見出し画像

【読書録】窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』

私には「偉大な小説家は必ず精神を病んでいる」という持論があったから、今まで読んだ本は暗い話が多かったんだけど、その考えを覆した一作。
全日本国民に配るべきだとさえ思う。

家族をテーマにした短編集で、それぞれのタイトルに植物の名前が当てられていたのが綺麗だった。
どの作品も素敵だったんだけど、私のいちばんのお気に入りは『サボテンの咆哮』かなあ。

「お父さん、言葉は少ないけれど、お母さん、お父さんの言いたいことはわかるのよ。やさしい言葉をかけられたって、態度がそうじゃなかったら、なんだか悲しいじゃない。お父さんはね、やさしい人よ。私がそう思ってるんだからいいじゃないの」

この言葉が大好きで、何度読んでも涙止まらなくなってしまう。

気持ちは言葉にしなきゃ伝わらないって思ってたけど、口先の言葉より態度とか行動で気持ちを伝えられる人になりたいな。感謝や反省の気持ちは特にね。

サボテンにはトゲがある。そのトゲのせいで、触った人に怪我をさせてしまうこともあって。
きっと人間もそうだと思う。無意識でも、悪気がなくても、誰かを傷つけてしまうことって誰にでもある。だけど誰かに触れたい、触れてほしい、抱きしめたい、抱きしめられたい、大切にしたい、大切にされたい。

『サボテンの咆哮』というタイトルには、ぎこちないながらも誰かを愛したいって意味が込められてるんじゃないかなって、私は思った。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?