暴食対策 妻が死にました。(15)

1か月経ち、再び病院に来ていた。まず先生はこの1か月どのように過ごしていたのかを聞いてくる。気分の落ち込み方や抑揚、体調など。食欲や睡眠リズム、それに外部の刺激に対する感想なども聞いてくれた。

一回目の診療で先生に対する抵抗がほとんどなくなったぼくは、先生のいいつけをしっかりと守っていた。出来るだけ栄養のある食事をこころがけ、睡眠のリズムを整える。とはいえ眠かったらそのまま眠ってしまうこと。妻のことを思い出し泣きたい気分になった時はムリをせず思いのまま泣いてしまうこと。音や光、人と触れ合う事で神経が逆撫でされるようならそれも避けてしまえばいいこと。

それでも気分はまったく良くならなかった。毎日のように悲しみが押し寄せてくる。その度にぼくは動けなくなり、床にうずくまり、ほろほろと涙を流した。薬は欠かさず毎日飲んでいた。飲まないと眠れなかった。

記憶の欠如や自制心を欠いた暴食について報告すると、先生は優しくうなずきながらそうですね、そういうことも起こりえますと言った。薬の作用なのであまり不安になる必要はないですが、食べ過ぎてしまうのは良くないかも知れません。無意識のうちに食べてしまうのなら、少し取りづらい位置に食べ物を置いてみましょうか。

そんな簡単がことで食欲を抑えられるとは思わなかったが、やらないよりはいいのかも。無意識の状態なら、食べ物を扉に隠すだけでも少しは効果があるかも知れない。

結論から言うと、無意識のぼくはなかなか強力だった。戸棚の上の方に食べ物を入れようが、鍵のかかる扉にしまおうが、相変わらず意識のない状態で食べていた。たまに届くプレゼントや無意識の暴食を感じながら、ぼくはそれをなんとかしようと考え始めていた。悲しみに暮れるだけではなく、頭を使う事を始めていた。考えるだけで、なにも効果的な方法は思い浮かばなかったけれど。

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