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説明力の話6(推奨)


はじめに

「できる人」は説明する相手や目的、シチュエーションによって話の組み立て方を使い分けています。 

説明する相手はいつも同じではありません。また説明の目的も常に同じとは限りません。時間的な制約、相手の人数など様々です。

本記事では目的やシチュエーションに合わせた最適な説明方法を型としてまとめました。


「目利き代行」 の型

「数々の経験を経た私が自信を持ってお勧め
します」


この型は自分の提案に安心感を与えたいときに有効です。特にそのカテゴリーに対する相手の知見が浅く、選ぶ視点や判断基準を持っていない場合に適しています。

自分の経験を裏づけとして相手に代わって選び抜いています。身近な例として旅行やグルメのガイドブックがあります。


【ポイント】
最初に「たくさんある中でご自分で選ぶのは大変だと思います」と数多くの選択肢が存在することを伝え、選ぶ作業の大変さに共感します。 そうして自分が代わりに選ぶ必然性をアピールします。

次に「私はこれまで30年間この(カテゴリー)に携わってきました」と自分が目利き可能な人物たる所以を伝えます。

最後に「これまで見てきた中で、これが最高の一品です」と選び抜いた旨を伝えます。


【具体例】
センター試験ではこれまで多くの問題が出題され、それを学生1人で解ききることは時間的に困難です。ただし私は職業柄、出題されてきた問題は全て解いてきました。その中でも特に重要であった問題を、今回はお教えします。






「希少性アピール」の型

「今からお伝えすることは、ほとんどの人が
知らないことです」
伝えたい内容に食いつかせたいときに効果的です。 提案・セールスなど相手の行動を引き出したいときに広く使えます。

人は周囲と同じであることを欲する一方で、 自分は特別つまり少数派でいたいと思う生き物でもあります。 そのため人は「限定」 に魅力を感じます。

希少性があると判断すると、人は思い切った判断・行動をします。「手に入りにくいこと=重要なこと」と思わせることができるからです。説明においては、ここでしか聞けない話、 この記事でしか読めないネタ、知る人が少ない情報であることをアピールすることで、相手に説明の価値を感じさせます。



【説明流れ】
まずは「ここだけの話なのですが…」と希少性をアピールします。

次に行動を促すフレーズを伝えます。「そのため今すぐにでも●●することをお勧めします」Twitterやブログであれば「この文章は24時間以内に削除する予定です」 のような文言を足すことで相手に「制約」を与え今だから読める希少性を感じてもらえます。


【ポイント1】
希少性をアピールする際は「1回しか話しません」や「リリースは来週なのですが」のように、数値や期日を入れるとより効果的です。


【ポイント2】
本当に相手が知らない情報を伝えることです。
希少性をアピールしておきながら、 相手が既に知っている情報を伝えてしまうと信用を損ないかねません。希少ということは、 当然のことながら相手は知らない情報のはずです。


【ポイント3】
お店では「本日限り、数量限定」のような売り文句がよくあります。ここまで直接的でなくても「なくなり次第終了、自家製」 もその場限りといった「限定」をアピールするフレーズです。


【具体例】
本件は非公開情報であり、公開は3日後となります。一般公開前にお得にご購入いただけるチャンスですので、今日明日中にご決断を承りたく存じます。






「独自性アピール」の型

「●●といえば、しか考えられません」

競合他社の商品が並ぶ中で、自社のものを選んでもらうために用います。他と代替が利かない唯一無二の特徴が独自性です。 類似のものの中で、自分の商品がオンリーワンである理由を独自性によって証明します。



【説明の流れ】
まずは独自性アピールをしたい商品のカテゴリーと、その名称(ブランド名)を伝えます。 「●●(カテゴリー) といえば、(具体名) しか考えられません」

次に具体的に類似の商品とどう違っているのか理由を伝えます。「なぜなら、この▲▲は、 ■■だからです」

最後に、類似品と比べた「違い」が生じる根拠を、ファクトベースで伝えます。「実際に〜●●」


【ポイント】
次の2つを明確にすることです。
「1: カテゴリーをどう設定するか」
「2: どのような違いを提示するか」

アイスを例に考えてみます。

アイスといっても様々あります。 クリーム系もあればカキ氷系もあります。 そのため独自性をアピールするにはカテゴリーを絞る必要があります。

単純にクリーム系やかき氷系とするだけでなく「高級感を味わいたい」「スティック型」「みんなでワイワイ食べられる」「昔懐かしさを感じる」など、たくさんのカテゴリーから考え、その上で違いを示します。

例えば「冬にコタツで食べたくなるアイス」といえば雪見だいふくしか考えられません。



【具体例】
シンプルに使いこなしやすいコンピュータ製品を開発する企業といえば、やはりApple 社です。なぜならApple社は人間が直感的にわかるような商品開発を徹底しているからです。実際に Apple社は、ユーザーが製品を使いながら「どう感じるか?」 を、 実験により何度も検証し、 感性に訴える製品の開発を追求し続けているのです。





「権威者アピール」 の型

「専門家もそう言っています」

セールスや説得で相手の行動を促したいときに効果的です。 特に躊躇している相手に有効です。

人の行動は他人からの情報に影響を受けます。「皆が言っている」「偉い人がこう書いている」と聞くと流されやすくなります。

ランキングで上位表示された商品が売れやすいのも「皆が買っている」が伝わるからです。この型はそのような心理法則を利用して、自分の主張や解釈の説明に、権威者や、多くの経験者の声を付け加えて、相手の行動を促します。


【説明の流れ】
まずは相手に行動してもらいたい旨の主張を提示します。 「私は●●をお勧めします」

次に権威者の具体的な名前や、家族、身近な人など相手と関係性の深い人たちの名前を出し、 先程述べた内容を後押しします。「実際、■■教授やその他多くの専門家も似たことを述べています」

法律関係なら弁護士、医療関係なら医師のような専門家、 あるいは、 ■■学会などの専門家集団、相手が学生であれば、多くのクラスメイトなどです。


【ポイント1】
権威者の具体的な名前や、家族や身近な人など相手と関係性の深い人たちの名前を出すと効果的です。


【ポイント2】
「騙されたと思って、試しにやってみてください」のようなフレーズも一緒に用いると効果的です。他にも「お墨付き、愛用、御用達、贔屓」などのフレーズが使えます。



【具体例】
この 「●●総本店」 のモナカは手土産におすすめです。実は、かの有名な勝海舟がこのお店の閉店の危機を阻止するほど贔屓にし、さらに明治天皇も御用達だったのです。





参考文献

・犬塚壮志、説明組み立て図鑑、SBクリエイティブ(2021)
・藤沢晃治、分かりやすい説明の技術-最強のプレゼンテーション15のルール、講談社(2002)



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