「笑顔の向こう側」-エッセイ-
最近、「感情労働」という言葉を知りました。
社会学者のA・R・ホックシールド氏によって提唱された言葉で「常に自分の精神や感情を抑え、接する相手に不安などを与えないよう、明るくふるまう必要のある労働のこと」を指します。
よく例に挙げられるのが、医療や介護関係のお仕事ですが、サービス業や営業などを含むことも。
そういう業種で働く際には、怒りや悲しみなどのマイナスの感情は表面に出ないように、心のうちで抑える必要があります。
また、周りから見てから見て、明るく前向きになるような喜びや楽しみといったプラスの感情を表に出す必要もあります。
そういう意味では、図書館の仕事も感情労働だったのかなと……ふと思いを馳せていました。
私にとって、図書館でのカウンター業務は、とても好きな仕事の一つでした。
目まぐるしく色々な方が来られるので、面白かったです。
……でも、スタッフの中には、本は大好き!でも人と接するのが苦手という子も多かったです。
カウンターの内側には「笑顔!」と書かれたボロボロの張り紙が貼ってあり、そこはかとなく闇を感じたのを覚えています。
笑顔を保つことの難しさは、長く働くほど色々な事があって、実感するようになりました。
後輩と一緒に、ものすごく理不尽なクレームを対応した時のこと。
対応後、カウンターに戻ってからも元気がない様子で、何となく無理してる時の笑顔だなぁと思って……。
「さっきは本当よく我慢したね。辛かったよね。今、少し空いてるし、ちょっとだけ奥に行ってきても大丈夫だよ」
と声をかけた途端に、後輩がポロポロ涙を流し、慌てたことがあります。
後で戻ってきた彼女は「もう大丈夫です!ありがとうございます。えへ、久々に泣いたらスッキリしました」と言って、見違えるように明るくなっていました。
どんなお仕事でも、誰もが何らかの重圧の中で生きています。
今の仕事は、前職のようなサービス業ではないのですが、やはり色々な人と一緒に仕事をする中で、なかなか人に言えない辛いこと、苦しいことで悩むこともあります。
もし叶うなら……どんなときでも、笑顔になれる自分でいることができれば最高だな!と思います。
が、時々は無理せずに、辛い!って泣いたり、でもそこまで頑張った自分偉い!って褒めてあげていいと思うんです。
笑顔には、色々な種類があります。
心からの笑顔、愛想笑い、社交辞令の笑顔、本心を隠すための誤魔化し笑い、自己防衛のための笑い、プライドを守るための笑いetc……
心が苦しくても「笑顔」を作れば何となく心も晴れていく気はします。
口角を上げて笑う事で脳が自分は幸せだと騙されるからだそうです。
でも、気持ちに蓋をして、無理矢理笑って脳を偽っても、いつか限界が来てしまいます。
自分自身が後で辛くならないように。
時には泣いて、辛さや悲しみを完全に克服してから、心からの笑顔を見せれるようにしたいですね。
それがまた、誰かの心を明るくしたり、癒しに繋がっていくといいなと思います。