センセーショナルな事件も受任する|虎ノ門第一法律事務所の菅 弘一弁護士へのインタビュー
日本のビジネスの中心地、虎ノ門に拠点を持つ「虎ノ門第一法律事務所」は、2020年に誕生し、現在17名の弁護士が所属している法律事務所です。新進老練の別を問わずに優秀な弁護士が集結している中で、事務所の開設者の1人であり検察官としてのキャリアも持つ菅 弘一弁護士は、有名事件の弁護人としても活躍を重ねています。
ドラマの監修を手掛けることも多く、慶應義塾大学大学院法務研究科教授や武蔵野大学法学部客員教授として教鞭も取るなど、多彩に活躍されています。そんな菅弁護士に、日頃感じるストレスや、事件の向き合い方についてインタビューしました。ぜひご一読ください。
(聞き手:岩田いく実)
■先生のご経歴を教えてください。
慶応義塾大学法学部を経て、1991年に司法試験に合格し、1994年4月から2007年3月までは検事でした。横浜や津、富山などにもおりました。弁護士となってからは、虎ノ門にありますリソルテ総合法律事務所などを経て、2020年に虎ノ門法律第一法律事務所の開設に携わり、今に至ります。
■弁護士業務に携わる中で、日常的に感じるストレスにはどのようなものがありますか。
当事務所は弁護士17名に対して、事務局5名の体制です。弁護士1人ずつに秘書がいるわけではないため、基本的に弁護士自らがスケジュール管理をしています。
そのため、事件の進捗管理や起案などは自分でスケジュールを組み立てていく必要があり、「しまった、もう少し早くこの事件に着手すればよかった」と感じることがありますね。裁判が始まってしまえば期日がコンスタントにあるので、案外事件管理はしやすいのですが、受任直後の打ち合わせが数多く重なると、意外とストレスになりやすいな、と感じます。
■スケジュールや業務管理はどのように行っていますか。
裁判所が使っているもあり、「Microsoft Teams」を使っているのですが、この点も結構ストレスがあって。裁判所のTeamsには時間外、午後5時ころだと思いますが、その後のアクセスができないのです。休日もアクセスできません。裁判所が執務している時間以外はチャットも投稿できないのです。それなのに裁判所は、時間外に電話をかけてくることもあったりするんです。
これが結構ストレスですね。改善してほしいなぁと感じている人が多いんじゃないかなと思っています。裁判官も検事も弁護士も休日・祝日関係なく仕事しますし。
■依頼に関することでは、これまでどのようなストレスを感じることがありましたか。
依頼者との信頼関係を作ることは、やはり弁護士である以上とても大切にしていますが、それでも依頼者によっては、非常に難しい主張を繰り返す方もいます。なるべく依頼者の意図を汲んで事件の解決を目指すためにも、会話を重ねることを心掛けていますね。
あと、報酬の請求はいまだに悩みます。給与制の検察官とは報酬部分が全く異なりますよね、自分の値段は自分でつけるところが弁護士にはありますから。弁護士仲間に、「君は報酬の請求が下手だな」と言われることも。
どのくらい請求していいものか、いまだによく分かりません。
■事務所全体でストレスを抱え込まないような工夫は導入されていますか。
この事務所は弁護士1人で受けることは難しい依頼も多いので、所属するパートナー弁護士と共同受任を行うことも多く、1人で事件を抱え込まないような体制ができていると思います。
会議で進捗管理を行っていますし、事件処理に悩んだら事務所内で相談することも多いです。事務所内のチャットも使います。「誰か過去にこんな相談やってたことない?」と気軽に質問しあえるので、期が若い弁護士もストレスは抱え込みにくいんじゃないかなと思います。
■弁護士と検察官との違いは、報酬以外の面ではどのようなことを感じますか。
検察官は「受け身」の仕事がほとんどで、毎日のように警察から新しい事件が送られてきていました。検察官も10年目くらいからは上司も自由に仕事をやらせてくれるようになったで、やりがいも大きく楽しいことは多かったです。
だけど、弁護士はそうはいかないです。受け身では経営できませんから、「アピール」して、自分で事件を受けていく必要があると思ってます。あと弁護士は、自分のやりたい事件を自由に受任できる点も大きな違いだと感じます。
元々私は弁護士になろうと思っていたんです。学生時代は弁護士になって自分で稼ごう、なんて思っていました。
2.社会的に耳目を集める事件を受ける時は事務所のパートナーに相談
■ネット上で弁護士名を検索すると、有名な事件に関することでお名前が出てきます。センセーショナルな事件をお受けになられる時には、どのような点に注意されていますか。
