マガジンのカバー画像

読書録

6
本読むの好き
運営しているクリエイター

#読書録

【読書録】道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

【読書録】道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

「嘘も100回言えば、本当になる」
と唱えたのは、ナチスの宣伝塔であるヨーゼフ・ゲッペルスである。
「もしあなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう。」が直訳だ。

そんな経験って、誰にでもあるんじゃないか。
自分にとって都合が悪いことが起きた時、言い逃れをするために思わず嘘を吐く。その嘘を何度も重ねていくうちに、いつの間にか自分が吐いた嘘の方が真実であるように錯

もっとみる
【読書録】早見和真『イノセント・デイズ』

【読書録】早見和真『イノセント・デイズ』

生きることとは、無数にある点を繋いで線を描くことだ。
それなのに私たちは点だけを切り取って、誰かを分かったつもりで評価する。

「そういうタイプだよね」とか「なんかいかにもだな」とか。

「不倫なんかじゃないかもしれないのにね。夫婦かもしれないし、恋人かもしれない。親子かもしれないし、兄妹なのかもしれない。そんなこと私にはわからない。わからないくせに決めつけた。全然ダメだ。全然成長してないよ」
p

もっとみる
【読書録】窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』

【読書録】窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』

私には「偉大な小説家は必ず精神を病んでいる」という持論があったから、今まで読んだ本は暗い話が多かったんだけど、その考えを覆した一作。
全日本国民に配るべきだとさえ思う。

家族をテーマにした短編集で、それぞれのタイトルに植物の名前が当てられていたのが綺麗だった。
どの作品も素敵だったんだけど、私のいちばんのお気に入りは『サボテンの咆哮』かなあ。

「お父さん、言葉は少ないけれど、お母さん、お父さん

もっとみる
【読書録】角田光代『坂の途中の家』

【読書録】角田光代『坂の途中の家』

子どもへの虐待のニュースが多く報道されている。
そんな中で本作は、ワンオペで育児をする「母」に焦点を当てた小説。すごく新しいな、と思った。

ツイッターで、「好きな人の『おかしいんじゃない?』という言葉ほど私を傷つけるものはない」とツイートしたことがある。それは、この小説を読んで感じたことだ。

「あの時の考えは、自分が正しかったのではなくて、陽一郎にとっての正解だったのだ」

「憎しみではない、

もっとみる