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2025.2.26.ちゃん付けの話

私はなんにでも「ちゃん」を付けてしまう。
スーパーで買い物するときも「トマトちゃん買わなきゃ」「オリーブオイルちゃん高くなったねえ」、
動物を見れば「クラゲちゃんかわいい」「カエルちゃん鳴いてる」、
家電に対しても「スマホちゃん」「テレビちゃん」という始末。

家の中だけならいいものの、人前でもこの調子なので自分で引いてしまう。仮にも私はアラフォーで、そういう言い方をして許される年齢からはかけ離れている。
何気なく友達と話していて出たときなどは「しまった」と思う。
たいていみんな一瞬、不思議そうな顔をするけれど、なんでもないようにスルーしてくれる。うん、まあ、この時の気持ちは切ないので考えないものとしましょう。

別にあざとく見られたくて始めたわけじゃない。
理由はある。以前勤務していた高齢者施設で出会ったヨシエさん(仮名)の影響だ。
ヨシエさんはなんにでも「ちゃん」を付けて話す人だった。
「ねこちゃん」「とうもろこしちゃん」「きんぎょちゃん」という具合に。他にもいろいろ。
ヨシエさんの施設の利用期間は長くて、関わるうちに私にもその言葉遣いが移ってしまった。
直したくても直せない。たぶん、ヨシエさん自身が、暴力を振るったり、口が悪いようなタイプではなくて、いつも明るくにこにことご機嫌に笑っている方だったから、私が「好ましい」と思って無意識に取り込んでしまったんだと思う。
いつだったか、「若い頃モテたでしょ?」と私が尋ねたら、「まあね」と答えてにやりと笑うような方だった。
たぶん、そうとう、かなり、人気があったんじゃないかと思う。男だけじゃなく、女にも。

私がその施設を退職してずいぶん経つけれども、この「ちゃん付け癖」は直りそうにない。というか、直さなくてもいいかと思っている。
だって、もしかしたらこの先の人生、いつか私がヨシエさんのように施設にお世話になる日がくるかもしれない。そうなったときに、私が使う「ちゃん付け」を、若くて素直な誰かが継承してくれるかもしれない。
それってなんか良くないですか。
そのときには、私もヨシエさんのように、いつも明るく、とまではいかずとも、なるべく朗らかに、にこにこと過ごしていたいものである。
「モテたでしょ?」って聞かれたら、「まあね」と答えてにやりと笑える人生でありますように。


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