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研究者を目指している方のために(5)


はじめに

生成AIの誕生により、レポート作成に生成AIを使用して良いのかと議論されていましたね。今では、社会人は生成AIを使う。だから、学生に生成AIを使うなと言わず、生成AIを併せてより賢くなるように批判的思考力を高めよ、教育現場では学生が生成AIを使用してくることを前提に評価方法を進化せよということでひと段落したかと思います。つまり、教育方法の普遍性よりも社会の変化に対応することが重要であるという意見です。これは、コンピテンシーを求めた教育の幕開けです。そこで、次世代型教育とも言えるかもしれない、コンピテンシー基盤型教育(Competency-Based Education,以下 CBE)について、私見を述べさせていただきます。

コンピテンシー基盤型教育の最大長所

コンピテンシー基盤型教育(Competency-Based Education,以下 CBE)の最大の長所は何でしょうか? 最大長所は、将来の理想像から逆算して設計された教育であることです。 例えば、将来、宮大工になりたい。卓越した宮大工とは何か?ということを網羅したものがコンピテンシーです。そして、卓越した宮大工になるためには、どのような教育が良いかと考えたのが、コンピテンシー基盤型教育です。私がとても気に入っているのは、「卓越した」ところに焦点を当てることです。つまり、昨今の教育では、ギリギリでも良いので国家試験に合格するとか、ディプロマポリシーに到達するといった、低い目標や抽象的な目標を設定しているのではないかと危惧していました。オリンピックに出たいと思って、その競技で卓越することを目指すというのは、到達は難しいですが、わかりやすいですよね。金メダルがあるのであれば、それを目指したい。それには、努力しなければならないといったシンプルな考え方です。卓越性に焦点があてられることは、教育のわかりやすさと整合性を兼ね備えます。

コンピテンシー基盤型教育を導入した方が良い分野

このコンピテンシー基盤型教育は、卓越性にフォーカスするので、製品や性能に関連する分野で導入することがおすすめです。 ちなみに、コンピテンシー基盤型教育は、Product Models(製品モデル)を採用したカリキュラムで提供されます。このProduct Modelsに含まれるカリキュラムは、Outcomes-based education (アウトカム基盤型教育)があります。 結果にこだわる教育はいいですよね!

結果にこだわるならコンピテンシー基盤型教育

理学療法士を対象にすれば、仕事で卓越した存在になることです。卓越した理学療法士になる。スペシャリストになるということです。理学療法士からのサービスを受ける患者目線で考えてみても、卓越した理学療法士からのサービスを受けたいと思うはずです。卓越した理学療法士は、正確な原因追及と安全で効果的な治療ができる理学療法士です。患者の気持ちを考えてみても、何が悪いのか教えてもらいたいし、どの治療が効果的なのかを説明してもらって、なるべく治療効果が高いものを受けたいですよね。これは、理学療法士のみならず、さまざまな医療職でも同じではないでしょうか。それを目指して教育するのがコンピテンシー基盤型教育になります。
(1)なぜ、この教育が必要なのか
(2)なぜ、この授業科目が必要なのか、
(3)なぜ、この授業科目の到達目標が設定されたか
学習者にとっても、授業科目を担当する教員にとっても、採用先にとってもわかりやすい教育ですが、教員の力量が不足していれば展開できない教育になります。

コンピテンシー基盤型教育の先駆け

理学療法分野では、アメリカやイギリス、スウエーデンなどです。 理学療法士の方であれば、それらの国で活躍する理学療法士のコンピテンシー水準が高いと認識視しているかと思います。理学療法士の方で興味がある方は、下記URLにある論文に目を通してみてください。
https://academic.oup.com/ptj/article/102/5/pzac044/6575292?login=true

コンピテンシーに関する研究を加速しよう

やりたいけど、やることができない現状が日本の理学療法には存在します。なぜか、「研究が不足」しているからです。日本の理学療法士が教育・管理にフォーカスする例が少なく、理学療法士のコンピテンシーに関する研究は、単一施設内での調査・研究であって、コンピテンシー基盤型教育に貢献できる研究はほとんどありません。日本の理学療法士を対象にしたコンピテンシーは、日本人理学療法士の手で開発する必要がありますので、日本の理学療法士さんコンピテンシーに関する研究を実践してみませんか。

コンピテンシー研究を実施する上での留意事項

コンピテンシー研究を進めて、どこかで、開発したコンピテンシーが国際通用性の範囲内であることを説明しなければなりません。すべての項目で国際通用性を認めるのは現実的でありません。理学療法先進国と日本では、開業、診断、治療方法が違いますので、違う部分もあるけれども同じ部分があるということで、「適切な範囲内」にする必要があります。ただし、開発したコンピテンシーの国際通用性を確認する手続きは、10年先、20年先になるでしょう。基本的に現在は、 職場内でのコンピテンシー作成(職場で卓越した人)研究を増やしていく時期かと思います。

まとめ

わかりやすい教育とは、シームレスに社会に接続できることをまとめてきました。ただし、それを実行するためには、研究の量的質的改善が必要であり、今すぐ日本の理学療法士に求めるコンピテンシーを確立できず、職場内のコンピテンシー作成からはじめてみましょう。 

研究者を目指している方を対象にしたこれまでの原稿

もしよかったら、目を通してもらえると嬉しいです。


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