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山形で 心を揺らす②
「せっかくだから、日本海の幸も食べたいよね」
2泊目は、ネットでササッと予約。日本海沿いには、古くからの温泉地が並ぶようにある。夏は海水浴客の家族連れで、賑わうのだろう。
☆ 湯野浜温泉
◎ 亀屋旅館
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平日だったから?昔からの老スタッフのみ。何だか動くのしんどそう。
「お客さん、部屋まで(勝手に)行けますか?」
そんな中、大声でお喋りな仲居さん(年は変わらなそう)が1人でキビキビ働く。やっぱり女って強い?
「のぅ、ほでのぅ、…しったらのぅ…でばのぅ、はでのぅ。ギャハハ」
山形に来て、方言を話す人に出会わなかったんですが、この仲居さんの、「のぅ」ばかりがやたら散りばめられた 難解な山形弁の、機関銃のような喋りに圧倒される。
夫「あれも、ここのサービスなんだよ。若い人が使わなくなった山形弁をこれでもか!てんこ盛りに聞かせて、ああ遠くまで来たなぁ って思わせる」
えっ、あはは、そうかな?
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「歴史上の誰かなんですか?」
「いえ、亀屋の3代目です」
(爆笑)
※ ちなみに今は7代目
◯ 飲める温泉と ヌルヌル朝食
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飲める温泉水をいただく。
塩分がある生温い湯?
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塩納豆・岩海苔・なめ茸・明太子
山芋・温泉玉子・青さの味噌汁
うわっ!
今の若者にはどうだろう?ヘルシーで私達には美味しいが、難易度の高い和朝食。後ろのテーブルを見ると、アメリカ人の60代の夫婦がいるではないか。なぜ、こんな所に?さすがにこのラインナップは、食べられるものある?つい心配してたら、そのあと2人にロビーでバッタリ出会う。
私「朝食、あれ食べられた?日本人でも苦手な人も多い食材。外国人にさすがにこれは?心配しちゃった」
🇺🇸夫「大丈夫。僕は半年前から山形市内の中学で英語を教えてるんだ」
🇺🇸妻「私達はアメリカでもド田舎のケンタッキー州に住んでるから、どこへ行っても もうビックリばかりなのよ」
私「普通のアメリカ人じゃ、生やあのネバネバはたじろぐわよ。想像も出来ない冒険家体験ね。ディープな日本のワイルドライフうんと楽しんで」
ケラケラ笑った。あの年で、山形の奥まで?一括りに出来ない、アメリカ人夫婦のたくましさに、驚いた。
☆ 酒田市
◎ 土門拳記念館
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建築・谷口吉生
友人の谷口吉郎の息子が手がけた
この旅の1番の目的はここだった。
写真家の才能と その激動の半生を、多くの同志が讃え協力し、生まれ故郷の酒田市が開館させた。最後の11年間、脳梗塞で目覚めることがなかった写真家・土門拳(1909-1990)への 温かい友情と静かなる喝采、胸が熱くなる記念館だ。
彼の写真は水底にたまる泥や、暗いトンネルの奥の闇まで撮る、その前のめりな気迫と 嘘を決して許さない真剣さが、観る者を無意識に吸い込む力強さがある。
東京の学校を出て、憧れていた写真家の下で仕事をさせてもらうようになったのに、湧き上がる才能に嫉妬した師が、土門の作品を次々と自分の名で発表するようになる。師が渡航中(留守の間)自身の作品をアメリカに送り、それがタイムズの表紙を飾り、日本の写真界に激震が走る。激高した師から土門は破門され、その溝は生涯埋まらなかった。
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数回目の脳梗塞で車椅子生活になった時も、凍てつく雪に 暗い夜明けに、長い危なげな石階段を弟子達が師である土門を車椅子ごと(重い機材も)担ぎ上げる。土門は山奥の御仏の姿にその目を輝かせ、麻痺のない方の指でシャッターを切った。土門拳を尊敬する弟子達が 体を張って師の仕事に同行した。まさに血肉を削って長年撮り続けた、写真集「古寺巡礼」必見である。
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(グラフィックデザイナー)
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静かに眺める
◯ 造園設計 勅使河原宏
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思わず 息を呑んだ。
土門拳を愛する人が作った庭だ。
「勅使河原宏と谷口吉生よ、
見えますか?私の万感の
スタンディングオーベーションが」
仕事に熱中し、毎晩呆れるほど遅く帰宅する土門拳。可愛い6歳の次女が夏、トンボを採りに行って病院(現・聖路加)の用水路に落ちて亡くなる。その日も遅く帰り、焦燥する妻に大声でなじられた。茫然自失、何も手につかず朝に夕に、気づけば用水路に立っている日々が続いたと言う。
骨壷の 子もきけ虫が 鳴いている
