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書評とは到底呼べない〜本との対話〜

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読んだ本や観た映画の感想を書いていこうと思います。 本の内容ではなく、なるべくなら、その本を読み連想されたことや、その時に感じたことを書いていきたい。
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2018年10月の記事一覧

やさしさの出発点

やさしさの出発点

映画『男はつらいよ』(第15作寅次郎相合い傘)を観ていたら、あるシーンで疑問が出てきた。

マドンナでも誰でもお客さん(今回はリリー)が「とらや」に来ると、おいちゃんがおばちゃんに「ほらほら、お茶、お茶」と言うのである。
このシリーズでは、何度も観るシーンだ。

要するに、お茶を用意するのは、夫(男)ではなく、妻(女)であることが前提となっていて、特に誰も違和感を感じないような世界なのだ。

もち

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「私、つまんないもん」

「私、つまんないもん」

またまた、映画『男はつらいよ』(第15作寅次郎相合い傘)から考えてみよう。
かの有名な「メロン騒動」で、寅さんとリリーは喧嘩をする。
実家とはいえ、居候の身の寅さんのワガママぶりに、リリーは正論をぶつける。バツの悪くなった寅さんは家から出て行ってしまう。

その後、仕事に出かけたリリー。
帰り道、最寄駅に着くと大雨で、傘がない。
そんなところに、大きな傘をさして待っている寅さん。

リリー「

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『すべての男は消耗品である』

『すべての男は消耗品である』

私にとって、本とはなんなのか。

本当に本が好きなのか?

別に好きでなくてもいいのだが、必要なものだと思っているのか?

ここに白状すると、私は高校を卒業するまで、ろくに本なんて読んでこなかった。

それまでは、ほとんどがサッカー。
そして、少々のお勉強。それだけだった。

19の頃、初めてちゃんと本と出合う。

東京藝大に進んでいた絵描きの同級生に勧められたのがきっかけだった。

それは、

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『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』2

『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』2

ここでは、この本と対話して感じたことを書こうと思う(一つ前で優しさについて触れた)。

なぜ、私がこの本に惹かれるかというと、まずは、著者である幡野さんの優しさと、私のそれが符号するように感じられたからだ。

もう一つは、幡野さんの負けん気の強さというか、“暴れん坊”感というか、並々ならぬ反骨心、その気質に惚れたからだ。
素直に、カッコいい、と思った。

ただただ見過ごすのではなく、“いちいち”闘

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『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』

『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』

なんて、優しい本なんだろう。
こういう本がずっとずっと読みたかった。

基本的なことなはずなのに、みんなが忘れてしまっていることが書かれているように思う。
ずっと自分が考えていたことが本に書かれていると、やっぱり感動する。
代弁してくれたって思う。

「相手がうれしくないことは、『うれしいだろう』と思ってもしちゃだめなんだよ。そのお菓子は自分が大好きなものでも、相手は嫌いかもしれないんだ

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