まず、エゴサ―チはしないこと。それをしてしまうとキリがないので。実は、子どもに「ネットに名前出てるよ。」なんて言われることもあるんですが。
事件の内容によっては受ける前に、家族には伝えていました。今はもう子どもも大きいですから自由気ままに受けられますけれど、頻繁に報道されているような事件のときは家族に影響することもあるかもしれないので、「受けてもいいか」と確認することもありました。
実際に報道が過熱した事件で、弁護士のご家族がご自宅から出られなかったこともあったと聞いたことがあります。
■メディアが過熱しそうな事件を受任する際には、事務所内でも受ける前に相談されますか。
もちろんです。報道されそうな事件を受けるのが事務所の弁護士の中では多い方なんです。受ける前には、「事務所にレピュテーションリスクがあるかも知れないけど受任していいか。」と事務所全体に確認するようにしています。事務所全体がストレスや不満を抱え込まないように、最初に相談をしています。
ある有名事件の時は、「報道なんかでは批判されている人の依頼なんだけど受任してもいいか。一緒にやってくれる人はいるか。」と聞きました。快く受けてくれる仲間がいたので、チームで臨みました。
■ヒールになろうとも、あえて受ける事件もありますか。
大きい事件を受ける、というのは弁護士や法律事務所としての力量を問われる絶好の機会でもあります。世間的にはヒールに見えるかもしれませんが、あえて受けることで事務所全体の力を伸ばすことにもつながる可能性もあると思っています。弁護士という業界の中では信頼度を高める機会にもつながるはずだと思うのです。
弁護士である以上、さまざまなクライアントの事件を乗り越える必要がありますから、多くの人から批判されようとも、ストレスを抱えるかもしれなくても、あえて受ける事件はあります。
■私生活ではどのような息抜きをされていますか
お酒を飲むことは好きです。外で飲む頻度は体調管理面から考えて減らしています。最近は同窓会をきっかけに、小学校の同級生とも飲んでいます。担任の先生の話や、何組だったかなんて、他愛のない話に花を咲かせています。弁護士との仕事から気持ちも切り替わるし、本当にいい時間だと思います。
あとはゴルフをやっています。ゴルフはやってみると本当に奥深い。高みを目指したくなるものだと思っています。昔からやっていたわけではなくて、ここ数年です、本格的に始めたのは。身体を動かすこともやっぱりいい息抜きです。
■教鞭を執ることもおありです、法曹を目指す若い世代の方に伝えたいことはありますか。
「法律家は楽しい」ということに尽きると思います。法曹で活躍を目指す、ということはさまざまな事件に触れる必要があり、時にはストレスを感じる事件に携わることもありますが、それによって乗り越える力も持てるようになると思います。よし、乗り越えるぞ、という瞬間はやっぱり楽しいですよ。
私は、検事の頃から「正直者が損をすることのない社会の実現」を目指したいと考えてきました。若い方々も法律家としての理想に向かって研鑽してほしい、と伝えたいです。
■最後に、ストレスに立ち向かいながら研鑽を重ねる弁護士に、メッセージをお願いします。
若手の方々は、まず先輩や仲間に相談をすることを意識してほしいですね。抱え込んでしまうと、クライアントのためにもなりません。やってみたいけど、自分1人では受けられない、と思ったら誰かと一緒に受任することも方法の1つです。多種多様な事件に臨みたいなら、研鑽を積みやすい法律事務所で働くこともおすすめです。
あとは、法律家として活躍を目指す以上は、たとえセンセーショナルな事件であっても、やりがいを胸に挑んでほしいですね。1つずつ丁寧に事件と向き合っていると、評価をしてくれる同業者も増えますし、後に続く方も生まれます。
3.終わりに
今回は、社会的に耳目を集める事件を受けるに挑む菅 弘一先生へのインタビューでした。経験が豊富な先生であっても大変な案件はしっかりと所内でチームを組み取り組まれていることは、他の先生方におかれましても、負担の大きい案件は他の先生と一緒に進めてもいいという勇気づけになるのではないでしょうか。
Amiではストレスや悩みを抱えた先生方向けにカウンセリングを提供しております。国家資格を有するだけでなく、日弁連や各弁護士会にてメンタルヘルス研修経験があるカウンセラーや弁護士業務に精通したカウンセラーがお話を伺いますので、お悩みの方は是非ご検討ください。
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