんだ。

僕たちが全く気づいてない所で、脳は色んな事をしてるんだよね。

逆にいえば、意識的な領域でなされることのほうが少ないのよ。

フロイトが提唱して有名になったマインドの氷山の図のように、人間のマインドの95〜97%は無意識だ。

そして、その無意識の領域は脳が疲れないように助けてくれていたりもする。

人は物事を考えるとき、2パターンの考え方をするのね。

システム1とシステム2っていって、それぞれ認知の過程が異なるんだ。

『二重過程理論』っていうんだけど、簡単に言うと、システム1は無意識の領域でシステム2が意識の領域ね。

僕たちは慣れた判断や思考を無意識で行うようになるんだ。

例えば、初めて今の職場に行った時は、道を間違えてないか慎重に確認しながら歩いていたのに、慣れてくるにつれて、自分が通る道なんて見なくなるよね。

大体みんなスマホでも弄りながら、当然のようにいつも通りの角で曲がり、いつもと同じ道で出勤する。

自分が通ってきた道中で何が起きたかなんて覚えていない人の方が多いよね。

これは会社までの道筋を脳が一度学習したからできることなんだ。

一度学習し、考えなくてもできるようになった事はシステム1に落とされ、考えるエネルギーを使わなくて良いようにするんだよね。

他にも買い物に行った時、ついいつもと同じ牛乳だったり惣菜だったりを買っちゃう事ない?

これも同じで、毎回深く考えて判断をくださなくて済むようにしてるんだよ。

専門用語で『ヒューリスティック』って言うんだけど、このおかげで僕たちはかなりの時間と労力をセーブできているわけだ。

しかし、その一方で、意識の領域であるシステム2を使うべきところでシステム1に頼ってしまうことだってよくある。

例えば、人生の転機になるような決断や、しっかりと考えるべき事項について『いつもこうだったから』って理由で、深く考えずに決断したり行動しちゃう事があるんだよ。

けど、その判断も無意識だから何がダメだったのか分からないってことね。

けど、それによって誤った選択や決断、行動をしちゃうこともある事は事実だ。

だから、僕たちは意識と無意識をうまく使い分けないといけない。

そして、常に僕たちが気づいていない世界があるってことを認識しておく必要があると思うんだ。

気付かない存在。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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