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腸内細菌がインスリンの感受性を高めたり、抵抗性を高めたりしていたとは?!

昨日のコラムで、インスリンの抵抗性を高めたり、低めたりすることに腸内細菌が影響しているという話しを致しました。では、果たしてどの腸内細菌がインスリンの抵抗性に関与しているのでしょうか?

私たちが行っている腸内細菌検査は36種類の腸内細菌が属レベルで計測できます。いわゆるその構成比を出しているわけです。割合が多い腸内細菌がその人の健康に影響を与えている可能性は高いです。そしてそれぞれの腸内細菌が食べるエサが違えば、生み出す代謝物も違います。

ただ、その割合が多いからと言って、必ずしもその数値通りだとは限りません。人も元気な人、そうでない人がいるように、腸内細菌も弱っていたら影響は限定的ですし、芽胞という何年も殻を被って出て来ない腸内細菌もいます。必ずしも数値通りではないということです。

しかし、それを差し引いても、1つの判断基準になることは間違いありません。

話しを本題に映します。インシュリンの感受性を高めるであろうと言われている細菌は、Alistipes(アリスティペス)と呼ばれる腸内細菌になります。

36種類の菌の中でもマイナーな菌で、初めてお聞きになる方もいらっしゃるかと思います。この菌は、インスリンの働きを邪魔するブドウ糖などの糖類を精力的に消費し、インスリンが働きやすくしてくれると、理化学研究所を中心とした研究で明らかにされています。

他には、Bacteroides(バクテロイデス)がインスリンの感受性を高めると言われています。バクテロイデスは、痩せ菌とも言われます。インスリンの感受性を高め血糖値を抑えるため、太りにくいと言われていますが、非常に構成比が多い菌ですし、欧米人にはその傾向があります。日本人には果たしてそうなのかと言われると、痩せ菌説は微妙だと言われております。これは、欧米人と日本人の糖新生が活発であるかどうかの違いもあるのではと思います。

Alistipesとは逆にインスリンの抵抗性を高める菌も存在します。Dorea(ドレア)という菌がこれに当たりますが、この菌もマイナーな菌です。そしてBlautia(ブラウティア)という、ちょっとメジャーな菌もインスリンの抵抗性を高めると言われています。

ブラウティア菌は麴などの発酵食品をエサにしていると言われていますが、構成比が極端に多い人は注意が必要です。

ブラウティア菌と言えば、いい菌の象徴のような菌ですが、インスリンの抵抗性が高いと血糖値が上昇する一因となります。腸内細菌は、時と場合により、薬にもなるし毒にも成り得るということです。

インスリンに関して言えば、それだけ糖の調整が難しいということも言え、食べるものやその量、一緒に食べるもの、食べるタイミング、消化酵素の働き、インスリンの働き、インスリンの抵抗性に与える腸内細菌の有無など、様々な要因があると言うことですね。

Alistipesに関しては、腸内で増やすことで、インスリンの感受性を高める研究は行われているようですので、近い将来Alistipesを活用した治療薬が出る可能性はありますね。

インスリンの感受性を高めたり、抵抗性を高めたり、腸内細菌ごとにその働きは違いますが、高血糖の方もいれば低血糖の方もいますし、個人でもその時の健康状態で状況は違います。

決して腸内細菌が悪いわけでなく、人の方が自分の状態をしっかり把握しておくことが、健康を維持する秘訣なのではないでしょうか。

明日は、具体的に、これらの菌をどのくらいの割合で所有しているのかについて、腸内細菌のデータから見て行きたいと思います。