異都ナーラのSPICIA|サイドストーリー
大倭国の中枢・異都ナーラに拠点を置く架空の慈善団体SPICIA(SPIritual Club for Invisible Aid)は、持続可能なエネルギーの潮流を生むための方法論を研究し実践する。
咖喱菩薩と薬師如来
「良いですか咖喱菩薩、我々SPICIAの使命は"Pay Forward"の思想を布教することです」
「はい、今日も腹を空かせた者を救済して参ります」
ただ与えるだけが救済ではない。そこには "流れ" や "循環" が必要だ。
施しを受け、得た活力で何をするのか。それが肝心なのだ。
薬師如来の教えの元、悟りを得るため私は今日も今日とて修行に励む。
「ところで薬師如来、普賢菩薩が見当たらないのですが」
「普賢菩薩なら早々に特別自然保護区のパトロールへ出かけましたよ」
どうやら出遅れていたらしい。
じっくりコトコトがモットーの私も、そろそろ出張らなければなるまい。
異都ナーラの鹿
インターナショナル・プリフェクチュアであるナーラの都は、異国の者たちは勿論のこと鹿密度が高く、特別自然保護区の其処此処で鹿せんべいを介した異種間交流が盛んである。
「鹿せん、くれ」
突如、目の前に白鹿が現れた。
「やあ神鹿、ご機嫌麗しゅう」
「鹿せん、くれよ」
神鹿はボディが白い所為か、普賢菩薩の白象同様、異国の者たちには見えず、いつも鹿せんべいを貰い損ねている。
「腹が減っているのですか?」
「鹿せん、くれって」
全く。貰えて当然と思っているのか、神鹿は道を譲ろうとしない。
仕方がないので、あつらえたように其処に居た路上の鹿せん売りから一束もらって神鹿に差し出した。
まあ良い。神鹿もナーラの鹿と同じく食べたものを反芻し、特別自然保護区を歩き糞を提供して回る。フンコロガシたちにとってナーラの特別自然保護区は文字通りの聖域だ。それはやがて土に還り、ここに生える草木の肥やしになる。
ナーラの鹿は与えられているだけに見えて、実は与える者でもあるのだ。
食べ終えた神鹿は満足気な顔で去っていった。
「さて、私も行きますか」
と、今度は鹿せん売りが行手に立ち塞がった。
「鹿せん代、200円ね」
全く、世知辛い世の中である。
この世には金銭様を信じ崇める者が多すぎる。
それは富をもたらす仕組みであると同時に、あぶれる者をも生み出すのだ。
どうにか金銭様に頼らない在り方を見つけることはできないものだろうか。
こちらは『荒野のポロローグ』『TRANSIT JOURNEY』のサイドストーリーです。登場するキャラクターについては以下をご覧ください。
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