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俳句のいさらゐ

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松尾芭蕉の俳句が、上質のエピグラム(寸鉄詩)であることを探ります。
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俳句のいさらゐ ⪦⁜⪧ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十九。「秋涼し手毎にむけや瓜茄子…

芭蕉が金沢で詠んだ俳句を取り上げる。 ① 塚も動け我泣声は秋の風 この俳句は、芭蕉の金沢の…

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俳句のいさらゐ ◈∥◈ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十八。「文月や六日も常の夜には似…

上の文は「文月や六日も常の夜には似ず」の前文である。 この俳句にとってこの前文は何の意味…

瀬戸風 凪
3週間前
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俳句のいさらゐ ✣☼✣ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十七。「暫時 (しばらく) は滝に籠…

この俳句の源には、李白の著名な次の漢詩があるように感じたが、連想しやすいことなので、これ…

瀬戸風 凪
1か月前
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俳句のいさらゐ 巛⏅巛 芭蕉が『奥の細道』に載せなかった旅中吟③「小鯛さす柳涼しや…

この俳句も「曽良書留」に載り、『奥の細道』でははずされた。何処で詠んだ吟なのか、場所は特…

瀬戸風 凪
1か月前
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俳句のいさらゐ ◧:◧ 芭蕉が『奥の細道』に載せなかった旅中吟②「入あひのかねもき…

「曽良書留」にあり、『奥の細道』の前半部、室の八島を過ぎたあたりでの旅中吟とみなされてい…

瀬戸風 凪
1か月前
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俳句のいさらゐ ∵▧∵ 芭蕉が『奥の細道』に載せなかった旅中吟①「秣 (まぐさ) 負ふ…

芭蕉が『奥の細道』行脚の中で詠んでいながら、『奥の細道』には載せなかった俳句がいくつもあ…

瀬戸風 凪
1か月前
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俳句のいさらゐ ∴★∴ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十六。「卯の花をかざしに関の晴着かな」(曽良)「卯の花に兼房見ゆる白毛かな」(曽良)

「卯の花をかざしに関の晴着かな」 この俳句で先ず思うのは、曽良自身がそうしているのではなく、芭蕉の様子を見て詠んだのではないかということだ。その理由を述べる。 これより前の日光で、曽良は 「剃捨て黒髪山に衣更」 と詠んでいる。つまり、『奥の細道』の曽良は僧形で、墨染の法衣をまとっているわけだ。剃り捨てているのだから、頭髪もない。 卯の花を折り取って頭にかざせば、墨染めの法衣も晴着になる、と曽良が自分の姿を写したと解釈すれば、自己を戯画化しているような諧謔味が先に立ってくる。

俳句のいさらゐ ‹‹›◌‹‹› 松尾芭蕉『奥の細道』その三十五。「五月雨をあつめて…

この俳句からは、大きな自然の中に、自分は包容されていると畏敬する芭蕉の思いが浮かび上がっ…

瀬戸風 凪
1か月前
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俳句のいさらゐ *◻* 松尾芭蕉『奥の細道』その三十四。「草の戸も住替る代ぞひなの…

                                   上の和歌では、すむ…

瀬戸風 凪
2か月前
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俳句のいさらゐ ⚙⋄⚙ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十三。「行春や鳥啼 (とりなき) 魚…

鳥が啼き魚も涙を浮かべているのは、何に対してそうなのかと問えば、行く春に、ということにな…

瀬戸風 凪
3か月前
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俳句のいさらゐ ◪☆◩ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十二。「田一枚植て立ち去る柳かな…

この俳句の要点は、ひとことで言えば余情である。次に向けて歩み始め、振り返った一瞬の名残り…

瀬戸風 凪
3か月前
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俳句のいさらゐ ◎✴◎ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十一。「木啄も庵はやぶらず夏木立…

啄木鳥 ( きつつき ) は、あたかも門を敲 ( たた ) くようだ、という比喩は、漢詩では好まれて…

瀬戸風 凪
3か月前
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俳句のいさらゐ ∞✭∞ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十。「早苗とる手もとや昔しのぶ摺…

先ず、前文の「さもあるべき事にや」に注目しよう。 文字摺り石があるばかりに、それを見に来…

瀬戸風 凪
3か月前
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俳句のいさらゐ ☮♓☮ 松尾芭蕉『奥の細道』その二十九。「月清し遊行の持てる砂の上」

この俳句で最もクローズアップされているのは何か、という問いを投げかければ、見方によりいくつか上がって来るはずだ。  ■1.月( 月光 )そのもの  ■2.   砂を運ぶ遊行の姿  ■3.砂そのもの どれが正解でどれが間違いということはない。全てが渾然として一句を成している。最大公約と言えるものをあえて示せば、上空の月、あるいは盛られた砂に照っている地上の月光、とは言えるだろうが‥‥。 では、私の考えは‥‥。 この俳句の詠まれた気比神宮が鎮座する敦賀は、白砂青松の風景を代表す