女性研究者は必見!?米国での子連れ共働き研究者の苦悩
はじめに
筆者は共働き子連れ研究者です。
今回は共働き研究者のメリットとデメリットについて話していきたいと思います。
その前に言っておきます。
「共働き子連れ研究者はエヴァである。」と。
その心を知りたい方は是非最後まで読んでみてください。
ではどうぞ!!
子連れ共働き研究者のメリット兼デメリット
冒頭でも述べた通り、筆者は米国で夫婦共々ポスドクとして働いています。しかも子供がいます。一応筆者は性別を伏せていますので、片方のポジショントークにならないよう気をつけます。
以前に子連れ共働き研究者のお金事情(米国の都会)を別記事で語りましたので、こちらもご参照ください。
ではまず、共働き研究者のメリットでもあると同時にデメリットである点を語ります。
アメリカ社会は日本に比べて、男女平等が進んでいます。具体的に何が進んでいるかというと説明が難しいですが、少なくともそういう空気があります。例えば育休は、夫婦共々取るのが割と「普通」です。
一方で、良くも悪くもですが、日本では共働きといっても女性は働く傍ら子育てや家事もして、男性は家事育児をあまりしないで研究に励むという風潮があると思います。
もちろん各夫婦の関係性による所が大きいですが、日本人は特にアメリカに来るとアメリカの空気、文化に馴染む方が多い印象です。すると日本ではあまり働けなかった女性研究者はより働けるようになります。
そして男性側からすると、残念ながら働く時間が短くなるでしょう。要するに女性研究者にとってはメリット、一方で男性研究者にとってはデメリットとなりやすいです。
というかアメリカくんだりまで来てまで家事を押し付けられている共働き研究者の奥様がた、あなたは離婚を考えた方がいい笑。
さらに子育てについてですが、留学するくらいの年齢の場合、お子さんは7−8歳以下のケースが多いと思います。
日本では、小学生なら自分一人で登下校したり、友達と遊びに出かけたりすると思いますが、米国ではそうはいきません。州によっても違うかもしれませんが小学4年生以下は必ず親と一緒でなければ外出できません。また子供を家で一人きりにすることも出来ません。
そして学校は普通8時半から3時です。その後アフタースクールといういわゆる学童保育を利用しても、6時までの保育が限界です。ということで、子供の学校への送り迎えを考えると働く時間はどうしても9-5時になります。
以前のこの記事(NIH式?研究者分類)で紹介しましたが、米国でも”The Parent”と揶揄されるくらいです。
ポジティブに捉えると、かなり健康的な生活になりますが、日本で9時−9時で働いていた方からすると、「こんなに働かなくて大丈夫かなぁ」と不安になります。
ここで冒頭の答えですが、いわば我々は毎日アンビリカルケーブルの外れたエヴァ状態で戦っているのです!!お昼ご飯時には「活動限界まで、あと4時間!!」とか毎日やってる訳です。「ウオオオオオオオオ!!」
ウルトラマンの方が分かりやすいですか?
ウルトラマンの例えで言うならば、スペシウム光線を打たない(予定していた実験が完遂しない)で帰ることもままあるのです!
また逆に焦った結果、雑にスペシウム光線を打って怪獣を倒せない(実験の失敗)こともよくあります!!
そんなウルトラマンいますか笑!?
