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モーリタリアン 黒塗りの記録(2021)

ジョディ・フォスターがアメリカの闇に迫る
9.11事件が招いた、壮絶な運命の物語

2015年にイギリスで衝撃的な〈手記〉が出版されました。それは、アメリカ政府の検閲により、多くが黒塗りにされていました。

その手記を書いたのは、9.11事件の首謀者の1人として、キューバのグアンタナモ収容所に収監されていた、アフリカ・モーリタニア出身の男性モハメドゥ・スラヒ。モーリタニアで家族と穏やかに暮らしていたスラヒが突如、9.11事件の容疑者となってしまいます。

そんな壮絶な経験を『ラストキング・オブ・スコットランド』('07年)のケヴィン・マクドナルド監督が克明に映画化。9.11事件がもたらした悲劇の実話です。

【ストーリー】
アフリカの砂漠で、夜宴に興じていたスラヒ(タハール・ラムヒ)が突然、モーリタニアン当局に拘束される緊迫したシーンで、ストーリーは幕を開けます。
人権派弁護士ナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)は無償奉仕活動として、グアンタナモ収容所に拘束された男の弁護を買って出ます。ナンシーが若手弁護士テリー・ダンカン(シャイリーン・ウッドリー)を連れて、グアンタナモ収容所に男の面会へ行くと、現れたのは足かせを付けられたスラヒでした。
また、同じ頃、スチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)はスラヒの起訴を担当することになります。「グアンタナモに収容中の敵戦闘員を、9.11 の戦犯法廷で裁け」という大統領命令の元で、政府はスラヒを死刑第 1号にしようとしていたのです。
ナンシーは尋問官を恐れるスラヒに自らの経験を手記にするよう依頼します。彼の手記は検閲により、一部が黒く塗られていました。そして、ナンシーが政府に要求していた軍の調査資料の中身は、ほとんどが真っ黒に塗られていたのです。

スラヒは本当に事件に関与しているのか? 政府が隠した真実がナンシーの執念により、次第に明らかになる過程がスリリングに描かれます。

スチュアート中佐の友人が事故機の機長で、友人の無念を晴らそうとする中佐の個人的な思いを描くなど、スラヒの運命はテロリストたちを憎むアメリカの人々の手に委ねられています。

だが、真実はただ一つ。その衝撃的な真実が明らかになるシーンの斬新な演出に驚かされます。そこから一気にスラヒの運命が動いていきます。エンドロールまで続く、9.11事件の余波として起こった、興味深い事実は必見の価値があります。

2010年代は監督としての活躍が目立ったジョディ・フォスターにとって、本作は3年ぶりの主演作。厳しくも、情に熱い人道家の弁護士役を颯爽と演じ、作品を引き締めています。

スチュワート役のベネディクト・カンバーバッチが実話に感銘を受け、プロデューサーとして映画化に尽力しています。

過酷な運命に翻弄されるスラヒを体当たりで演じ、人間的な魅力を与えたタハール・ラヒムはフランス映画で活躍。ジャック・オーディアール監督の『預言者』(’09年)で主役を務め、カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを獲得しました。

本作ではジョディ・フォスターがゴールデングローブ賞の助演女優受賞、タハール・ラヒムがゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされました。

テロリストたちが集められた恐怖のグアンタナモ収容所、そして、アメリカの闇を多くの方にしっかりと観てほしいです。

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