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俳句のいさらゐ ∴★∴ 松尾芭蕉『奥の細道』その三十六。「卯の花をかざしに関の晴着かな」(曽良)「卯の花に兼房見ゆる白毛かな」(曽良)
「卯の花をかざしに関の晴着かな」 この俳句で先ず思うのは、曽良自身がそうしているのではなく、芭蕉の様子を見て詠んだのではないかということだ。その理由を述べる。 これより前の日光で、曽良は 「剃捨て黒髪山に衣更」 と詠んでいる。つまり、『奥の細道』の曽良は僧形で、墨染の法衣をまとっているわけだ。剃り捨てているのだから、頭髪もない。 卯の花を折り取って頭にかざせば、墨染めの法衣も晴着になる、と曽良が自分の姿を写したと解釈すれば、自己を戯画化しているような諧謔味が先に立ってくる。