「私、つまんないもん」
またまた、映画『男はつらいよ』(第15作寅次郎相合い傘)から考えてみよう。
かの有名な「メロン騒動」で、寅さんとリリーは喧嘩をする。
実家とはいえ、居候の身の寅さんのワガママぶりに、リリーは正論をぶつける。バツの悪くなった寅さんは家から出て行ってしまう。
その後、仕事に出かけたリリー。
帰り道、最寄駅に着くと大雨で、傘がない。
そんなところに、大きな傘をさして待っている寅さん。
リリー「迎えに来てくれたの?」
寅さん「ばかやろう! 散歩だよ」
リリー「雨の中、傘さして散歩してんの?」
寅さん「悪いかい」
リリー「濡れるじゃない?」
寅さん「濡れて悪いかよ」
リリー「風邪ひくじゃない?」
寅さん「ひいて悪いかい」
リリー「だって、寅さんが風邪ひいて寝込んだら、私、つまらないもん」
喧嘩の仲直り。
二人とも決して素直ではないが、愛があるように思える。
こういうのも、やさしさなんじゃないか、と思う。
嫌いな、ムカつく、どうしても許せない相手に対してでさえ、その相手が困っていることがあれば、助け(てあげ)ること。
そういう“愛のある”行動を、嫌いな、ムカつく、どうしても許せない相手からされると、受け手も自然とやさしい気持ちにさせられる。
そういうものな気もする。
「その人を嫌いでもいい、大切にしなさい」