この「毎日ケツが決まってる」ストレスは、単身や、共働きでも子なしの方々にはなかなか理解しにくいと思います。
もちろん片方が朝早く仕事に行く代わりに早く帰ってきて(たとえば午前6時から午後5時)、もう片方が朝子供を学校に連れて行って夜は好きなだけ実験(例えば午前9時から午後10時)ということも可能です。
ですがその場合、後者の「夜好きなだけラボに行く方が有利すぎ問題」が出てきます!!朝ラボに行く方は、夕飯の準備から子供の寝かしつけまでしないといけないですからね。
また子供が複数いて、別々の学校や保育園に通うこともあるので、なかなかそうは問屋が卸しません。
ですので筆者夫婦の場合、どちらかが長くかかる実験がない場合は、お互い9−5時程度のラボ滞在時間にとどめています。当然家事等も平等になってきます。
朝は筆者より早くきて、夜は筆者より遅くいる単身、もしくは「奥様は主婦型」研究者が周りにいるとめちゃくちゃ焦ります。
9時-5時労働でも実験だけならこなせますが、結果の考察や、プロジェクトの方針決め、論文を読むのが難しくなるんですよ。5時で家に帰ってからがむしろ本番(家事と子供の世話)みたいなところがありますしね。「研究は余暇から生まれた」というのを日々実感します。
幸か不幸か筆者のラボは緩めですので、筆者の現在の働き方は許されていますが、別の研究室では筆者の様な働き方ではボスからのプレッシャーがきついかもしれません。ボスが厳しい場合はボスとの関係性も悪くなり、最悪クビになる可能性すらあります。
また基本が9時−5時労働に加えて、子供が熱を出したり、病気になったりしたらその日実験が少ない方が迎えに行きます。またアメリカでは、学校のような公立機関は休みだけど、仕事は普通にある祝日(フローティングホリデー)がままあります。こんな時は、バックアップケアを頼むか、夫婦で半日ずつ交代で子供を見ないといけません。
更にはセメスターや夏休みごとに、毎回放課後教育やサマーキャンプをセットアップし直さないといけなく、それによって強制的に自分の働ける時間が各セメスターごとに変わります。今年のサマーキャンプは5時お迎えだったので、4時過ぎにはラボを出ないといけませんでした。
「ウオオオオオオオオ!!」
筆者はボスとの関係は現在良好ですので、「まあ夫婦でゆっくり研究をして、単身でバリバリ働いている研究者の1.5倍程度の期間で同じ業績を出せればいいや」と考えることにしています。というかそう言い聞かせています。
しかし留学が長引くことのデメリットとして、自分の研究がどれくらいの雑誌にまとまるかの不安が募っていくことが挙げられます。
6−7年以上かけた研究が、自分はいい雑誌に引っかかると信じていても、やはり審査は水物なので、IF7−8程度で終わる可能性も全然あるわけです。その場合、日本にどう帰ったらいいのか?などの不安が年々積み重なっていきます。
ちなみに知り合いのある中国人研究者は9−5時の後に、子供を寝かせたらまたラボに行く強者(男性)もいました。んーそれは真似出来ない。中国人はつえぇや。
中国人研究者について語った記事はこちら。
これも夫婦による所が大きいのはもちろんですが、中国や台湾は、日本より男尊女卑が残ってて、アメリカに来たから男女平等という感じでもない気がします(あくまで感想)。要は男性研究者は好きなだけ研究に時間を費やして、女性研究者は家事をしながらというケースが多いように感じます。それで男性研究者がPIや教授になったら家族としてもハッピーだと思うので、難しい話です。
というかアメリカに来てほぼ完全に男女平等になった筆者夫婦が特別な気もしてきました。
女性研究者の方は是非この記事を旦那に見せて、男女平等を謳いましょう!!究極「9−5時でCNS取れないなら研究の才能ないってことや」と言ってやって下さい。恐らく三行半を豪速球で叩きつけられることでしょう。
こちらの記事で語りましたが、日本より米国の方が、コアファシリティなどのシステムが発達してるので存分に利用しましょう。ここら辺をフル活用すれば、9-5時からのCNSも夢じゃないかもしれません。
共働き研究者のデメリット
上でも十分述べたと思いますが、子供関連のデメリットがまだあると考えます。共働きの場合は、子供を平日に習い事に連れて行ける余裕がありません。毎日決まったアフタースクール(放課後教育)に連れて行きざるを得ないのです。
以前の記事でも述べましたが、お金があればナニーを雇って勉強を教えてもらったり、毎日違う習い事に連れて行けますが、ポスドクの給料ではなかなかできません。ですので、日本的な言い方をするなら児童館に子供を毎日突っ込む事になります。もちろん児童館も悪くはないのですが、基本的には遊んでいるだけなので、周りの、色々習い事をしてる子供を見ると「子供が犠牲になってるなぁ」とたまに罪悪感を感じます。
共働き研究者のメリット
夫婦共々にあるメリットは研究に関して意見交換ができることです。研究内容にとどまらず、申請書を見せ合ったり、お互いの研究室で調達してきた申請書のコツや、研究費のことなど情報を共有することができます。
共働き研究者は2つに分けられる!!
