今更 正せない 逸話 【エッセイ】よもやま子育て話12
息子には今更 正せない 逸話があります
息子の誕生日は遅生まれの4月2日
学年で一番年上です
幼稚園の時一緒だった お母さんの間には
今更正すことのできない逸話が残っています
息子が幼稚園年長になる年に引っ越しをしました
そう遠くはない距離でしたが
学区が変わるため転園しなければならず
仲良しのお友達とも別れることになりました
人付き合いの苦手な私は
同じマンションのママ友以外
新しく幼稚園のママ友はできませんでしたが
引越しをするときに
息子の友達のお母さんがお別れ会を開いてくれました
男の子と女の子のお友達 数人とお母さんが集まって
緊張はしましたが とても楽しい時間を
過ごすことができました
夕方になり いよいよお別れの時間が近づいてきました
「また会えたらいいね」
「むこうの幼稚園に行っても元気でね」
「小学校は一緒になるから忘れないでね」
「また遊びに来てね」
別れを惜しむ言葉に
一層 寂しい気持ちになりました
「ゆうとくん 元気でね」
「そんなに遠くなんだから絶対遊びに来てね」
「おばちゃんのことも忘れんといてね」
そう声をかけられた息子は
神妙な顔をしてうなずいていましたが
耐えられないように
急に外に飛び出していきました
お友達も後に続いて外に駆け出していきます
「やっぱりゆうと君 寂しいんやね」
「ゆうと君 一番お兄ちゃんやから 感受性が豊かなんやわ」
「もう寂しいっていう感情が育っているんやね」
「うちの子は三月生まれやから まだ幼いわ」
子供の頃の一年は 成長の面でも大きな違いが出てきます
学年で一番早く生まれた息子が
悲しくなって外に走り出たことに
お母さんたちは驚いて
「やっぱり一年の違いはおおきいねぇ」
「感受性が豊かやわ」と感心していました
暫くして
目を真っ赤にし 涙を必死にこらえた息子が
家の中に戻ってきました
私のスカートをギューッと握って下を向いています
「ゆうとくーん 泣かんといて」
「おばちゃんまで泣けてくる」
「別れたくないよ」
「絶対 遊びに来てや」
「いつでも 待っているから」
みんな涙をこらえる息子の頭を撫でます
ただただ 涙をこらえてじっと黙っている息子
その姿があまりにも健気で
お母さんたちの涙を誘います
私も 健気な息子の姿に
ウルっとなりそうでしたが
なんか ちょーっと 違和感を覚えたのです
取り敢えずその場の空気を変えてはなるまいと
急いで息子を促し車に乗せました
「絶対 また遊びに来てね」
というお母さんたちに
「今日はありがとうございました」
とお礼を言い車に乗り込みました
バタンと車のドアを閉めたとたん
「痛ってぇー」
と叫ぶ息子に
「今は まだ!」
と息子の方に顔を向け
腹話術師さながら無表情で脅す母
くるっと振り向き
みんなに向かって笑顔を見せる母
母のこの華麗なターンで何かを悟った息子は
黙ってうつむいていました
大人の世界には
なにやら追及してはならないものがあるらしい
触れてはいけない大人の世界だ とでもいうように
黙ってじっと一点を見つめていたのです
腹話術師:「今日は ありがとー」
ママたち:「ゆうとくん わすれんといてねー」
子どもたち:「バイバーイ」
息子 :「、、、(涙目)」
ママたち:「ばいばーい」
腹話術師:「本当に有難う さようなら」
車が走り出しみんなの姿が見えなくなると
「痛ってぇー」
と息子が泣きながら叫びました
「どうしたん?」
「足打ったぁ」
車を停めて息子の足を見ると
膝から下がズリッと剝けています
さっき外に飛び出し友達と走り回っていた息子は
こけて 割れたブロックでズリッと擦りむいたらしいのです
やっぱりなぁ
なんか違和感を覚えたんです
急に外に飛び出して行ったのも
悲しかったからではなく
お母さん方に囲まれ注目される恥ずかしさに耐えられなかったからのようです
目にいっぱい涙をためていた理由にも
納得がいきました
と 納得している場合ではありません
こんなに怪我してかなりの量の出血です
なのに
慌てて車に乗せられ
「今はまだ!」って一喝され
かわいそうな息子( ;∀;)
ただ 「痛いよー」って聞いて欲しかっただけだろうに
ただ 「大丈夫?」って言って欲しかっただけだろうに
「今はまだ!」って
【なによそれー】 って感じよねぇ
ごめんよ息子
あの時 何か違和感を感じたんだけれど
母はそれをやり過ごしてしまいました
涙を浮かべながら別れを惜しんでくれるみんなに
「息子のあの涙目 悲しいからじゃないよ なんかあるでぇ(笑)」
って笑って言えるほど
みんなとまだ仲良しではなかったの( ;∀;)
ごめんね
あの時別れたお友達とも小学校で一緒になり
未だに お友達のお母さんには
「ゆうと君 あの時 悲しくて 目に涙いっぱいためていたよね」
「遅生まれで 一番年上だから 感情も豊かやったよね」
と言われています
幼稚園年中さんにして
大の大人に 涙させた
豊かな感受性の持ち主
そんな逸話
今更 真実は話せないですぅー(;^ω^)
だけど
腹話術師さながらの無表情な一喝で
ただならぬ空気を感じ取るなんて
我が子ながら 凄い(笑)
そういえば
息子が小学5年生の時に
懇談会で
「ゆうと君は僕の堪忍袋の緒が切れる音が
聞こえるようなんです」
と担任の先生に言われたことがあります
「いたずらを始めるのは だいたいゆうと君で
みんなを盛り上げて 引っ掻き回すのに
僕の堪忍袋の緒が切れた瞬間に
シレーッと席に戻っているんです
そして ゆうと君をキッと睨むと
『さーせーん』って感じでへコッと頭を下げて
ニコーっと笑うんですよ
そうされると叱れないんです」
と困った顔で言われました
先生こんな息子でごめんなさい(笑)
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