マガジンのカバー画像

俳句のいさらゐ

58
松尾芭蕉の俳句が、上質のエピグラム(寸鉄詩)であることを探ります。
運営しているクリエイター

#曽良

俳句のいさらゐ ✣☼✣ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十七。「暫時 (しばらく) は滝に籠…

この俳句の源には、李白の著名な次の漢詩があるように感じたが、連想しやすいことなので、これ…

瀬戸風 凪
1か月前
5

俳句のいさらゐ 巛⏅巛 芭蕉が『奥の細道』に載せなかった旅中吟③「小鯛さす柳涼しや…

この俳句も「曽良書留」に載り、『奥の細道』でははずされた。何処で詠んだ吟なのか、場所は特…

瀬戸風 凪
1か月前
8

俳句のいさらゐ ◧:◧ 芭蕉が『奥の細道』に載せなかった旅中吟②「入あひのかねもき…

「曽良書留」にあり、『奥の細道』の前半部、室の八島を過ぎたあたりでの旅中吟とみなされてい…

瀬戸風 凪
1か月前
8

俳句のいさらゐ ∵▧∵ 芭蕉が『奥の細道』に載せなかった旅中吟①「秣 (まぐさ) 負ふ…

芭蕉が『奥の細道』行脚の中で詠んでいながら、『奥の細道』には載せなかった俳句がいくつもあ…

瀬戸風 凪
1か月前
9

俳句のいさらゐ ∴★∴ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十六。「卯の花をかざしに関の晴着…

「卯の花をかざしに関の晴着かな」 この俳句で先ず思うのは、曽良自身がそうしているのではな…

瀬戸風 凪
1か月前
10

俳句のいさらゐ ◈✇◈ 松尾芭蕉『奥の細道』その二十六。「蛤のふたみにわかれ行秋ぞ…

「蛤のふたみにわかれ行秋ぞ」をもって、『奥の細道』は閉じられる。先ずはこの俳句の技巧を見…

瀬戸風 凪
4か月前
10

俳句のいさらゐ ∮⦿∮ 松尾芭蕉『奥の細道』その二十二。「松島や鶴に身をかれほととぎす」(曽良)

この俳句の「ほととぎす」の受け止め方には、異なる次の解釈が出来る。 一。 聞き止めたその声の美しさに旅の愁いを慰められて、松島の広さに行き渉るように、鶴と化して舞い、その声を大景に響かせてくれないものだろうか、という気持ちを詠んだ。土地褒めの意味合いが強い。 二。 「ほととぎす」に、不如帰の当て字を暗に連想させていて、〈帰るに如かず(帰りたい)〉という気持ち — つまり心弱り ( 里心 ) に、一瞬包まれたことをその字にしのばせた。 しかし、まだ旅は続くのだから、そんな心

俳句のいさらゐ ◬∬◬ 松尾芭蕉『奥の細道』その二〇。「あつみ山や吹浦かけて夕すゞ…

「あつみ山」は、漢字表記では温海山。わかった上でひらがな表記にしているはずだ。その理由は…

瀬戸風 凪
5か月前
6

俳句のいさらゐ ◬👁◬ 松尾芭蕉『奥の細道』その十六。「涼しさを我宿にしてねまる也…

今回は、尾花沢での芭蕉と曽良の俳句を解釈する。 先ず、芭蕉の最初の俳句「涼しさを我宿にし…

瀬戸風 凪
5か月前
7

俳句のいさらゐ ■⇋■ 松尾芭蕉『奥の細道』その十五。「行ゝ(ゆきゆき)て たふれ伏…

この曽良の俳句で、おやと目に止まるのは、「萩の原」である。なぜ、倒れ伏すことがあろうとも…

瀬戸風 凪
5か月前
7

俳句のいさらゐ ◉↹◉ 松尾芭蕉『奥の細道』その十四。「波こえぬ契ありてやみさごの…

曽良のこの俳句を、『奥の細道』象潟の段の掉尾に置いた意味を考えていて、第一句である芭蕉の…

瀬戸風 凪
5か月前
6

俳句のいさらゐ ❍✡❍ 松尾芭蕉『奥の細道』その十三。「あかゝと日は難面もあきの…

🟡 あえて同じ季語の句を同じ段に並べた◈ あかゝと日は難面(つれなく)もあきの風  芭蕉  …

瀬戸風 凪
7か月前
9

俳句のいさらゐ ▰⋄▰ 松尾芭蕉『奥の細道』その八。「庭掃て出でばや寺に散柳」

🌀 曽良との別離の情が句の裏にある『奥の細道』の芭蕉の句は、おそらく自然詠の句の方が取り…

瀬戸風 凪
9か月前
6

俳句のいさらゐ ◍⦿◍ 松尾芭蕉『笈の小文』より。「若葉して御目の雫ぬぐはばや」

松尾芭蕉の生み出す小宇宙を味わうシリーズ。 標題の「いさらゐ」はちいさな泉のこと。にじみ出て来る思いを、そんな古語に喩えてみた。 1688年(貞享5年)4月8日に、芭蕉が奈良の唐招提寺を訪れ、鑑真和上の像を見て詠んだ句である。 鑑真和上像に、芭蕉は頬を伝う雫を見た。この句から、私は三好達治の「涙」という詩を思い出す。下に示す。 達治は、幼い子が悲しみにいっしんに向き合っている姿に、累々と重ねられてきた万物の生き死にの果てに、われとわが子が今、ここに存在していることを思い、