そしてここでいきなりですが、共働き研究者をざっくり2種類に分けたいと思います。ズバリ夫婦で同じ研究領域、もしくはラボで働いているか、もしくは全く関係ない研究分野で働いているかです。
ちなみに筆者は後者ですが、この2種類でかなり違うと感じます。
夫婦が同じ研究分野、ましてや同じラボの場合は、大きなメリットがあります。お互いの研究を協力できるという所です。なんなら二人で一つの論文でもいいわけですからね。これは個人的にいいなぁと強く思う点です。
それに比べて筆者のような夫婦で別の研究領域の場合、別に共同研究の可能性もほぼないので、上でも説明した通り申請書を見せ合うくらいのメリットしかありません。
筆者の知る限りでも同じ研究分野の夫婦がそれぞれ教授やPIになっているケースは何例(例えば慶應と東大の某先生とか)か知っていますが、別の分野でそれぞれ教授になっているケースは知りません。
これが共働き研究者の1番のメリット!!
そしてこれが一番のメリットと考える、というかメリットだと信じていることです。
研究者ならみなさん、若手ならPIを目指されていると思います。共働きしていれば、なんと皆さん、刮目(耳?)して聞いて下さい。なんと2枚のPI 宝くじを持っていることになります!!
これは大きなメリットと言っていいでしょう。というかそう信じて、お互い全力で研究にあたれない現状に悶々としながら研究に付き合っていくしかないのが現状です。
バリバリに働いている人が、PIになる確率を10%とすると、共働き研究者のどちらかPIになる確率は12%ほどでしょうか?一人当たりは6%まで下がります(確率的にその計算は違うぞのツッコミは無しで、例えなので)。もっと下がるかもしれません。まあ結局この業界は運ゲー要素もあるのでね。片方がPIになったら儲けもんの精神で身を委ねましょう。
知り合いの先輩夫婦が「夫婦は戦友」と言っていましたが、本当にその通りだと感じます。
まっ、我が家は共倒れまっしぐらなんですけどね!!
真面目な話をすると、米国で若くからキャリアを形成している方は、ある程度いい論文を出してから子供を作るケースが多いように感じます。単身や子なし時代に、バリバリ働いていい論文を出すことは女性、男性どちらにとっても大事かと思われます。筆者はすでに手遅れですが、まだ学生の皆さんは頑張ってください!
寝食を忘れて研究をすることが偉いみたいな風潮がありますが、筆者は全くそうは思いません。それをやりたくても出来ない研究者は沢山いるし、それが出来ている方々はその研究環境、配偶者に感謝すべきことなんですよ。それが分かるのは、それが出来なくなってからなのが世の常ですね。
やる気が出ない時はこの詩がおすすめです!!
子連れ研究者の意外なメリット
最後に共働き、というか子連れ研究者のメリットも一点語っておきます。
分かると思いますが、筆者はコミュ障です。ですがまあまあ知り合いはいます。なんでだと思いますか?
子供が友達を作れば、その親と知り合いになれるからです(断言)!!というか同じ学校に通ってれば嫌でも知り合いになります。
ですので、筆者は研究者の知り合いは勿論のこと、研究者以外の知り合いもそれなりにいて話を聞くことが出来ます。そして筆者のnoteのネタになっていくわけです。まあ子供の友達の親であって、筆者の友達ではないんですけどね泣。
後書き
いかがでしたでしょうか?
共働きにも色々なスタイルがあると思いますが、どこかが皆様の一助となったり「あるある」と共感していただければと思います。半分くらいは筆者の愚痴ですね。
そんな愚痴愚痴ぬかすなら独身に戻ればいいじゃんと思ったあなた、夫婦でこのタフな世界を一緒に戦うのもまた一興ですよ。
良き戦友を見つけた筆者は幸せ者だと言えるでしょう。当然子供のことを後悔した事もありませんし、別の世界線は考えられません。
You complete meです!
これで仕事さえ上手くいけば本当にハッピーなんだけどなぁ。。。。
さて、次回は筆者なりに女性研究者について語っていきたいと思います。筆者レベルの知名度では炎上はないと思いますが、まあまあ毒強めなので、お楽しみに!!
この記事に出てきたリンクと関連記事まとめ
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。本記事で出てきたリンクと関連記事を下にまとめましたので、興味がありましたらクリックいただければと思います。