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【読書録】角田光代『坂の途中の家』

子どもへの虐待のニュースが多く報道されている。
そんな中で本作は、ワンオペで育児をする「母」に焦点を当てた小説。すごく新しいな、と思った。

ツイッターで、「好きな人の『おかしいんじゃない?』という言葉ほど私を傷つけるものはない」とツイートしたことがある。それは、この小説を読んで感じたことだ。

「あの時の考えは、自分が正しかったのではなくて、陽一郎にとっての正解だったのだ」
「憎しみではない、愛だ。相手をおとしめ、傷つけ、そうすることで、自分の腕から出ていかないようにする。愛しているから」

自分の考えを、愛する人に否定されることで萎縮してしまう女性って沢山いると思う。

「おかしいんじゃない?」というたった一言だけで、自分の全てを拒絶されたような気分になる。そして自分は何もできない駄目で愚かな人間だと、必要以上に自分を蔑み自信を無くしてしまう。

虐待報道が過熱するせいで、不器用ながらも必死に我が子を教育する母へのバッシングが生まれてしまうのではないかと危惧してしまう。

例えば道端で駄々をこねた子どもに、母親が耐え切れず子のお尻をピシャッと叩いたとする。普段は子煩悩な母親であるのに、偶然その場面だけを見られ、切り取られ、勝手に解釈され「○○さんの家の奥さん、子どもに虐待してるんじゃないの?」と噂を立てられる。その噂が夫や義父母の耳に入り、母親は弁解の余地無く責められる。母親の味方は誰もおらず、育児について誰にも相談することができない。手助けしてくれる人もいない。そんな現実があったとしたら…

今年に入って、児童虐待防止法の法改正が検討されている。しかし子どもの虐待を防ぐために守らなければいけないのは、子どもだけなのだろうか?子どもだけではなく、その子を育てる母親も同じように守られる存在なのではないかと私は思う。

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