夜中に起きて詠んだ 土門の句。
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流れる沢の中に スクッと立つ
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なだらかに階段を下りる
水の流れは、世の常なのか
最後の11年はあまりに長く、もう見舞う人さえなく、彼の名を口に出す事も憚れ、いつしか彼の生死にさえ関心を失いかけていた。懇々と眠り続けた長い年月、土門拳の目は一体何を見ていたのだろう。その死の知らせに皆は一瞬宙を仰ぎ、頷いた。
皆さま、ぜひぜひ
☆ 山形自動車道へ
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幻の絵みたい
こちらの道は冬、豪雪でにっちもさっちも行かなかっただろう山が続き、長いトンネルだらけの高速を進む。時折、目の前に(溶けそびれた?)誰にも気づかれず、踏み入れないままの 色褪せた雪景色が出現したりして
「自然て すごい」驚く。
◎ 寒河江SA
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ウルイと おかひじきも購入
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芭蕉最中
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赤くて可愛いからお土産に
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☆ 天童
◎ 天童木工
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ここが本社か
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山形のこんな田舎の木工会社なのに、確かな技術は有名だったのだろうか。戦時中はひっ迫した国内の鉄不足から、ダミーの弾薬庫やゼロ戦を依頼され、木で本物そっくりに作らされてたと聞いて、ビックリ。
追い込まれてたよな、日本。
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「どうぞ見て触ってください」
すごい自信
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◎ さくらんぼ
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前に咲く白い花は 完全に脇役
誰も見ない?こんなに可憐なのに
果樹園も他のカフェも、さくらんぼシーズン以外は全部閉まってる。
6月後半から1カ月、さくらんぼのシーズン中だけで1年分稼ぐって、合理的な農業生活のような気もするが、そんな甘くないのかしら。
シーズン中は観光バスで街は大変な賑わい。東京からの道はかなり整備されているが、仙台方面からの道はかなり渋滞するらしい。
☆ 天童駅
眉間にシワ、右の拳を胸に
♫ 吹ぅ〜け〜ばぁ、飛ぶような〜将棋のぉ駒よ〜🎶
つい一節やりたくなる(年がわかっちゃう?)ここ、天童。
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ん〜わかりやすい
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◎ 山形県立美術館
○ 高橋龍太郎コレクション展
精神科医で、現代アートの屈指のコレクター。その目は確か。地味な美術館に、明るい逸品が並ぶ。
華雪の書を描く時の、尋常じゃないどうかしてる動きのムービーに夫婦で釘付け!ヒーッ絶句。
「だ、大丈夫か?」
「ありえない〜」
でも作品は見事。素晴らしかった〜
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◎ 隣に 山形城跡
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「まだかまだか」 カメラ小僧が
橋の上に いっぱい
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歯の詰まりを想像した石垣
◎ 山田家「白露ふうき豆」
山形駅近く この本店でしか買えない名物。全国にファンが多く、取り寄せ出来る。無添加なので、賞味期限が3日(冷凍可能)時間と共に風味が落ちると言うのもわかる。
「こうやって作るんだ」
店内で職人さんが、ザクザクと豆を煎っていた。
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◎ 庄司や
人気の蕎麦屋、運良く入れた。
「うわっ、お腹減った〜」
天ぷらがめっちゃ美味い。
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気分は ぐんぐん上々
あいもり天蕎麦
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思ってた以上に 心にガツンと来た、味わい深い山形の旅。
楽しかった〜
山形駅 19時28分 発
東京駅 22時30分着