『入れ子の水は月に轢かれ』を読んで沖縄県に行ってみたいと思った話

普段、長編推理小説はあまり読まないのですが、先日友人から借りた2020アガサ・クリスティー賞の作品が、札幌でお掃除ロボに乗って冒険するという世界観が面白かったので、今度は舞台が沖縄という2018年の受賞作品に興味を持って読んでみました。

アガサ・クリスティー賞とは、簡単に言うと早川書房の長編推理小説の公募新人賞。将来有望な荒削りの新人が書くため、読者の想像を超えてくる独特の作品が多いです。

この記事は、「#読書の秋2020」の応募作品です。

あらすじ

ゲリラ豪雨で知的障害を持つ双子の兄の潤を亡くした駿。母子家庭で生活に困窮していた為、潤の障害者年金受給がどうしても必要。駿が死んだことにして兄の潤として生きることに。そんな生活に嫌気がさして知り合いのいない沖縄に流れ着く。

那覇の国際通りから一歩入った商店街。駿はそこで店を構える鶴子オバアに拾われ住み込みの従業員として働く。釣り好きの健と意気投合した駿は鶴子オバアの店を譲り受け水上ラーメンの店主となった。

第1号の客がオープン翌日に水死体として発見される。詐欺師であることを会話から察した駿は健に話した。殺人ではないかと独自に捜査を開始するもその裏には米軍やCIA、ベトナムの二重スパイ、琉球王など沖縄の暗部が蠢いていて、その捜査の最中第2、第3の水死体が浮かぶ。

著者

著者の名前は「オーガニックゆうき」。芸人のような名前ですがもちろんこれはペンネームで母親と一緒に考えたものだそうです。それに大のウルトラマン好きのよう画像もそのジャンパーを着ています。
編集部から「真面目な名前に変えては」と諭されても頑として変えなかったみたいです。カバーに書かれている作者名の英語表記が「ORGANIC×ORGANIC」になっていてとても面白いです。

帯にも引用されていますが、
「まだけっして完成形ではないが、この作家はもっともっと大きくなる。そういう予感を抱かせてくれる作家と出会えたことを喜びたい。」
と書かれいます。相当期待されている新人ということが分かります。

現地を知らないと分かりくい構図

最初に伝えておきますが、読んでみた感想としては面白いは面白いです。
でも街の構図を理解するのにとても時間がかります。ガーブ川は蓋がされて長い時間を経ているという情景がわからず位置関係を把握するだけでも大変です。
読みながら巻頭のこのイメージ図を何度も何度も見ることになるし、これがまた難しいのです。文中によく出てくるジュンク堂とかどこ？ってなりますし...。

ミステリーも、容疑者らしき人は居なくて、怪しそうな人がそのまま怪しいという感じ。
物語の講造は基本的に　駿が何かに戸惑う▶︎健さんがいろいろ調べてくる▶︎あれこれ言う▶︎駿か鶴子オバァが何かひらめく　の繰り返しで単調。何か起きても健さんがどうにかするだろうと感じてしまう。

また、タイトル通り水と月は潮の満ち引きで重要な仕掛けになっているトリックはわかるけど、前半に提示されている情報ではわからないので、離脱しそうになりました。

最大の魅力は沖縄の描写

魅力は沖縄の描写。私は沖縄弁？は分からないのですが沖縄の特有の言葉や固有名詞がどんどん出てきます。出てくるのはいいのですが説明がないので想像しながら読むしかなくて、わからない部分は飛ばしちゃいます。
書き手のスタイルが、わかる人だけついてきてねという感じなのでとても驚きます

沖縄県の人には人気の作品のようですが、他県の人は難しいと思います。文章も無数という言葉の連呼やキャラ造形もふらふらしていてちょっと読みにくい作品。

でも、とてもユニークな力作だと思ったし、水という人間にとって最も身近なものの恐ろしさを表現しながら、マンホールのトラウマと向き合う姿だったり、沖縄の時代背景や軍事・政治・羽衣伝説まであってアイディアは凄かったです。

ミステリーよりも沖縄の街に興味を持った作品でした。私は本州から出たことがなくて飛行機にも乗ったことがないので絶対いつか沖縄に行ってみたいです！！

最後までお読み頂きありがとうございました。また、貴重なお時間まで頂きまして、ありがとうございました。今後もがんばっていきますのでスキ・フォローなど頂けますと嬉しいです🙇‍♀️

※コンテスト応募作品ということで、私の本気の作品に集中して頂く為コメント欄は廃止しています。ご了承ください🙇‍♀️