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涙シール(切なげ創作)

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記事一覧

【創作】 透けたフレアスカート

【創作】 透けたフレアスカート

あまりにも泣きそうで、僕は思わず海に潜った

海の中の魚達に挨拶がしたくて水中で目を開けたけど、
塩水が目に染みて涙が出てきた

この涙は、自分が悲しいという涙じゃない
海が海であると言う事実を、ただ単に受け止めただけ

海は広い。消えたくなる人の気持ちも分かる

けど、僕はどこか海のことが嫌いで、
どこかこの海のことが好きだった

小学生の頃に毎年行っていたどこまでも広い水
お父さんが車中でかけ

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【創作】 つみき

【創作】 つみき

思い出すのは木製の感覚

口に入れると喉が渇く

こらこら、口に入れたらだめでしょ

小さなつみきでお城を作った

小さなつみきで希望を作った

小さなつみきで何を作った

私はOLをしている

毎日会社ではパソコンに向かって事務作業をし、
履きたくもないタイトスカートは私に女としての義務を押し付けているようだった

本当は、パンクゴシックスタイルがしたいのに

憧れのAKITO様のようなパンクゴ

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【創作】 日記帳

【創作】 日記帳

体力測定でいつもビリだった僕は、頼むでと言われたクラスの周りの重圧で何故か本番では速く走れて大好きな揚げパンをクラス全員からもらい、この世は実力社会なんだと思った。それが小学生2年生の頃の夏

親はアイスクリームは毒だと親の親から変な考えを迷惑に受け継いできたらしく、こんなに暑いのに僕は氷を齧るしかない。甘いとろりとしたのが舌の上でくつろいでいて欲しいのに

僕は、受験勉強だと言って2階の自分の部

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【創作】 ヒーロー

【創作】 ヒーロー

他者よりも自分の方が優れていると思うから生きていけるんでしょ?じゃあ、貴方が生きているという事は、
私よりも自分が優れていると、思っているということでしょ?

給食が美味しかった話をしようとしたけど、
リコーダーを突き刺した5年間で使用感の出てきた赤いランドセルを背負ったまま、立ち尽くす私

お母さんが言うことは毎度難しくて、
国語の教科書よりも作者が何を考えているのか分からなかった。私は貴方から

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【創作】 天使が2人

私は罪を犯しました

私は、欲を覚えました

私は、寂しさを覚えました

私は、私は、生きているのに
死にたいと浮かぶ日があるのです

心配ねえ…毎晩あんな様子で夜空に向かって手を合わせて願っているわよあの子…古本屋で買ってきた聖書ばかり読んでさあ……正直気味が悪いわ

お前がお金を渡すからだろ

自分の罪を数え、それを売ってお金にする、
なんて言いだすのよ?

無理やりにでも働かせてみたらどうだ

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【創作】 かつらぎさん

「君は、きみでいれることがすごいんだ!」

教科書をパラパラとめくるとそんな文章ばかりが並んでいて、毎日晩飯として出されるカップヌードルと同じくらい飽きたなと思った

ランドセルは赤色が当たり前で。

てか何で2回目の君はひらがななんだとも思った

印刷ミスだろ。だれも指摘しないけど

カップヌードルのことは嫌いじゃないけど、
カップヌードルは多分私のことが嫌いだと思う

食べ方が汚いから

家に

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【創作】 おいしいごはん

酪農家の親父は、僕をぶった
でも僕は親父のことが大好きだったから、
初恋の牛「ぶたこ」を親父が殺したことなんて忘れようと思った

僕は学校でいじめを受けている
でも、笑顔で麻薬の話をする担任の男性教師
河辺先生の事が早朝に聞こえてくる子鳥のさえずりよりも好きだったけど、好きじゃないといけないけど、
先生が庇ってくれない分、僕は色んなものを失った

髪の毛とか、左の方の奥歯とか

転校生が来ているみ

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【創作】 あくむ

【創作】 あくむ

「がぎぐげごってさ、なんでがぎぐげごなの?」

小さないぬが聞いてきた。

僕の名前はかきくけこだから、そんなの分からなかったし、何故か泣きそうだったからうるさいなあと思った
腕をガジガジしてきたから、いぬの歯なんてなくなっちゃえ!なんてその時は思った

僕はいぬがだいすきでいぬを飼ったけど、
いざ飼うとなったら大変で。

ミントグリーンの瞳から涙が溢れて止まらない僕を
いぬは舐めてくれた。

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【創作】 海サークル

「誰がピンク色のルージュを塗らなきゃいけないだなんてルールを決めたんだ!」

僕は慣れた手つきで小さな入れ物から鮮やかなリップを小指に取り出し、少し指紋の付いた鏡を見ながらそれを唇に塗った

行ってきますと一人暮らしの部屋に挨拶だけして出ていく。大きな黒いリュックは自分が大学生だと証明する許可証みたいで、リュックに顔があったら照れていたに違いないと思う自分の顔も鉄火巻柄のマスクで熱い。

天然パー

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【創作】 なつこさん

【創作】 なつこさん

なつこさんは何も出来なかった。

なつこさんは、アルバイトの面接を受けても、
ちからこぶを作ろうと筋トレに通っても。

なにも出来なくて、
親にぶたれたけど。

でも、

なにもできないのが自分だとわかって。

自分の書いたイラストをネットで売って、
お白湯をすすりながらも
コーンポタージュを啜ったと呟いたら
アンチコメントが来て。

そのアンチコメントでさえ、
不思議宇宙人とあだ名を付けて
怒り

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【創作】 逆光

【創作】 逆光

産まれた時から死ぬ事に気づいていた

そういって、焼き芋を頬張り喉に詰まらせて死んだ
それが私の父だった

目の裏に上映される父の映像は、
青色で、水色で、いつも私は下から父を見上げている
逆光模様

私はもう、次で大学生になる
なにもない日常

喫茶店に行って、喫茶店の空気を吸い、
喫茶店で流れるジャズに一礼し、
会計を2倍盛った定員を殴った

特にこれといって何もやりたい事がなくて、
やりたい

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