【ほぼ毎日エッセイ】雨だからなんて言わないで

【2019/06/17】
「雨の日だから」と言って外に出てはいけないなんてことはない。
そんな土曜日の話をする。

金曜日の夜に、止めどなくハッチャケブッチャケをしてしまった私は土曜日の朝を気持ちよく始めるわけにはいかなかった。
顔を洗いに鏡の前に立つとノンノンプロブレムな状態とは正反対に若干の頭痛と久しぶりに吸い過ぎたタバコのせいでトキメク力も何もかも失った中年マックスハートまっしぐらな青年が写っている。
とりあえず口をゆすぎ、歯ブラシを突っ込んで、youtubeを見ながらシャカシャカと口の中を磨いた。
思えば風呂も入らず寝ていたことに歯を磨きながら気がつき、何もなかったかのように口の中をスッキリさせてくれる歯磨き粉を洗い流してから、着ている服を脱いだ。
ねっとりとしている体をお湯で流したら、朝食の準備をする。
米を研ぎ、半冷凍してある魚を冷蔵庫から取り出して、味噌汁の準備をした。
9時過ぎ頃に彼女が起きてきて「おはよー。雨だねー」程度の会話を交わしながら、とりあえず寝床に体を放り投げて、同じ体勢になりながら今日の計画をあれこれ話し始めた。

晴れていれば猿島へ行く予定だった。
願い叶わずしたしたと降り続ける雨を見て「このまま家にこもろうか?」と、つい弱気に投げかけると「とりあえずどっか行こうよ。今日は出かける気持ちでいたし!」なんて返されたところで、ご飯の炊ける音がする。
重すぎる腰と寝違えた首に手を回しながらのっそりと立ち上がり、魚をコンロに入れて、副菜に玉ねぎとウィンナーを炒めた。

朝食を食べながらさっきの話の続きをする。
「行ったことないし池袋の水族館に行きたいなぁ」
なんとなく「せっかくの休みに池袋かよ」とは思ったものの、案外悪くないなと思った。
と同時に自身の池袋を見下すスタンス辟易した。
きっと池袋も「お前が来るのかよ」と思ったに違いない。
食べ終えた食器をおかってにさげ、リビングに戻る時に見えた窓の外は、私を拒む池袋の気持ちのように強く雨が降っていた。

池袋に向かったのは11時半頃だった。
この雨だから、せめてランチは優雅に食べたいという気持ちに負けて住処の近くにあるレストランでパスタランチをする事に決めて、お店へと急いだ。
季節によってメニューが変わるこのお店のパスタを、ささやかな楽しみにしている我々は早速メニューを見る。
“桜海老と小松菜のペペロンチーノ(仮)”
これだ。
間違いないメニューを見つけてしまった。
少し悩んでいる彼女を待ってから店員さんを呼んで注文をする。
15分ほど待ってきたそれを、写真に納めずにはいられなかった。

見よこの美しさを。
360度どこから見ても「美味しそう」だろ。
そう、美味しいのだ。
とにかく美味しい。
名前からして間違いなく美味しいとわかっていたので並盛の選択肢は瞬時に消えていたが、大盛にして正解だった。
終始ウキウキしながら皿の上のものを平らげ、最後にアイスティーを飲み終えたらいよいよ駅へと向かって電車に乗った。

少し足元を濡らしながら水族館に着くと、それなりに人がいた。
ただ、身動きが取れないほど混んでいるというわけでもなく、「あーだこーだ」言いながら2人で魚を眺めながら途中まで進むと、1番大きい水槽の前に人だかりができていた。
どうやらこれから水中ショーの様なものが開催されるらしい。
ほどなくして係のお姉さんが説明を開始すると、水中にもう1人のお姉さんが現れた。
腰に餌を付けたお姉さんの周りを、無数の魚達が囲む光景は大変に綺麗であやうく泣きそうになってしまう。

雨の日でも外に出てよかったとすごく綺麗なそれを見て心より思った。

「凄い良かったねー」なんて話しながら水族館を出て、少し買い物をした。
2日連続ぐでんぐでんになるとはつゆ知らず、赤羽で0時過ぎまで飲んでしまったのは、雨の日だから楽しいそんな土曜日だったからだろう。
帰り道に「来週はどこへ行こうか」なんて考えられる喜びを感じながら月曜日が幕を下ろす。

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