【言語】話し言葉に現れる心理

言葉というのはとてつもなく便利だけれど、それと同時にとてつもなく複雑で不思議なものだ。

現在、世界中には世界中には7000近い言語が存在すると言われているんだけど、その起源が全くわかっていないものもたくさんある。

日本語だってその一つだ。

この前、ちょうど英語の起源に関する話を書いたところなんだけど、日本語は英語ほどよく分かってないんだ。

そして、言語に関してはただただ言語の構造だったり、音だったり、文法だったりの研究ばっかりじゃなくて、例えば、心理言語学みたいに言語と人間の心理の関係についての研究もたくさんなされているのね。

例えば、チャールズ・ダーウィンは、

"Man has an instinctive tendency to speak as we see in the babble of our young children while no child has an instinctive tendency to bake, brew, and write."

て、言ってる。

どういう意味かっていうと、人間は皆赤ちゃんの頃から何かを話そうとする本能的な傾向を持っている。パンを焼いたり、醸造したり、物を書いたりする本能的な傾向は持っていないのにって感じのことね。

つまり、人間は生まれた頃から言語を話す本能は持って生まれてきているかもしれないってことなんだ。

これは言語学者のノーム・チョムスキーの主張とも類似しているんだよね。

そして、それがあったからこそ、人間は言語を用いて意思疎通を図り、ここまで文明的に発展してきたんだよね。

生物的な強さでいうと、おそらくほとんどの哺乳類には敵わないよ。だけど、言語があったからこそ、それらの哺乳類にも打ち勝つ方法を編み出して来れたんだと思うんだ。

旧約聖書の中に、人間が増えて文明が発達しだす場面があるんだよね。

人間たちは言語でアイデアを共有して高い建物を建て始めるんだ。

それを天から見ていた神様が、このままだと神の世界まで人間が到達してしまうと恐れ、これ以上建設を進めさせないために言語を分割させるってシーンがあるんだ。

みんなそれぞれが違う言語を話しだし、コミュニケーションが取れなくなることで人間はその後廃れていくんだよ。

それくらい言語には強い力があるってことなんだ。

そして、この言語には僕たちの認知や性格に与える影響もある。

例えば、どこかで書いたか忘れたけど、日本語と英語での死に対する価値観の違いが文法に表れているんだ。

例えば、『彼は5年前に亡くなりました。』って英語で言う時、"He died five years ago." って言うんだけど、それ以外にも "He has been dead for five years" って表現があるのね。

中学英語がわかる人なら『あ、現在完了だ』って思ったかもしれないんだけど、これを直訳すると『彼は5年間ずっと死んでいる』って意味になるんだ。

日本語にするとちょっと変だよね。

なんでこんな文法になるのかっていうと、これは一元論か二元論かの違いが反映されてるんだよね。

日本人は魂の存在を信じない一元論者が多いから、一旦死んでしまえばそれで終了ってイメージなんだよね。

けど、キリスト教の世界では、人間が死ぬと魂だけはその人の体を離れ天に昇っていく、そしてまた誰かの体に宿って生き続けるって言う考え方なんだ。

つまり、この『5年間ずっと死んでいる』のは人の体のことなのね。

死んだら体は使い物にならなくなるから埋葬されるんだけど、その状態が5年間続いているって意味なんだ。

こんな感じで文化や宗教、それに付随した人間の価値観や認知も言語によって影響を受けるし、逆に認知が言語に影響を与えることだってあるんだ。

とある心理学の実験では、様々な国の人たちを集めて、『一人の人がもう一人の人を後ろから押している絵を書いてください』とお願いすると言うことをやったんだ。

すると、日本語や英語のように左から右に文字を書く人は左から右に押す絵を描き、逆に右から左に文字を書く国の人たちは右から左に押す絵を書いたんだ。

これは話し言語というよりは書き言葉の影響なんだけど、それも言語が認知に与える影響だよね。

マザーテレサは『言葉に気をつけなさい』と言った。なぜならそれは行動になり、習慣になり、人格になるからだと。

これまで様々な人たちが言語について考え、言語について研究してきた。

言語は便利だけれども危険で、それでもって限界だってあるんだ。

哲学者のウィトゲンシュタインは論理哲学論考の最後に『語り合えないことについては、沈黙しなければならない』と言っている。

僕たちの思考は様々な形で表現されうるが、言語もその一つの方法であり、それには限界がある。

言葉では表しきれないこともたくさんある。

だからこそ、僕たちは言語とは何で、どのような影響を持ち、限界がどこなのかをきちんと知るべきなのかもしれない。

話し言葉に現れる心理。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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