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【短編小説】六本木の個展

土曜日。高校生のときの友人が六本木で個展を開いたのでお祝いに行ってきた。おれは考えもなしに手ぶらだった。高校時代の仲間たちと六本木一丁目駅で待ち合わせた。みんな、なにかしらのプレゼントを持ってきていた。

「さすがに手ぶらはまずいっしょ」

仲間たちに、半ば叱られるように、半ば促されるように、おれは付近の花屋に行って8000円分の花束をつくってもらった。

「8000円? 高くない?」

とおれは抗議した。花束なんてつくってもらったことのない来し方だったから、相場がわからない。

「これくらいのものを渡さなければ大人として恥ずかしい」

と反論されて、おれは黙って言われた通りの額を払った。

「だいたいあいつに花の良し悪しがわかるかね」

花の香りを嗅ぎながら言うと、仲間のひとり(麻倉)が無言でおれの肩を、わりと本気で叩いてきたので、おれはもうそれ以上口答えしないことにした。


麻倉が叩いた、おれの右肩が、じんと熱くなっている、その部分だけ血液が盛んに流れているみたいだった。


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